じ、次回からは出番が増えるはずだから・・・・!
あと、きちんと調べましたが、いろいろ突っ込みどころがあるやもしれません。
何卒・・・・何卒ご容赦を・・・・!
ふふふっ。
そろそろ現実を見ようぜ、わたし。
目の前を改めて見ても、そこにいるのは江戸川コナン御一行様。
いやいやいや、アニメや漫画本編は、あくまで彼らの日常を切りとったものだから・・・・。
って、それでも結構な頻度で事件に巻き込まれてない?
あっ、待った、いかん。
ドツボにはまる。
カット!カァーット!!
「響お姉さん、どうしたの?」
「なんでもないよー、何から話そうかなって考えてた」
自己紹介もしてもらった歩美ちゃんに癒されながら、気を取り直して御一行様を見渡して。
「さて、じゃあ改めて初めまして、今回皆さんをご案内させていただきます。立花響です」
「よろしくー!」
ノリよく返事してくれる鈴木さんに思わず笑いながら、続ける。
「まず最初に、みんなに守ってもらいたい約束事があります」
メンバーの半分は、香子より年下の小学生だし。
口調はこれでいいよね。
「とはいっても、普通の博物館と一緒で、展示品には触らないこと、食べたり飲んだりはしないこと、大声を出したり、走り回ったりして騒がないこと、とかなんだけどね」
頷く子ども達を一人一人見やりながら、指を立てて確認していく。
「大人だったら、ここに『たばこを吸わない』も加わってくるけど、みんなはまだ子どもだし、そもそも吸っちゃダメなので、カット!」
「未成年の喫煙は、法律違反になっちゃいますからね」
「光彦くんそのとーり」
っていうか、小学一年生で『喫煙』の言葉を理解できてるのか光彦くん。
なんて感心していると、
「なぁなぁ、なんで食っちゃダメなんだ?今日は俺達しかいないんだろ?」
「そうだねぇ、でも、こぼれた食べ物や飲み物が展示品を汚しちゃったら大変でしょ?特に今回は、いろんな博物館にお願いして持ってきた『本物』もあるからね」
「そっか、ツタンカーメンが汚れちまったら大変だ!」
納得してくれた元太くんは、絶対にやらないぞと意気込んでいた。
うーん、かわいい。
「とはいえ、熱中症で倒れちゃったりしても大変だから。展示品から離れて、手早く飲んじゃうのは許します!というか、許可はもらってます!」
これは本当。
展覧会本番でも、水分補給のスペースを設けるっていう話だ。
熱中症怖いもんね・・・・。
今年も全国で35度前後を記録したんやでぇ・・・・。
「じゃあ、ガイダンスはここまでにして、早速行こうか」
「「「はーい!」」」
元気な声を号令に、移動を始める。
「にしても、なんでギリシャとエジプトなんや?抱き合わせか?」
「あはは、違う違う。どっちも地中海を挟んで往来できる距離にあるし、それに一回一つの国になったこともあるから」
「ねえねえ、それってもしかして、アレクサンドロス大王?」
首をひねる服部くんに解説を入れていると、コナンくんが話しかけてきた。
「そうそう!よく知ってるね」
「えへへー、ヘレニズム文化だよね?」
「うん、アレクサンドロス大王の東方遠征をきっかけに、ギリシャ、エジプト、ついでにインドの文化が混ざり合ってできたものだね」
「ほぉー、そんな歴史があるなら、無関係とは言えんのぉ」
服部くんは感心した一方で、どこか悔しそうな様子で。
コナンくんは『どうよ?』と言わんばかりに胸を張っている。
・・・・ちょっと、いたずら心が沸いた。
「それにしても物知りだねコナンくん、どこで覚えたの?」
「えっ、あ、えっとね・・・・そう!新一兄ちゃんに教えてもらったの?」
「新一兄ちゃん?ご兄弟?」
「ううん、親戚!『工藤新一』兄ちゃん!」
ふふっ、ビビってるビビってる。
そして来たな、クドー!
「ああ、高校生探偵だっけ?」
「そう!オレと並んで『東の工藤、西の服部』なんていわれるほどの実力でなぁ」
「ついでに蘭の旦那様~♪」
「園子!」
多分いつもの調子でからかってくる鈴木さんに、『こらっ』てやる毛利さんだけど。
ぶっちゃけまんざらでもなさそうな感じだ。
「でも、工藤君、ここんとこめっきり姿を見かけないのよねぇ。学校にも来てないし」
「そうなの?」
「うん、なんだか事件が忙しいとかって・・・・」
へぇ、と相槌を打ちながら。
そこにいるよー、と。
視聴者の誰もが思ったであろうことを、わたしも考えていると。
「まったく、待ってる身にもなってほしいわ」
なんて、毛利さんが照れ隠しのように言うものだから。
・・・・思わず、だった。
「でも、それって、工藤くんなりに毛利さんを大事にしてるからじゃないかな」
「えっ?」
「友情か愛情かはおいといてさ、幼馴染ってことは、普通の友達よりは強い絆なわけじゃん?」
「まあ、そりゃあ・・・・」
考察に、毛利さんが頷いてくれたのを確認してから、続ける。
「・・・・だったら、守りたいって思って、一生懸命になるのはしょうがないんじゃないかな」
・・・・アニメや漫画の『新一』は。
いつも幼馴染の『蘭』を守るために、一生懸命だった。
その想いは、身勝手極まりないのだけど。
とても強い共感を覚えてしまうんだ。
すると、毛利さんは真面目に考え込み始めてしまう。
・・・・なんだか照れくさくなってきたのと、ちょうど会場についたので。
誤魔化しにかかった。
「なーんて、湿っぽい話題はここまでー!ほら、会場についたよ」
聞いて驚け、このアレクサンドリア号。
かの『ロイヤル・カリビアン・インターナショナル』が誇る『アルーア・オブ・ザ・シーズ』とタメを張れるスペックのお船!
そのイベントホールと吹き抜け、周辺の廊下を博物館に変えちゃってもなお有り余る、癒しとエンターテイメントの宝庫である!!!
乗ったこともッ!!!乗るような縁もッ!!!!ないけどなッ!!!!!
「会場の入り口の廊下は、エジプト・ギリシャ、それぞれの神話の神様がお出迎えしてくれるよ」
「ほほぉ、こりゃまた荘厳な」
向かって右手側にエジプト神話の、左手側にギリシャ神話の神々の彫像が並んでいる。
これらは全部レプリカなんだけど、素人目に見てもよく出来ているのが分かる。
「エジプトの神様達は、お顔が動物さんで面白いね」
「ギリシャの神様は、全体的に薄着ですよね・・・・」
宿題のことも忘れていなかったのか、一生懸命記録していく少年探偵団。
わたし達お兄さんお姉さん組は、そんな子ども達に足並みを合わせながらゆっくりあるいていく。
と、
「あっ、見て見て!この神様!面白い!」
「なんかあったのかー?」
歩美ちゃんが、何かを発見したようだ。
指さす方を見て、みんなが寄っていく。
「お顔が虫さんだよ、こんなのもいるんだぁー」
「ほんとだ!なんだこれ、カナブンか?」
その神様は・・・・ふふふっ。
カナブンと思うやろ?
「どっこい、フンコロガシなんだ、この神様」
「ええっ!?」
「フンコロガシって、あの?」
子ども達どころか、鈴木さんや毛利さんも気になっているご様子。
ふふっ、いい顔いただきました。
「なんか、ご利益薄そうなんだけど・・・・」
「日本人からしたらそうかもしれないけど、古代エジプト人にとってはものすごく重要な神様だよ。何せ、日の出を司っているからね」
神様としての名前は『ケプリ』。
フンコロガシが、名前の通り動物の糞を玉にして転がす様から。
太陽の運行を象徴すると考えられた。
ケプリは、そんな信仰から生まれた神様だ。
また、太陽神『ラー』の姿の一つともされ。
夜のうちに冥界を渡ったラーは、この姿をとって、東の方向から地上に表すとされている。
解説をすると、みんなは感心したようにメモを取っていた。
「へぇー」
「でも、解説聞いた後ならわかる気がする」
「どこの国もおもろいこと考えるんやなぁ」
毛利さん達高校生組の感想もいただきながら、次に進む。
パルテノン神殿や、アブ・シンデル神殿のミニチュア。
神話が描かれた壷や、日常生活が描かれた壁画。
質問されたり、あるいはこっちから教えたりして。
そのたびにみんなが一喜一憂するのが面白い。
・・・・博物館関係の仕事とか、いいのかもしれないなぁ。
なんて、考えていると。
「どうしてエジプト人は、ミイラを作ろうとしたんでしょうか」
猫のミイラの前で、光彦くんがぽつっとつぶやいたのが聞こえた。
「そういえば・・・・」
「普通にお墓にいれるんじゃ、ダメだったのかなぁ」
それを皮切りに、子ども達が次々疑問を口にする。
一方で、やっぱりというか、コナンくんや哀ちゃんは特に疑問は持っていないようだ。
それどころか、はてなを浮かべるお友達に教えてあげていた。
「諸説あるけど、有力な説は神話に影響されたから、かな」
「そうなの?」
「うん、あるところにオシリスって神様がいてね?」
わたしも助け船を出して、一緒に解説する。
――――昔々、エジプト神話の中でも高位の神様『オシリス』は、人々に農耕や法律を授けて多大な支持と功績を持っていた。
ところがそれを妬んだ弟『セト』に、体をバラバラにされて殺害されてしまう。
夫の死を嘆いた妻『イシス』と医学の神『アヌビス』は、彼の体をすべて集めて、包帯でぐるぐる巻きにして繋ぎ合わせた。
すると、奇跡的にオシリスは復活したのだ。
合間合間に、コナンくんや哀ちゃんが、みんなに分かりやすいよう噛み砕いた説明をしてくれて。
なんだかちょっとした連携プレーをやってる気分。
楽しい。
「生き返ったの!?」
「神話の中だとそうだね。それで、この奇跡に肖ろうとした人々が、こぞって死者をミイラにして、復活を願った・・・・ってわけ」
「復活・・・・ってことは、生き返るつもりでミイラになったってこと?」
「そういうこと」
古代エジプトにおいて、ファラオとは現人神も同然。
ともなれば、なおさら復活への期待は高かったことだろう。
そこまで説明すると、みんなはまた感心した様子でメモを取っていた。
「コナンくんや哀ちゃんは、みんなよりも物知りみたいだね。本でも読むの?」
「う、うん!」
「本は好きです」
また反応が見たくて話しかけてみると、年相応の返事をしてくれるコナンくんと哀ちゃん。
演技上手だな、高校生と科学者。
いや、大変かわいらしくてよろしい。
「それじゃあ次は、みなさんお待ちかね。いよいよツタンカーメンとのご対面だよ」
みんながメモを取り終えたのを確認して、いよいよメインイベントだ。
あえて装飾や照明が少なく設置された、薄暗い廊下を進む。
やがて開けた場所に出れば。
「うわぁー!」
「すっげー!金ぴかだぁー!」
階段状のディスプレイの上に、ガラスケースに収められたあの黄金のマスクが。
ここは、本来吹き抜けになっている場所だけど。
直射日光はあんまりよくないからとかで、天幕を張られて日光は遮られている。
代わりに、周囲に吊り下げられたライトが照らしていて。
・・・・うん、冗談抜きで綺麗。
一瞬解説とか吹き飛んだ。
筆舌に尽くしがたいとはこのことか・・・・!
おっと、お仕事お仕事。
「ツタンカーメン、正式な発音は『トゥトゥ・アンク・アメン』って言って、『アメン神の生まれ変わり』って意味があるんだよ」
子ども達は、はしゃいで半分くらい聞いてないようだったけど。
毛利さん達は耳を傾けてくれている。
「齢18で亡くなったとされる少年王、最近の研究だと、死因は戦車に轢かれた轢殺だろうって言われてるね」
「戦車ってことは、戦争で亡くなったってこと?」
「っていうか、戦車って古代エジプトにあったんだ」
「あったんだよー」
『
「元は『トゥトゥ・アンク・アデン』って名前だったんだけど、お父さんである先代ファラオの無理な宗教改革が原因で、国内は荒れていてね。王位を継いだ彼は、その立て直しを行ったんだよ」
ちなみに『アデン』というのは、先代『アクエンアテン』が新たに信仰しようとした神様の名前だと付けくわえて、続ける。
「だけどさっきも言った通り、混乱を平定する戦いの中で命を落としてしまった。そんな彼の後継だと言い張ったのが、腹心である『アイ』だった」
「哀ちゃんと同じ名前だ!」
「そうね」
そういえばそうか。
「でも、ごめん。この人はよくない話があってね」
ずっとツタンカーメンを支えてきた自信もあったであろうアイは、強引な手段でファラオの座についた。
未亡人となったツタンカーメンの妻を娶り、本来臣下たる自分が入るはずだった墓に、主の遺体を押し込めて。
「それってあんまりじゃない?」
「ツタンカーメンさん、かわいそう・・・・」
鈴木さんと歩美ちゃんが代表して口を開いたけど、みんなが一様に渋い顔をしている。
この黄金のマスクの持ち主の境遇に、それほど胸を痛めているのだろう。
優しい人たちだと思いながら、さらに続けた。
「そんなんで、アクエンアテンからツタンカーメン、そしてアイの三代は、あんまりにも荒れたもんだから。後の時代のファラオ『ラムセス二世』によってなかったことにされようとしたんだけども・・・・」
「墓やミイラが発見され、さらにはこの黄金のマスクや、『王家の谷の呪い』の伝説とセットになり、むしろ世界一有名なファラオになったと」
服部君のまとめに、頷いていると。
「呪いって・・・・?」
知らなかったのか、歩美ちゃんが不安な顔。
むむ、こりゃいかん。
「よくある話で、『王家の墓をあばいたら、呪われて死んじゃう』ってやつ。ちゃんと迷信だって証明されてるから、怖がらなくていいよ」
哀ちゃんにも慰められて、ほっと一安心した歩美ちゃんに笑いかけながら。
改めて黄金のマスクを眺めて、
「それに、アイやツタンカーメンの話も、これはあくまで有力な説の一つであって、真実というわけでもないからね?もしかしたらアイも、国がこれ以上傾かないように、やむなくそうしたかもしれないし」
「権力に目が眩んだんじゃなくて、本当に国を思った行動だったかもしれない・・・・」
「どっちにしろ、真実は闇の中かぁ」
哀ちゃんのためにも、何とかフォローを入れると。
うむむ、と唸りながら考え込んでしまった鈴木さんや毛利さん。
重くなってしまった空気を払拭したのは、コナンくんの明るい声だった。
「でも、その真実に向かって日々研究してるのが、櫻井先生や井出先生みたいな考古学者なんでしょ?」
「その通り!もちろんその二人以外の考古学者さん達も、日夜頑張って研究しているのです!」
個人的に印象に残っているのは、女王卑弥呼が操ったという強力な呪術の正体を、伝染病だと解明した
症状が黒死病に酷似していることから、医療分野でも進展があったとか、何とか・・・・。
なんにせよ、
「現代と違って、記録が風化していることが多い古代。誰もかれもが忘れ去ったその時間に、何があったのか、何が起こっていたのか、当時の人は、何を考えていたのか・・・・考えれば考えるほど、ロマンに満ちてくるよねぇ」
そう締めくくれば、落ち込んでいた空気は何とか持ち直した。
いやぁ、ちょっと暗い話題になっちゃったから、心配だったんだよ・・・・。
「というわけで、今日のツアーはここまで!みなさん、お疲れ様でしたー!」
「わー!」
最後に明るく声を上げれば、みんなはノリ良く拍手。
何とか役目を果たせてよかった。
この後は、了子さん達のとこに戻って、打ち合わせが終わるまでボディーガードだっけ。
服部君とはもう少し付き合うことになりそうだなと、のんびり考えていると。
「・・・・?」
耳が、何かの音を拾った。
何かを無機物を引きずるような、重々しい音。
はっと振り向くと、装飾の一つ。
神殿を思わせる巨大な柱が、こっちに傾いてきていた。
「ッみんな!離れるよ!!」
いきなり怒鳴ったんでびっくりさせちゃったけど、倒れてきてる柱を見て察したらしい。
みんな一斉に、一目散に走りだす。
・・・・普段から事件やらなんやらに巻き込まれているからか、行動が早い。
とかなんとか感心していたら、
「大変、マスクが!!」
子ども達の背中を押す横で、毛利さんの切羽詰まった声が聞こえたもんだから、勢いよく振り返る。
すると、確かに柱がガラスケースの直上にぶち当たりそうで。
「――――ッ!!」
考古学的にも価値があるとか、子ども達にショッキングなもの見せられないとか。
色々理由はあるけれど。
とにかくなりふり構ってられない。
「ちょっ!?立花さん!?」
「危ないで!!」
クラウチングで飛び出す。
背中にみんなの戸惑った声を受けながら、加速する。
「はああああああああああッ!」
途中の階段は、側転を利用して勢いを殺さないようにして。
「ッッダア!!!!」
蹴り、一発。
目論見通り、ガラスケースに当たりそうだった上部が、上手いこと砕けた。
蹴りつけた反動に逆らわず、後ろに飛んで着地。
同時に、地響きを鳴らしながら、柱が倒れた。
念のため、ガラスケースに寄って確かめる。
幸い砂ぼこりをかぶってしまったくらいで、傷一つついてなかった。
一応、一安心かな。
・・・・おっと!
一番確認しなきゃいけないことを忘れてた!
「みんな、怪我は?」
「・・・・っは!ぃ、いや、俺はなんとも。お前らは?」
「こっちも大丈夫!」
「オレ達だって平気だぞ!」
慌てて聞いてみると、それぞれが返事をしてくれる。
こちらも念を入れて一人一人観察したけど、本当に怪我はないようだ。
今度こそ気を抜いて、ほっとしていると。
「響さんすっげーな!」
「ヤイバーみたいでした!」
「響お姉さん、かっこよかった!」
今度は興奮冷めやらぬといいたげな子ども達に、あっという間に囲まれてしまった。
というか君達、
とはいえ、これだけ元気ならよかった。
・・・・守れてよかった。
なんて、油断していたときだった。
「――――――うわあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
天幕で塞がれているとはいえ、吹き抜けだからか。
その悲鳴は、よく響いてきた。
ギリシャ・エジプト展という設定なのに、エジプトの解説が多めになってしまった件。
こ、恒例のおまけで保管するつもりだし(震え声)
今日のパロディ
↓
くらふと らら
↓
ララ・クロフト(トゥームレイダーより)