チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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>世界蛇「お邪魔してもいいです?」
御帰りはあちらでございます。
お土産にぶぶ漬けもどうぞ・・・・(包みを差し出しながら)


テ→テ↑テッ↓ トゥッ↓トゥーン↑

立花響は、()()()()()()()()()()()である。

人助けが趣味といって憚らない、天真爛漫な16歳。

その一方で、彼女にはもう一つの顔があった。

それは、世界を守るシンフォギア装者であるということ。

一年前はノイズから、今は錬金術師から。

大切にしている日常を守るため、今日も今日とて人助けに勤しんでいた。

さて、そんな響が所属しているS.O.N.G.には、『ギャラルホルン』という聖遺物がある。

翡翠のアンモナイトのような、ある種芸術性のある見た目とは裏腹に。

平行世界に異変があり、かつそれが現存する世界に及ぶと判断した場合。

アラートを以って知らせてくるのである。

そして、シンフォギア装者にしか通れないゲートを開いて、異変を解決するよう導くのである。

S.O.N.G.としても、人助けに前向きな面々が揃っていることや、こちら側に及びかねない危機を放置できないということもあり。

積極的に平行世界へ向かっていた。

今回もまた、そんなギャラルホルンが絡んだ任務だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せぇいッ!」

 

現れた燃え盛るノイズと、黒い犬の群れ。

それらを対処する中で見つけた、襲われている少女。

一緒に来たクリスが、少女を回収するのを横目で見送りながら。

響は拳を構えた。

 

「ガルルルルル・・・・!」

 

邪魔されたことが気に食わないのか、明らかに不機嫌そうに唸る『犬』。

口元を食いしばって牙を剥き、今にも噛みつこうとする姿は、まさしく恐怖の対象だったが。

生憎、響はこの程度で怯んだりしなかった。

ただ、一つ誤算があったとするなら。

 

「がるるっ!がぅぶ!!」

「へっ!?いたッ!?」

 

少女を庇っていた小さな『番犬』にも、敵認識されたことだろうか。

脹脛に果敢に噛みつかれ、完全に不意を突かれてしまう響。

その隙を見逃さず、『犬』が顎をかっぴらいて襲い掛かってくる。

 

「ッバカ!」

「うわわッ!く、クリスちゃん!その子をお願い!」

 

未だやる気満々な子犬を抱きかかえて庇う一方で、蹴りで迎撃しようとして。

 

「――――?」

 

クリスが気づいたのは、その時だった。

人影が、上空から降ってきていることに。

落下に身を任せているそいつは体を翻して、片足を高く上げて。

 

「――――伏せェッ!!!!」

 

開いた顎を強制的に閉じつつ、短く上がった悲鳴ごと『犬』を叩きつけたのだった。

土煙の中から、軽く飛んで現れたそいつ。

同じマフラーをなびかせているものの、容赦のない攻撃を行った『彼女』。

響とクリスは、思わず身構えてしまう。

 

「ぐわぅ!!がうがう!!」

「わっ、ちょっと!」

 

そんなやや緊迫した状況そっちのけで飛び出したのは、やはり子犬だった。

度重なる『あやしいやつ』の登場に、興奮がピークを迎えたようで。

毛を逆立てた体が、パチパチと帯電し始める。

さきほどの『犬』と同じ現象に目を見開いている前で、一気にスパーク。

 

「があおうッ!!!」

 

まずは一番危険と判断した『彼女』へ、突撃を叩き込もうとして。

――――しかして、その攻撃はあっさり掴み取られた。

顎を抑えるように拘束され、取れない身動きに困惑する中。

彼は見てしまう。

 

「わたしと噛み合うの?パピーちゃん」

 

にっこり笑ったその裏で、言いようのないバケモノが睨んでいる光景を。

結果、人間よりも動物的な勘が強い子犬がどうなるかと言えば。

 

「ヒュッ、ヒュゥン・・・・」

 

耳としっぽをぺたんとさせて、降参を示すことだった。

 

「あ、あのッ!」

 

ひと段落したのを見計らい、思い切って声をかけたのは響。

未だ威嚇が残る目を向けられて、一瞬だけ固まってしまうも。

何とか持ち直して。

 

「動物虐待はよくないと思う!」

「・・・・いや、それもそうだけどさ」

 

意を決して言うことがそれかと、呆れられてしまう。

後ろのクリスも同様の視線を向けつつ、『またこいつは・・・・』と呟いていた。

 

「わん!」

「おっ、と」

 

そんなやり取りに隙を見出した子犬は、『彼女』の拘束から逃れると。

一目散にクリスの、正確には、その腕に抱えられている少女の下へ駆けつけて。

やや警戒心を残した目で、それぞれを見上げていた。

 

「・・・・そっか、守ってくれてたんだね」

 

一方の『彼女』は子犬の行動に怒ることなく、むしろ納得の後で柔らかく微笑む。

 

「君達もありがと、その子、わたしの妹なんだ」

「えっ!?そうなの!?」

「こっちのバカには妹がいんのか・・・・」

 

改めて響達を見た『彼女』の言葉に、驚きを隠せない響とクリス。

特に響は、妹だと言われた少女をまじまじとのぞき込んでいた。

 

「んー、おんなじ顔とか、『こっち』って言い方とか。色々お話を聞いてみたいところだねぇ」

「えっと、あはは・・・・」

「まあ、一応そのつもりで来たんだけどさ・・・・」

 

会話を重ねているうちに、空気から緊張が抜けていく。

・・・・その隙を、ずっと狙われていた。

 

「グアアアアアアア!!」

「ッ!?」

「ヤロウ、まだ動けて・・・・!?」

 

子犬と同じく体を帯電させて突撃してくる『犬』。

当然ながら、威力が桁違いであることが手に取るように分かった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

わたしと翼さんとクリスちゃんのそっくりさん達が確認されて。

『な、何を言っているか分からねーと思うが』なんて宇宙猫になってる場合やないなコレ!

 

「下がって、そのまま妹をお願い!」

「えっ!?」

 

そっくりさん達が反応や反論するよりも前に、飛び出す。

広げた右手から一回り大きな手の幻影を出現させて、突っ込んできた『犬』(わんころ)を真正面からにぎにぎ。

同時に電気も避けられるんで、一石二鳥だ。

そうやって抑え込んでいると、わたしのそっくりさんが横合いに回って鉄拳一発。

横っ腹を殴り飛ばされ、怯んで体を傾ける『犬』(わんころ)

すぐに踏ん張ると、標的をわたし達に切り替えた。

よし、狙い通り。

なら、忘れちゃう前に。

 

「えーっと、クリスちゃん?って呼んでいいよね!?その子連れて離脱お願い!」

「ッ、ああ!分かった!」

 

クリスちゃんのそっくりさん。

略して『そっクリスちゃん』は一瞬悔しそうにしてたけど、腕の中の命を見失うほどではないらしい。

 

「ほら!お前も来いよ!」

「うぅ、わうっ!」

 

子犬も、未だ眠る主人に追従することを望んだらしい。

そっクリスちゃんの後を迷いなくついていく。

と思ってたら、目の前で影に入ってった。

あれが例の・・・・こういうとき便利だね。

 

「グワァッ!」

「おっと、せぇいッ!」

 

当然、横っ腹を殴られた程度で倒れる『犬』(わんころ)じゃない。

未だにバチバチしたまま、わたしのそっくりさんに噛みつく『犬』(わんころ)

体を捻って避けたすぐ横で、顎がガチンと閉じられた。

うっへ、あんなんくらったら一溜りもないべよ・・・・。

果敢に反撃するそっくりさんだけど、『犬』(わんころ)は身軽に避けてしまった。

続けてわたしに突っ込んできたので、また『手』を出して身構える。

だけど今度は引っ掴むんじゃなくて、グーにして突き出す。

またニギニギされると考えてたらしい『犬』(わんころ)は直撃しますよね。

 

「だらぁッ!」

「えええええッ!?」

 

ぽーんと空中に上がったところへ、追撃をドーン!

そっくりさんがぎょっとしてる目の前で、『犬』(わんころ)は道路をバウンドしながら転がっていく。

 

「あ、あのッ!やっぱりやりすぎなんじゃないかなッ!?」

「ヒグマの駆除みたいなもんだって、あいつのやる気満々ぶり見たでしょ?野放しする方が危険だよ」

「そ、そうだけど・・・・」

 

まあ、普通は何とか穏便に出来ないかって考えるよね。

・・・・そう、だね。

『普通』はそうだよネー・・・・。

 

「だ、大丈夫?なんだか遠い目になってるよ?」

「あーうん、へーきへーき」

 

なんてのんびり会話してる横合いから、まだまだ元気な『犬』(わんころ)が飛び出してくる。

噛みつきを分かれるように飛びのく。

つま先で地面を摺りながら踏み込み、『手』でまた頭をひっつかむ。

 

「今のうちに・・・・!!」

 

攻撃を、と。

そっくりさんに伝えかけて。

 

『――――そのまま抑えていろ、立花』

 

凛、とした声が通信から聞こえて。

刹那、風が吹いた瞬間。

『犬』(わんころ)の喉元が、一刀のもとに掻っ捌かれていた。

 

「えええええええッ!?」

 

びっくりするそっくりさんの前で、瓦礫をじゃりじゃり鳴らしながら刀を振り払ったのは翼さん。

一連の動作は、まるで枯山水のようなしなやかさ。

いやぁ、結構なお手前で・・・・なんて考えてたら。

 

「立花!無事か!?」

 

後ろから、全く同じ声。

振り向くと、これまた翼さんのそっくりさんが駆け寄ってきてるところだった。

通信が来たわたしはどっちがどっちか何となくわかるけど、わたしのそっくりさんの方はそうもいかないらしい。

喉を掻っ捌いた方と、あとからやってきた方とを交互に見ている。

なので、ちょっとした助け船をだすことにした。

 

「えーっと、翼さんですよね?」

「ああ、お前に蹴られた喉が、とても痛かった風鳴翼だ」

「その節は大変ご迷惑をおかけしました」

 

翼さんも意図を理解してくれたのはありがたかったけど、そんな昔の話が出てくるとは思わなんだ・・・・いや、悪いのはどう考えてもわたしだから、即行で頭下げたけども。

でも、物騒な話をするから、そっくりさん達がびっくりしてるよ。

目に見えてぎょっとしてるもん。

 

「お前達が敵対勢力ではないことは、こちらでも確認している」

 

とはいえ、状況のひと段落には成功したようで。

まだびっくりしてるそっくりさん達へ、翼さんが向き直った。

 

「・・・・皮をかぶっている可能性は否定できないが、ノイズや危険生物の討伐に加えて、人命救助にまで協力されてしまっては無下にも出来ん」

「え、えへへ」

 

対するそっくりさんは、照れくさそうなはにかみ。

翼さんのそっくりさんも、ほっとしている。

 

「ひとまず、本部にて話を聞きたい。同行を願えるだろうか?」

「ああ、こちらに異論はない」

「よろしくお願いします!こっちの翼さん!」

 

・・・・やり取りの横で聞いてた通信によれば、あの燃えてるノイズは全部駆除。

発生していた火災も、消防によって順調に消火されてるとのこと。

ついでに、香子も保護されたらしい。

よかった・・・・。

 

「そうだ、立花。お前のお父様も無事に保護されているそうだ、今は本部で手当てを終えて、妹君に付き添っているらしい」

「・・・・ありがとうございます」

「よかったね!」

「うん」

 

これで懸念事項は無くなったし、一安心かな。

自分の事の様に喜んでくれてるそっくりさんに頷きながら、まずは本部に戻ることになった。

・・・・結局なんで燃えてたんだろう、あのノイズ。


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