チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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毎度の誤字報告、感謝です。
一応見直しているはずなんですけれど・・・・!


フラグ「呼んだ?」

デュランダル移送任務から数日後。

喉のダメージが大分治ってきた翼は、早くも復学していた。

まだ歌手活動(と、防人業)は休養を余儀なくされているが。

本分である学業に専念できるのはありがたいと、どうにか自分を納得させる。

ひとまず精勤賞は取れそうだなんて考えながら廊下を歩いていると、

 

「翼さん」

 

振り向けば、未来が小走りで駆け寄ってきていた。

 

「どうした?小日向?」

「ぁ、あの・・・・」

 

努めて柔和に笑いかければ、どこか尻込みする様子。

聞いていいのかどうかを、迷っているらしい。

しかしすぐ決意したように小さく頷くと、改めて翼と向き合う。

 

「あの、出動ってありましたか?響には、会いませんでしたか?」

「――――」

 

来た、と思った。

未来は一般人だが聡い子だ。

この前の翼の入院も、発表された『過労』以外の原因があると睨んでいるだろう。

その原因に、響が関わっているとも。

 

「――――いや」

 

翼は、首を横に振る。

 

「察しのとおり、まあ、『荒事』はあったが。立花には会っていないよ」

「そう、ですか・・・・」

 

予想通り。

翼の返答に、目に見えて肩を落とした。

 

「・・・・分かりました。すみません、言いにくいことなのに」

「気にするな、立花が心配なんだろう?」

 

年上らしく余裕を持って問いかければ、未来はまた小さく頷いた。

その後同級生らしき生徒に呼ばれ、一礼して去っていく。

背中を見送りながら、翼は控えめになっていた息を、盛大に吐き出した。

 

(慣れているはずなのにな、嘘をつくことは)

 

踵を返しつつ、もう一度ため息。

――――未来には知らせない。

あの日弦十郎が出した結論。

一見堅牢なように見えて、その実砂上の楼閣である彼女の精神を慮っての、苦渋の決断だった。

弦十郎の決意と痛みを理解した翼もこれを了承し、今しがた未来へ嘘をついたのだが。

やはり、秘密を共有している『仲間』なだけあって、偽るのは大変苦労する。

ふと、喉に触れた。

・・・・・響の行動が、読めない。

守りたいというのなら、離れたいというのなら。

何故一月以上もこの近辺に留まっているのだろう。

それこそ、邂逅したあの日にさっさと逃げおおせていればよかったものの。

二課の追っ手を警戒していたとしても、動きが消極的過ぎる。

 

(本心では共にいたいと思っているのか・・・・あるいは)

 

二課以外の『何者か』に、邪魔立てされているのか。

ぱっと思いつくのは、一緒に行動していた『ネフシュタン』だが。

米国の方も不穏な動きが報告されている以上、そちらも無視できない。

どちらにせよ、今考えても詮無いことだと、頭を振って切り換えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、立花響です。

デュランダルをかっぱらってから早二週間。

未だにフィーネさんのお屋敷にいるでござる。

・・・・いや、ね?

何か、手配していた飛行機のチケット(行き先はひとまずロシア)が遅れてるとか何とかで。

でもそれまで手持ち無沙汰にしてるのもなーって思ってたら、フィーネさんはそんな胸中も見透かしてたらしく。

『デュランダル起動させたいけどクリスじゃ足りないなー、誰か手伝ってくれないかなー?』って感じでチラッチラッと催促されまして・・・・。

ええ、例の如く断れなかった自分は、フィーネさんの思惑通り完全聖遺物の起動に駆りだされています。

とはいえ、わたしってば融合症例らしくフォニックゲインがかっとんでるとか何とかで。

クリスちゃんと歌えば歌うほど、デュランダルの反応が荒ぶってくるというか。

こう、『俺の体が真っ赤に燃えるッ!!』みたいに光が強くなっていった。

起動まで割と順調に持っていけてるみたい。

それでも二週間なんてかかったのは、単純な話、わたしがハモるのド下手だったからでして・・・・。

でも、フィーネさんと、それから意外にもクリスちゃんが教えてくれたお陰で、現在どうにか形になっています。

なお、クリスちゃんに何で教えてくれたか聞いてみたところ。

 

「フィーネの要求に応えられないと、あたしだって危ないから」

 

とのこと。

ぶん殴ったこともあって結構毛嫌いされてたけど、こういう大事なときまで持ってこないのはさすがだと思った。

素直に褒めたらド突かれたので、あんまり言わない方がいいみたいだけど。

まあ、ともかく。

今日も今日とてしんがーそんっ。

装置につながれたデュランダルの前で、クリスちゃんとデュエットですよ。

中の人的に言えば、喉からCD音源レベルのプロがリードしてくれてる感じ。

いやぁ、頼もしくていいよね!

なんて考えている前では、いつも以上に荒ぶっているデュランダル。

某大佐になりそうなくらい眩しい光が、さっきからひっきりなしに迸っている。

目が・・・・目がぁ・・・・・。

 

「――――ぁ」

 

光が落ち着くのを感じて、無意識に閉じていた目を開ける。

見ると、糸を束ねるように光が集束していく。

まるで一種の機織りみたいな光景は、ここがラスボスの拠点であることを忘れて見とれるくらい。

やがて最後の一筋が収まって、一度ぼうっと光ったデュランダルは。

やっと大人しくなった。

これは・・・・?

 

「フォニックゲイン充填完了、アウフヴァッヘンも安定・・・・二人ともご苦労、起動実験は成功だ」

 

おおう、それはよかった。

ラスボスの片棒担いでいるけど、とにかくよかった。

よかったったらよかったの!

 

「お前も肩の荷が下りて、安堵しているのではないか?」

「いえ、その・・・・あはははは・・・・・」

 

指摘されて思わず苦笑い。

いや、いくら精神年齢三十路に届きそうだからって。

こんな素人に隠し事とか器用なこと出来るわけないじゃないですかー、やだー。

 

「まあ、いい。十分に役立ってくれたのだからな」

「っけ、足手まといよりはマシだったよ」

「どーも」

 

うう、ラスボスでさえなければ、この褒め言葉も嬉しいのになぁ。

クリスちゃんのツンデレだけが癒しだよ・・・・。

 

「これでお前は晴れて自由の身だ、喜ぶといい」

「・・・・ええ、ありがとうございます」

 

言いながら差し出されたのは、遅れていたらしい飛行機のチケット。

本当に遅れてたのとか突っ込みたいところだけど、あえてスルー。

触らぬ神に祟りなしっていうしね、うん!

遠慮なく受け取って、懐へ。

 

「それじゃあ、短い間ですけど。お世話になりました」

「もう行くのか?」

「とっ捕まりたくないので」

 

だって、ほら。

今まで日本を出ようと行動を起こすたびに、クリスちゃんやらフィーネさんやらに邪魔されてるし・・・・。

っていうか、言ってから不安になってきた。

本当に大丈夫だよね?何も邪魔されないよね?

フラグじゃないことを祈るよぉ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――Target Confirmation」

 

「――――Go」




エキサイト先生に聞きましたが、英語は多分間違っています←

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