チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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先日は、二次創作日間ランキングにお邪魔させていただきました。
日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。


閑話:小ネタ12

『おいでませ並行世界』

 

「よっと、ああ、本部に直通してんだ」

「これは便利」

「うちのもこうだったらいいデスねぇ」

 

並行世界のS.O.N.G.本部、ギャラルホルンの安置室。

開いたゲートから現れたのは、響、調、切歌の三人だ。

先の事件で存在が確認された並行世界。

こちらのシンフォギアが協力的なのを幸いと受け取ったS.O.N.G.は。

連携を深めることを目的に、その調査を決定したのだった。

 

「ひとまず、司令さんのとこに行こうか?」

「アポなしだし、まずはそうするべきですね」

「それじゃあ、出発デース!」

 

一つ二つ会話して、行動を決めた三人。

特に調と切歌の二人は、並行世界の自分に会えやしないかと胸を躍らせながら。

まずはこちらの弦十郎をさがすことした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『近況報告』

 

「というわけで、お邪魔してまーす」

「うん、いらっしゃーい!」

 

のほほんと手を上げて挨拶する響に、元気に返事する(ハナ)

 

「こっちはうちとあんまり変わんないんだね」

「うん、了子さんとレイアさんがいない以外は、だいたい同じだよ」

 

諸々の挨拶をすませた現在は、食堂で一緒に食事をしている次第。

ちなみにメニューはどちらも『サバ竜田定食』、野菜あんかけが食感にアクセントを加える一品だ。

 

「ってことは、エンジニアはエルフナインちゃん一人か、大変だなぁ」

「うん、楽しんでお仕事してるみたいだけど、やりすぎないか心配でね」

「出来るならいろんなとこに連れていきたいよね。ウニバーサスとか、dedeニーランドとか」

「どんな反応してくれるんだろうねぇ」

 

それぞれの脳裏に浮かぶ、それぞれのエルフナインの反応。

どちらも期待通りにリアクションしてくれるだろうと、顔をほころばせる。

 

「エルフナインちゃんと言えば、そっちはLiNKERの研究はどうなってるの?」

「LiNKERの在庫自体は大分カツカツだけど、データチップの解析が間に合えばどうにかなるかなって」

「それって・・・・」

「うん、ウェル博士。そっちのは結構な困ったさんだったって?」

「あはは、うん」

 

当時を思い出したのか、困った顔になる(ハナ)

あまり長引かせない方がいいだろうなと判断して、話題を変えることにした。

 

「んでも、こっちは了子さんがいる分難しくなってるかも」

「そうなの?」

「うん、たまに発狂して暴れてるから、鎮めるのが大変で」

「あわわ・・・・」

 

なお、響が技術班に配属されている理由は。

八割がたそれが目的だったりする。

 

「この前なんかブリッジで動き回ってて、ある意味ホラーだったよ・・・・」

「ひえ、了子さんも大変だぁ・・・・」

 

遠い目で明後日を見る響に、(ハナ)は普段の苦労を偲んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『荒めのファーストコンタクト』

 

「よっと!へぇ、ここが最近見つかったって世界か」

「こっちや、マリア姉さんのところと、あんまり変わらないみたいですね」

「あたしんとこともそんなに変わってねえなぁ」

 

響が留守にしている頃、ギャラルホルンのゲート。

そこから現れたのは、燃えるような髪の少女と、どこか儚げな少女。

二人の年はだいぶ離れている様だ。

ゲートを通るために纏っていたシンフォギアを解除して、目的地へ。

S.O.N.G.本部へと歩き出す。

 

 

 

並行世界について調査をしたがっているのは、このS.O.N.G.だけではなかった。

元から(メタ的にいうなら)『原作世界』とかかわりのあった、また別の並行世界の少女達。

天羽奏(あもうかなで)』と、『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』の二人もまた。

それぞれの所属している組織から、新たに発見された並行世界の調査を指示されたのだった。

 

 

 

始めこそ死んだはずの二人の出現に驚いた弦十郎たちだったが、そんな事情を聞いて何とか落ち着いた。

調査のための滞在を許可することで、二人を歓迎する。

残念ながら、装者のほとんどが出払っていたが。

マリアが響の妹とシミュレーターにいるので、行ってみると良いと話す。

 

「へぇ、こっちの響にゃ妹がいるんだ」

「ああ、ちょうどセレナ君と一つ違いだから、仲良くなれるかもな」

 

姉のことはもちろん、まだ見ぬ同い年に胸を躍らせるセレナを、奏は微笑まし気に見ながら。

教えてもらったら同じだったシミュレーターへ向かう。

 

「お、ここだな」

 

入ってみれば、現在使用中の様で。

扉一つ隔てた向こうが、密林になっている。

 

「もうやってるみたいですね」

 

『戦える子なのかな』と、セレナが零したその時だ。

茂みをかき分ける音が聞こえた。

揃って気付いた二人が目を凝らすと、飛び出してくる人影。

身長を始めとした見てくれから、彼女が弦十郎の言っていた『響の妹』だろう。

何故か後ろを確認している彼女の様子は、尋常ではない。

何事だろうかと首を傾げ始めたところで、現れたのは。

 

「見つけたッ!!」

「ぅわ!見つかった!!」

 

ギアを纏った、マリアだ。

ぎょっとした響の妹は、木々でマリアの視界を遮ろうと試みていたが。

隠れた全てが瞬く間に伐採されて叶わない。

 

「そんな無茶苦茶な、うっわ!」

「観念なさいッッ!!!!」

 

木の根に躓き、バランスを崩したところへ。

握られた短剣がぎらついて。

 

「何やってんだ!!!!」

「――――ッ!?」

 

怒声と共に飛び込む、撃槍。

その後ろで一度構えたセレナが、響の妹に駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

そう、微笑みながら触れようとして。

瞬間、鳴り響くブザー。

虚を突かれた二人が、ばっと見上げると。

タイマーが赤く点滅している。

 

「え、えっと・・・・」

 

そんな中、響の妹改め香子は。

何も呑み込めていない様子で、面々を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お手軽最強護身術』

 

「お騒がせしました」

「いや、こっちこそ割り込んで悪かった」

 

変わらずシミュレータールーム。

ホログラムを引っ込めた隅で、水分補給するマリアと香子に頭を下げる奏。

セレナも、その横で申し訳なさそうにしている。

弦十郎と同じく、始めこそ驚いていた二人だったが。

並行世界云々の事情を話せばあっさり納得した。

心なしか、マリアがセレナを見る目が温かい。

 

「しっかし、熱心だな。お前さん別に装者ってわけでもないだろう?」

「はい、弦十郎さんも、『さすがに小学生は戦わせられない』って」

「翼だけだった頃ならいざ知らず、今は私含めて装者はそろっているから。無理に出撃させる道理はないし、あってはいけないわ」

「じゃあ、どうして・・・・?」

 

こてん、と首を傾げたセレナに、香子が少し困った顔をして話す所によれば。

姉の響が装者なこともあり、元から狙われる可能性があった香子。

人質にされてしまうのはもちろんのこと。

シンフォギア装者の身内を根拠とした、フォニックゲインを期待される実験に晒される危険性もある他。

現在はそこに、『ブラックドッグ』改め『フェンリル』を調伏した実績もある。

どこもかしこも、のどから手が出るほど欲しがっているのは言うまでもないことだった。

 

「それで、了子先生が『鬼ごっこ』で鍛えようって」

「クロの検査で、週一でこちらに通うから、その時に手が空いてる者で指導することになったのよ」

 

普段装者がやっているような、やや(という名のだいぶ)ハードな訓練は。

香子の様な、これから成長期を迎える年代の子供に受けさせられない。

身体にかかる負荷はもちろんのこと、鍛えた筋肉も成長を阻害してしまうからだ。

しかし、だからと言って対抗手段がないのでは、最悪の事態を招きかねない。

そこで、『太古の昔からあらゆる生物が選んでいる、一番実績のある手段』として。

逃げて生き延びる練習、『鬼ごっこ』が採用されたのだった。

先ほどのブザーは、『装者が一定の範囲内に入る』という香子の敗北条件で鳴ったものらしい。

 

「なるほどなぁ」

「でも、いつもあんな感じって大変じゃないですか?」

「いや、今日はちょっと特別っていうか・・・・」

 

未だ尽きぬ疑問をセレナがぶつけると、香子はまた苦笑いを浮かべた。

 

「最終段階が、『ギアを纏ったみんなに、手加減なしで追いかけられる』ってやつなんだけど。どんなものかなって、今のうちに試しておこうと思って」

「目標が見えれば意欲も増すかと判断して、わたしも了承したのよ」

 

『もちろん、風鳴司令には許可を得ている』と、マリアが話を絞めたのだった。

 

「普段は普通に鬼ごっこしてるよ。足跡消したり、反対方向に逃げたって勘違いさせたり!結構本格的!」

「ふふふ、そうなんだ」

「結構楽しんでんだな」

「さっきも言ったけれど、戦わせるつもりはないから。楽しいくらいでちょうどいいのよ」

 

きゃっきゃうふふなんて盛り上がる『妹』達に、にこにこと見守る『お姉さん』達。

見る人が見れば、『天国』と称するであろう光景があった。




※なお、姉を始めとして様々な面々から英才教育を施される模様。>香子ちゃん

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