誠にありがとうございます。
タイトルは『らーん!』と呼んでください。
おはよぉーございまぁーす!!!!!!!!
針の刺さり方が意外と浅くて、早く起きられたわたしです。
推理の途中で目が覚めて、一生懸命なコナン君の声を『がんばってるなー』って思いながら聞いてたら。
案の定犯人だったシャンファさんが、直接的な手段で卜部さんを狙ったので。
思わず動いた次第。
・・・・勢いに任せて、割と余計なことを言ってしまったけど。
今は置いといて。
いつでも顎を打ち抜けるよう構えながら、改めてシャンファさんを睨みつける。
対する彼女は、なんだか呆然っていうか、愕然としていたけど。
すぐに切り替えて、不敵に笑った。
「あらあら、まさか本人がいただなんて・・・・偶然とはいえ、無礼を働いたかしら?」
「全くだよ、子どももいるのに、死ぬだの殺すだのの話をさせてさ。教育に悪いったらありゃしない」
そう、文句を零せば。
何が面白いのか、シャンファさんはくすくす肩を震わせて。
「ずいぶんお優しいんですね、本物は」
「仮にもお役所務めだから」
いや、お役所勤めじゃなくっても、たとえ真似事と言われようとも。
ちっちゃい子達を守らなきゃって思いは、間違っていないはず。
「お情けついでに見逃してくれたりしないかしら?」
「寝てないのに寝言を言うなんて、ずいぶん器用な人だなぁー」
言うなり、突撃。
・・・・『子どもの前で』云々言っておいてなんだけど。
この人が、錬金術師が相手の場合は、そうせざるを得ないというか。
何かされる前に気絶なりなんなりして制圧しちゃう方がずっと安全なので、予定通り顎を狙う。
初撃は避けられる、予想通り。
なので下から大きく蹴り上げる。
これも予想通り避けられる。
続く三撃目も避けさせた後、片足になって不安定になったところへ。
本命の右ストレート。
これはさすがに避けきれなかったらしいけど、結局障壁で防がれてしまった。
ついでに軽く爆発もして、吹っ飛ばされてしまう。
ひゃー!あちあち!
「響お姉さん!」
「はーい、響おねーさんだよー」
ごろんと後転しながら立ち上がる。
ついでに心配してくれる歩美ちゃんに、おててをひらひら。
なんてしている間に、どさくさに紛れて動いていたマリアさんが。
シャンファさんの後ろから、蹴りを浴びせようとしていた。
だけど、鞭のようにしなった足に放たれたのは。
何か、玉のようなもの。
それはぶつかった途端、真っ白い煙を吐き出して・・・・って、これあれだ!催涙弾!
煙はあっという間にこっちにやってきて、名前の通り、涙と咳を引きずり出してくる。
前が、前が見えん・・・・!
っていうか、マリアさーん!無事ですかー!?
「――――ッ!」
無事だった―!!
長身を存分にひるがえして、煙を振り払って出てきたマリアさん。
だけど着弾点にいたせいか、無傷とはいかなかったようで。
だいぶ涙目なのと、呼吸がし辛そうなのが気になった。
「マリアさん!容疑者は!?」
「ダメね、逃げられた」
『してやられた』と吐き捨てたマリアさんが咳き込む間に、煙は無害な程度に薄まってきて。
いたはずのシャンファさんは、忽然と消えていた。
「煙の流れからして、足で立ち去ったようね」
「テレポートジェムを使っていないとなると、目的はまだ果たしていないか。あるいは・・・・」
溢れた涙をぬぐいつつ、部屋の入口まで続いている煙の帯を見つめていると。
「響さん」
コナン君が、傍にきていた。
驚きを隠せない様子の彼は、わたしを警戒するように見上げて。
「響さんが、ファフニールって、本当?」
そう、おずおずと問いかけてきて。
・・・・って、そうやん。
思わず自分からバラしてしまったんやん。
はっとなって見渡すと、ぎょっとした視線を向けているみんなが。
警部さん達に至っては、なんだか警戒するような目つきで。
えっと、えーっと・・・・。
「その、さっきのナシにはならないかな?言っちゃいけないことだから」
・・・・視線に耐えられなくなったので。
指をチョキチョキしながら、笑った誤魔化そうとしてみるけど。
「えっと・・・・」
「なるわけないでしょうがッ!!!」
「にゃっ!?いひゃややややややや!!!」
コナン君が答えるよりも早く、お冠なマリアさんにほっぺたをつねりあげられてしまった。
「あなたって子はッ!あなたって子はッ!私と櫻井教授はッ!何のために捜査に首突っ込んだのよッ!!!!」
「
ああッ、さすが得物持ちッ。
戦闘中に武器を手放さないだけの握力が今、ダイレクトに攻撃力に変わって・・・・!!
いたたたたたたたたたっ!!!
「・・・・あの子の無害は保証します。本人が更生に意欲的なのはもちろん、至るまでの経緯を考慮しての判断です」
身構えていいのか迷っている警部さん達へ。
『経緯の方は、みなさんがお詳しいでしょう?』と、了子さんがため息まじりにフォローしてくれてるのが聞こえた。
すみません、ご迷惑おかけします・・・・。
「いや、そちらも気になることには気になりますが、今はそれよりも」
「そ、そうだっ!龍臣社長、展示品の確認を!」
「え、ええ」
目暮警部の鶴の一声で、ぽかんとしていた龍臣社長が再起動。
慌てて連絡を取ろうと、スマホを取り出したところで。
足元が、鈍く揺れた。
「な、何やぁ!?」
ふらついたコナン君を支える横で、服部君を始めとしたみんなの困惑する声が聞こえる。
心当たりなんて全くないわたしも、動揺を隠しきれないまま困惑している。
その間に揺れは収まったけど、なんだろう。
足元から、いやあな気配がビンビンと・・・・。
「な、何が起こったんだ!?」
「今の揺れ、下からだったよな?」
揺れが収まった後、みんなが口々に動揺していた、その時。
ラウンジの入り口。
船員と警察官が慌ただしく入ってきて。
「ああ、よかった!皆さん無事でしたか!」
「警部殿ッ!企画展示のスペースから、正体不明の気体が発生ッ!」
「それに加えて、妙な生き物も現れて・・・・!」
「妙な生き物?」
怪訝な顔をした毛利探偵に、警官さんと船員さんは、『決してふざけていない』と強く強く主張してからの、曰く。
『アフロを乗っけた、黒い脳みそ』。
「・・・・ふざけてないんだよな?」
「当たり前です!私達だってちょっと信じられないくらいに困惑していて・・・・!」
「けれど、奴らが噴き出す黒い気体を浴びた人が、次々倒れてしまって・・・・!」
さらに付け加えると。
その気体は、展示室からあふれているものと同じもののようだという話だった。
「い、一体どうなって・・・・!」
「櫻井教授、マリアさん!」
摩訶不思議な危機ということで、縋るような視線を向けられるマリアさんと了子さん。
うーん、頼ってもらってなんだけども・・・・。
「直に見ていない以上、判断を下せません。性急な決めつけこそ、異端技術相手には最たる悪手です」
「そうなの?」
「そーなの」
了子さんに言葉に、首を傾げた蘭ちゃんへ。
こっくり頷いている間にも、話は進んでいく。
「まずは逃げましょう、避難状況は!?」
「怪我人を優先的に、順調に進んでいます!」
「ならば私達も直ちに脱出を!」
マリアさんの仕切りに、異を唱える人はいなかった。
毛利探偵を先頭に、龍臣社長、鈴木相談役、子ども達に卜部さん。
園子ちゃん蘭ちゃん、服部君と続けて。
わたしと、何故かコナン君を最後尾に。
廊下へ繰り出した。
ちなみに了子さんとマリアさんは、鈴木相談役のすぐ後ろ辺りを走ってる。
物々しい緊急事態だけど、みんな割と落ち着いてるし。
段差がありそうなところは、先頭の皆さんが積極的に知らせてくれるおかげで。
今のところ、転んで怪我する人もなし。
・・・・だけど。
こう、『何も起こりません様にー』って願ってるとき程、何かおこるものでして。
『――――ッ聞こえるかァ!?』
わたし達S.O.N.G.組の通信機から、司令さんの焦った声。
『今、その船の周囲で、アルカノイズの反応が――――!』
――――言い終えるのと、ほぼ同時だったと思う。
壁を破って飛び込んできた、もはや見慣れた極彩色。
そのうちの一体が、運悪く卜部さんに直撃しようとして。
「ッあぶない!」
そう叫ぶコナン君も、十分に危ない位置。
・・・・決断は、すぐ出来た。
「――――ッ」
「えっ」
「ひっ、ぐべえッ!?」
コナン君を抱き上げた後、卜部さんの背中を思いっきり蹴っ飛ばしてノイズから逃がす。
ついでのその反動で後ろに飛んで、わたしとコナン君も脱出。
直後、飛行型が次々突っ込んできて、廊下を完全に寸断してしまった。
・・・・飛び越えるのは、無理そうだ。
「コナン君ッ!響ちゃんッ!」
「二人とも、だいじょ・・・・ひっ!」
蘭ちゃんは卜部さんを助け起こしつつ、園子ちゃんはノイズにおびえながらも。
こっちを心配してくれる。
「ッ大丈夫、コナン君も無事!」
「うん!ほら!」
わたしとコナン君は、一緒に手を振って無事をアピール。
向こうのみんなはほっとしていたけど。
飛び越えられない足場を見て、すぐに曇った顔をした。
「ど、どうする!?」
「何か、足場になりそうなもの・・・・!」
それも束の間、どうにか助けられないかと考えてくれる二人。
・・・・ありがたいけども、今は。
「僕なら大丈夫」
「・・・・ありがとう」
気になったので、コナン君を見下ろすと。
どうやら同じ考えの様で、こっくり頷いてくれた。
思ったままを呟いて、声を張り上げる。
「こっちはこっちで、別ルートから逃げるよ!気にせず先に行って!」
「で、でもッ!」
「大丈夫だよ蘭姉ちゃん!響さんもS.O.N.G.の通信機を持ってるから、どうやって逃げればいいかわかるし!」
「じゃ、そーゆーことでッ!」
これ以上足止めさせるのが忍びなかったので、コナン君を担いだままとっとと退避。
背中には、細々とした動揺の声がした後。
『怪我しないで』『頑張って』『また後で会おうね』と、少年探偵団も混じった声援を受け取った。
◆ ◆ ◆
「――――ほら、急いで!」
「は、はい!」
了子に促され、渋々駆け出す子ども達。
そんな中、平次は漠然とした不安を口にした。
「しっかし、大丈夫なんか?」
「大丈夫に決まってるでしょ!響ちゃんだって、なんだかんだ只者じゃないんだし!」
「けどなぁ・・・・」
園子の反論にも、どこか納得がいかない様子の平次。
だが、そんな若者二人へ了子は笑いかけて。
「あら、この場合は園子ちゃんの方が正しいわよ?」
「そうなの?」
「ええ」
不安げに見上げてくる歩美へ、自信たっぷりに笑いかけながら。
「『ファフニール』の名前は伊達じゃないもの。守る者があればあるほど、響ちゃんは強くなるんだから」
アレクサンドリア号事件編、あと2~3話で完結させたい所存です。