チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。
ご感想も目を通しております。

びっくりするくらい筆が進んだ小ネタ達です。


前回のあとがきに、ノアさんの設定をこっそり追加しました。


閑話:小ネタ11

『甚大な被害』

 

「へえ、こっちの翼さんも海外デビューしてるんですね!」

「ああ、そちらと違って公になっているが、だからこそ、私やマリアが目立つことで、他の装者を庇い立てすることに役立っている」

 

並行世界同士、差異を調べるための情報交換の中。

翼の海外デビューについての話になっていた。

フウの方もイギリスで世界に羽ばたき始めたそうで、ハナは自分の事の様に活き活きと話している。

 

「執行者事変の際に、潰えていてもおかしくなかったのだが・・・・後押ししてくれた現地のファンには感謝する他ない」

「へぇー」

 

翼が感慨深く息をつき、物思いにふけた時だった。

 

「イギリスと言えばねー?」

 

ここぞとばかりに、響がにゅっと現れた。

 

「その昔、おやつの定番と言えばちょうちょだったんだよー?」

「えっ?」

「・・・・立花、それはさすがに」

 

そして飛び出たとんでもない言葉に、ハナの目が点になる。

一方の翼は『またか』と額を押さえて、響を嗜めようとして。

 

「あら、よく知っているわね」

「えっ?」

 

了子のまさかの援護に、今度は翼がきょとんとなる番だった。

 

「素揚げにしてたんですよね?」

「ええ、胴はカリカリ、羽はパリパリで、意外とおいしかったのよー?」

「人気だった味付けは?」

「もちろん、バター!」

 

翼の珍しい表情に、ハナが呆気に取られている間。

とんとん拍子に進んでいく会話。

了子が長生きらしく物知りであることも災い(?)して、聞き耳を立てていた面々も『まさか』と信じ始めている。

 

「そういうわけで、『バターで食べるフライ』、『バターでフライ』、『バタフライ』ってなって、そこから、ちょうちょの英名である『バタフライ』が出来たんだよ」

「ちなみにそれまでは、花と花を飛び交う様から『スプリング』と呼ばれていたの。元々春の象徴でもあったから、『バタフライ』の単語が出てからは自然と春を意味する言葉に変わったわね」

 

そんなある種の緊張が漂う中で、二人は話を絞めたのだった。

束の間、沈黙が下りる。

話を聞いていた一人、クリスが。

真偽を確かめようと口を開きかけて、

 

「へぇーっ、そうなんだ!」

「知らなかったデス!」

「うんうん」

「まだまだボクの知らないことが、たっくさんあるんですね!」

 

それを遮るように、ハナ、切歌、調、そしてエルフナインが目を輝かせた。

口々に賞賛を告げ、無邪気にはしゃぐ面々。

彼女達を前にした響と了子は、ニコニコと笑顔を保っていたものの。

やがて、どこか哀愁を漂わせて、

 

「みんな、そのままでいてね・・・・」

 

どこか切実な声で、響がハナの肩を叩けば。

了子は神妙な顔をして、うんうんと頷いている。

 

「っふっざけんな!!やっぱり嘘じゃねーか!あと了子は組むの禁止ィ!!被害が拡大してんぞ!!!!」

 

滅多に見られなかった了子(フィーネ)のお茶目に、ユキがぎょっとしている横で。

クリスは果敢に突っ込みを入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

『どーっちだ?』

 

「未来未来ー!」

「うん?」

 

S.O.N.G.本部。

廊下に響いた元気な声に、未来が振り返ると。

二人の響がニコニコしながら駆け寄ってきて。

 

「「どーっちだ!?」」

 

と、楽しそうに手を広げた。

 

「ああ、ふふふっ」

 

響達を微笑ましく見た未来は、二人をじぃっと観察する。

一見、右が並行世界で、左がこちらの響に見えるが。

 

「んー、こっちがわたしの響で、こっちがハナちゃん」

 

未来は、逆を指さして自信満々に答えた。

すると左にいた響、もといハナの顔が、一瞬でぎょっとする。

 

「すごい、なんでわかったの!?」

「ふふふ、ずっと一緒だったもの」

「うーん、さっすが未来だぁ」

 

『ね?』と目を合わせてくる未来に、響は少し照れくさそうに頬をかいた。

 

「そんな感じの服もなんだか新鮮」

「あはは、やっぱり似合ってないかな」

「まさか、すごくかわいいよ」

「そりゃあ、わたしだからね!」

 

不意打ちの誉め言葉に、虚を突かれた響の肩を。

ハナが満面の笑みで抱き寄せる。

普段は見られない響の表情に、未来はまた笑みをこぼしたのだった。

 

「・・・・すっげーナチュラルに、『わたしの』っつったぞ」

「ああ、言ったな・・・・うん?」

 

遠い目をするユキとフウ。

ふと、視線を感じて振り向くと。

クリスに切歌、それから調が、コーヒー片手に手招きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『許可証』

 

 

事件から一週間と少しが経った本部にて。

わたしと香子は、了子さんに呼び出されていた。

 

「と、いうわけで。二人、んー、三人でもいいわね」

 

事件のてんやわんやで遅れていた、了子さんお手製の拘束具が。

今日になってやっと完成したのだ。

わたし達の右手首には、同じデザインのブレスレットが揺れている。

クロには首輪だ。

使われている素材が素材だけに、どこか煩わしそうに首元をかいていた。

気持ちは分からんでもないけど、やめといた方が良いと思うなぁ・・・。

 

 

「これからはそれを付けてもらうことになります」

「これで、クロと一緒にいられるんですよね?」

「そうなるわね」

 

説明に曰く。

何だか強化されて帰ってきたクロだったけど、『雷切』で抑え込める分の雷属性を帯びていたとか何とかで。

当初の予定通り、翼さん協力の元で作ったんだそうな。

ちょっとちちんぷいと念じれば、『おしおき』が可能だって。

なるほど、犬〇叉における『おすわり』みたいなもんか・・・・。

 

「もちろん、飼い主である香子ちゃんが責任を以って叱ってくれるのなら、それがいいんだけど。あなたはまだまだ子どもだから」

「そのくらいは、ちゃんと分かってます。わたしも、お姉ちゃんが一緒の方が安心するから」

 

そういって、こっちをはにかみながら見上げてくる香子。

かわいいやつめと頭を撫でまわせば、きゃーっと歓声を上げていた。

クロもつられてハイテンションになってる。

尻尾大丈夫?千切れない?

 

「まあ、クロ君が危ない子にならないように、躾は今後もしっかりしておくように」

「えへへ、でもクロはいい子だもんねー」

「わん!」

 

香子の腕に抱えられたクロが、自信満々に返事した。

うーん、かわいい(確信)

 

 

 

 

 

 

 

『もっふもふやぞ』

 

「・・・・なんだこれ」

 

ある日のS.O.N.G.、休憩スペース。

響とクリスが飲み物を求めて来てみれば、妙な光景が広がっていた。

まず目についたのは、大きな毛玉。

よくよく見ると、クロの戦闘形態だったが。

別に勇んでいる様子は見られない。

むしろ、何だか困っているように見える。

その原因は、考えなくても分かった。

マリアだ。

わざわざ靴を脱いで床の上に正座するという、行儀がいいんだか悪いんだか分からない状態で。

クロのやわらかい毛並みに、顔から倒れ込むようにして埋もれていた。

 

「すぅー・・・・はぁー・・・・」

 

・・・・『猫吸い』の、犬バージョンだろうか。

離れていても呼吸音がはっきり聞こえている辺り、相当夢中になっているようだった。

 

「あ、お姉ちゃん、クリスちゃんもこんにちは」

「おう、元気そうだな」

「えへへ」

 

ぽかんとしているところへ、飼い主である香子が話しかけてきた。

 

「それで、何?これ?」

 

他に聞き方が分からなかったので、ストレートに聞いてみれば。

なんでも、偶然マリアと鉢合わせた香子が、世間話に花を咲かせていると。

クロの毛並みについての話題になったそうな。

毎日のブラッシングを以って、如何にもふもふを保つかを熱弁した結果。

こうなってしまった、と。

 

「さっきまでいた了子先生から、ちゃんと許可もらってるよ」

「うーん、そこまでしてるならいいかな」

「やっぱり、びっくりさせちゃった?」

 

やはり、クロを戦闘形態で置いておくことを気にしていたのか。

おずおずと見上げてくる香子。

響は、一つ唸って。

 

「そうだねぇ、急に弓が張り詰めてるサイズが現れた訳だし」

「いや、どんなサイズだよ。初めて聞いた表現だぞ」

「もののーけーふふんふふーん♪」

「あー・・・・」

 

響とクリスの、テンポの良い会話がひと段落したところで。

マリアがやっとこちらに気付いた。

 

「あら、あなた達いたの?」

「随分お楽しみのようですね」

「そうなのよー、癖になりそう・・・・」

 

普段の引き締まった表情が欠片も見当たらない、いっそだらしない顔で。

クロの横腹の毛をもふもふしていた。

 

「・・・・ちょっとだけ、お邪魔しようかな」

「あたしも」

 

あまりに幸せそうな様に感化された二人は、そろそろ近づいて毛並みに触れて。

――――七名いるシンフォギア装者の、半数近くが脱落した瞬間だった。

 

「アニマルセラピーって、こんな感じなんだな」

「これは無理、反則」

「はあぁ、もふもふもふもふもふもふ・・・・」




了子さんと組んででたらめを言うシーンが、一番書きたかったところです。テッテレテッテレテテテテテ

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