ご感想も目を通しております、重ねて感謝を・・・・。
>世界蛇「お邪魔してもいいです?」
御帰りはあちらでございます。
お土産にぶぶ漬けもどうぞ・・・・(包みを差し出しながら)
立花響は、
人助けが趣味といって憚らない、天真爛漫な16歳。
その一方で、彼女にはもう一つの顔があった。
それは、世界を守るシンフォギア装者であるということ。
一年前はノイズから、今は錬金術師から。
大切にしている日常を守るため、今日も今日とて人助けに勤しんでいた。
さて、そんな響が所属しているS.O.N.G.には、『ギャラルホルン』という聖遺物がある。
翡翠のアンモナイトのような、ある種芸術性のある見た目とは裏腹に。
平行世界に異変があり、かつそれが現存する世界に及ぶと判断した場合。
アラートを以って知らせてくるのである。
そして、シンフォギア装者にしか通れないゲートを開いて、異変を解決するよう導くのである。
S.O.N.G.としても、人助けに前向きな面々が揃っていることや、こちら側に及びかねない危機を放置できないということもあり。
積極的に平行世界へ向かっていた。
今回もまた、そんなギャラルホルンが絡んだ任務だった。
「せぇいッ!」
現れた燃え盛るノイズと、黒い犬の群れ。
それらを対処する中で見つけた、襲われている少女。
一緒に来たクリスが、少女を回収するのを横目で見送りながら。
響は拳を構えた。
「ガルルルルル・・・・!」
邪魔されたことが気に食わないのか、明らかに不機嫌そうに唸る『犬』。
口元を食いしばって牙を剥き、今にも噛みつこうとする姿は、まさしく恐怖の対象だったが。
生憎、響はこの程度で怯んだりしなかった。
ただ、一つ誤算があったとするなら。
「がるるっ!がぅぶ!!」
「へっ!?いたッ!?」
少女を庇っていた小さな『番犬』にも、敵認識されたことだろうか。
脹脛に果敢に噛みつかれ、完全に不意を突かれてしまう響。
その隙を見逃さず、『犬』が顎をかっぴらいて襲い掛かってくる。
「ッバカ!」
「うわわッ!く、クリスちゃん!その子をお願い!」
未だやる気満々な子犬を抱きかかえて庇う一方で、蹴りで迎撃しようとして。
「――――?」
クリスが気づいたのは、その時だった。
人影が、上空から降ってきていることに。
落下に身を任せているそいつは体を翻して、片足を高く上げて。
「――――伏せェッ!!!!」
開いた顎を強制的に閉じつつ、短く上がった悲鳴ごと『犬』を叩きつけたのだった。
土煙の中から、軽く飛んで現れたそいつ。
同じマフラーをなびかせているものの、容赦のない攻撃を行った『彼女』。
響とクリスは、思わず身構えてしまう。
「ぐわぅ!!がうがう!!」
「わっ、ちょっと!」
そんなやや緊迫した状況そっちのけで飛び出したのは、やはり子犬だった。
度重なる『あやしいやつ』の登場に、興奮がピークを迎えたようで。
毛を逆立てた体が、パチパチと帯電し始める。
さきほどの『犬』と同じ現象に目を見開いている前で、一気にスパーク。
「があおうッ!!!」
まずは一番危険と判断した『彼女』へ、突撃を叩き込もうとして。
――――しかして、その攻撃はあっさり掴み取られた。
顎を抑えるように拘束され、取れない身動きに困惑する中。
彼は見てしまう。
「わたしと噛み合うの?パピーちゃん」
にっこり笑ったその裏で、言いようのないバケモノが睨んでいる光景を。
結果、人間よりも動物的な勘が強い子犬がどうなるかと言えば。
「ヒュッ、ヒュゥン・・・・」
耳としっぽをぺたんとさせて、降参を示すことだった。
「あ、あのッ!」
ひと段落したのを見計らい、思い切って声をかけたのは響。
未だ威嚇が残る目を向けられて、一瞬だけ固まってしまうも。
何とか持ち直して。
「動物虐待はよくないと思う!」
「・・・・いや、それもそうだけどさ」
意を決して言うことがそれかと、呆れられてしまう。
後ろのクリスも同様の視線を向けつつ、『またこいつは・・・・』と呟いていた。
「わん!」
「おっ、と」
そんなやり取りに隙を見出した子犬は、『彼女』の拘束から逃れると。
一目散にクリスの、正確には、その腕に抱えられている少女の下へ駆けつけて。
やや警戒心を残した目で、それぞれを見上げていた。
「・・・・そっか、守ってくれてたんだね」
一方の『彼女』は子犬の行動に怒ることなく、むしろ納得の後で柔らかく微笑む。
「君達もありがと、その子、わたしの妹なんだ」
「えっ!?そうなの!?」
「こっちのバカには妹がいんのか・・・・」
改めて響達を見た『彼女』の言葉に、驚きを隠せない響とクリス。
特に響は、妹だと言われた少女をまじまじとのぞき込んでいた。
「んー、おんなじ顔とか、『こっち』って言い方とか。色々お話を聞いてみたいところだねぇ」
「えっと、あはは・・・・」
「まあ、一応そのつもりで来たんだけどさ・・・・」
会話を重ねているうちに、空気から緊張が抜けていく。
・・・・その隙を、ずっと狙われていた。
「グアアアアアアア!!」
「ッ!?」
「ヤロウ、まだ動けて・・・・!?」
子犬と同じく体を帯電させて突撃してくる『犬』。
当然ながら、威力が桁違いであることが手に取るように分かった。
◆ ◆ ◆
わたしと翼さんとクリスちゃんのそっくりさん達が確認されて。
『な、何を言っているか分からねーと思うが』なんて宇宙猫になってる場合やないなコレ!
「下がって、そのまま妹をお願い!」
「えっ!?」
そっくりさん達が反応や反論するよりも前に、飛び出す。
広げた右手から一回り大きな手の幻影を出現させて、突っ込んできた
同時に電気も避けられるんで、一石二鳥だ。
そうやって抑え込んでいると、わたしのそっくりさんが横合いに回って鉄拳一発。
横っ腹を殴り飛ばされ、怯んで体を傾ける
すぐに踏ん張ると、標的をわたし達に切り替えた。
よし、狙い通り。
なら、忘れちゃう前に。
「えーっと、クリスちゃん?って呼んでいいよね!?その子連れて離脱お願い!」
「ッ、ああ!分かった!」
クリスちゃんのそっくりさん。
略して『そっクリスちゃん』は一瞬悔しそうにしてたけど、腕の中の命を見失うほどではないらしい。
「ほら!お前も来いよ!」
「うぅ、わうっ!」
子犬も、未だ眠る主人に追従することを望んだらしい。
そっクリスちゃんの後を迷いなくついていく。
と思ってたら、目の前で影に入ってった。
あれが例の・・・・こういうとき便利だね。
「グワァッ!」
「おっと、せぇいッ!」
当然、横っ腹を殴られた程度で倒れる
未だにバチバチしたまま、わたしのそっくりさんに噛みつく
体を捻って避けたすぐ横で、顎がガチンと閉じられた。
うっへ、あんなんくらったら一溜りもないべよ・・・・。
果敢に反撃するそっくりさんだけど、
続けてわたしに突っ込んできたので、また『手』を出して身構える。
だけど今度は引っ掴むんじゃなくて、グーにして突き出す。
またニギニギされると考えてたらしい
「だらぁッ!」
「えええええッ!?」
ぽーんと空中に上がったところへ、追撃をドーン!
そっくりさんがぎょっとしてる目の前で、
「あ、あのッ!やっぱりやりすぎなんじゃないかなッ!?」
「ヒグマの駆除みたいなもんだって、あいつのやる気満々ぶり見たでしょ?野放しする方が危険だよ」
「そ、そうだけど・・・・」
まあ、普通は何とか穏便に出来ないかって考えるよね。
・・・・そう、だね。
『普通』はそうだよネー・・・・。
「だ、大丈夫?なんだか遠い目になってるよ?」
「あーうん、へーきへーき」
なんてのんびり会話してる横合いから、まだまだ元気な
噛みつきを分かれるように飛びのく。
つま先で地面を摺りながら踏み込み、『手』でまた頭をひっつかむ。
「今のうちに・・・・!!」
攻撃を、と。
そっくりさんに伝えかけて。
『――――そのまま抑えていろ、立花』
凛、とした声が通信から聞こえて。
刹那、風が吹いた瞬間。
「えええええええッ!?」
びっくりするそっくりさんの前で、瓦礫をじゃりじゃり鳴らしながら刀を振り払ったのは翼さん。
一連の動作は、まるで枯山水のようなしなやかさ。
いやぁ、結構なお手前で・・・・なんて考えてたら。
「立花!無事か!?」
後ろから、全く同じ声。
振り向くと、これまた翼さんのそっくりさんが駆け寄ってきてるところだった。
通信が来たわたしはどっちがどっちか何となくわかるけど、わたしのそっくりさんの方はそうもいかないらしい。
喉を掻っ捌いた方と、あとからやってきた方とを交互に見ている。
なので、ちょっとした助け船をだすことにした。
「えーっと、翼さんですよね?」
「ああ、お前に蹴られた喉が、とても痛かった風鳴翼だ」
「その節は大変ご迷惑をおかけしました」
翼さんも意図を理解してくれたのはありがたかったけど、そんな昔の話が出てくるとは思わなんだ・・・・いや、悪いのはどう考えてもわたしだから、即行で頭下げたけども。
でも、物騒な話をするから、そっくりさん達がびっくりしてるよ。
目に見えてぎょっとしてるもん。
「お前達が敵対勢力ではないことは、こちらでも確認している」
とはいえ、状況のひと段落には成功したようで。
まだびっくりしてるそっくりさん達へ、翼さんが向き直った。
「・・・・皮をかぶっている可能性は否定できないが、ノイズや危険生物の討伐に加えて、人命救助にまで協力されてしまっては無下にも出来ん」
「え、えへへ」
対するそっくりさんは、照れくさそうなはにかみ。
翼さんのそっくりさんも、ほっとしている。
「ひとまず、本部にて話を聞きたい。同行を願えるだろうか?」
「ああ、こちらに異論はない」
「よろしくお願いします!こっちの翼さん!」
・・・・やり取りの横で聞いてた通信によれば、あの燃えてるノイズは全部駆除。
発生していた火災も、消防によって順調に消火されてるとのこと。
ついでに、香子も保護されたらしい。
よかった・・・・。
「そうだ、立花。お前のお父様も無事に保護されているそうだ、今は本部で手当てを終えて、妹君に付き添っているらしい」
「・・・・ありがとうございます」
「よかったね!」
「うん」
これで懸念事項は無くなったし、一安心かな。
自分の事の様に喜んでくれてるそっくりさんに頷きながら、まずは本部に戻ることになった。
・・・・結局なんで燃えてたんだろう、あのノイズ。