「――――ぶっはぁッ!!!」
ああああああ!!死ぬかと思った!!
なんか、もう。
これでゴールしてもいいんじゃないかなって思っちゃうけど、そうは行かない。
「これは・・・・!?」
「なんだこりゃあ!?」
両隣を見てみる。
真っ白なギアを纏った翼さんとクリスちゃんが、珍しくおろおろしながら自分の体を見ていた。
そんな二人を面白く思うわたしの格好も、同じく白。
・・・・デュランダルを利用した限定解除。
ひとまずの賭けには、勝てたみたいだ。
――――ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!
ほっとするのも束の間、咆哮が耳を衝く。
見下ろせば、まだまだ健在なトカゲさん。
いやぁ、元気なこって。
「まあまあ、お二人さん。驚くのはその辺にしといて――――」
ほっとく道理は無い。
かける情けも無い。
デュランダルを握り締め、一気に急降下して。
「――――まずこの爬虫類を躾けましょうよ」
その巨体を、思いっきり跳ね上げる。
上がりきったところに接近して、また打ち上げ。
「はあぁッ!!」
「おとなしくしてなァッ!!」
翼さんも意図を理解してくれたのか、途中から参加し始める。
クリスちゃんは反撃しようとするトカゲを狙撃して、その動きを封じ込めていた。
そんなこんなで成す術もないトカゲさんは、戦いにくい狭いカ=ディンギル内から。
お空が広がる、外へ。
「――――Be goneッッ!!」
仕上げに横薙ぎを叩き込めば、トカゲは元の地上をゴロゴロ転がっていった。
「力が漲ってしょうがねぇ、お前どんな手品使ったんだよ」
「タネもしかけもあるんだよ~」
「そこは『ございません』じゃないのか・・・・」
おどけている間にも、起き上がったトカゲが咆えてくる。
あーも、うるさい。
突進をデュランダルで受け止めて、弾き返す。
奴は傾けた体を上手く回転させて、尻尾を振り下ろしてきたけど。
立ち位置を入れ替わった翼さんにより、切り落とされた。
だーから叫ぶな!痛いのは分かったから!
うるさい!
喉元を殴り飛ばせば、カエルが潰れるような声がして途切れる。
「容赦ねぇな・・・・」
「やらなきゃやられる、分かるでしょ?」
「はは、違い無ぇッ!!」
クリスちゃんはにんまり笑うと、性懲りも無くビームぶっぱしようとした口へミサイルをぶち込んだ。
そっちも十分容赦ナシじゃないですかー、ヤダー。
んー、それにしてもやっぱアレだなぁ。
道具って担い手次第なんだなって。
アニメと比べて、どうよこのフルボッコ振り。
フィーネさんじゃない分若干ヌルゲーになっているのかな?
あ、翼さんが四肢斬り飛ばした。
なんかツチノコの亜種みたいになってる。
もうそろそろいいかな?
辛かろう?苦しかろう?
楽になりたかろう?
ははは、いい子だ。
語らずとも分かるよ、物欲しそうに手元のデュランダルを見てるもんねぇ?
うんうん、お互い十分暴れたし、っていうかちょっと飽きてきたし。
じゃあ、そういうことで。
再三接近する。
顎の下をよく狙って、デュランダルへ力を充填する。
――――突然だけど。
翼さんの『蒼ノ一閃』を見たとき、みんなは何を思い浮かべただろうか。
定番はやっぱり『約束された勝利の剣』だったり、某大人気RPG歴代技の『魔神剣』だったり。
ちょっとマニアックなのだと、『ソードビーム』とかあるかもしれない。
だけどわたしはやっぱり、一番多く想起されたであろう名前を咆える。
「――――月牙天衝ォッ!!!」
解き放たれる、黄金の光。
飛び立つ斬撃は獲物の首を撥ねるべく、風を切って駆け抜けて――――
(あれ?そういえば・・・・?)
デュランダルとネフシュタンって、対消滅してたっけ?
こう、『無限』と『無限』がぶつかり合って、矛盾的な意味で大変なことになって。
なんて呑気に思い出した直後。
相手のどまん前にいたわたしは、閃光に飲み込まれる。
閑話休題。
とまあ、ほぼほぼワンサイドゲームでトカゲもといアメリカのおっちゃんはオダブツ!したのであります。
デュランダルは流石に消滅してしまったし、ネフシュタンも同じ。
ソロモンの杖は
限定解除はしたままだけど、これもほどなく終わるだろう。
周辺への被害も原作に比べて格段に少ないし、まずまずの結果じゃなかろうか。
どっちにしろカ=ディンギルという異端技術の塊はあるんで、周辺の封鎖は不可避だろうけど。
「お、日の出」
戦闘がそんなに長引かなかったお陰なのか、朝日が顔を出す瞬間を拝めた。
元旦のご来光ほどじゃないけど、なんか、こう。
ありがたみがあるね!
溜まった疲労と終わった高揚感に任せるがまま、何となく手を合わせておいた。
うん、何かご利益もらえた気がする。
「立花、少し浮ついているだろう?」
「ありゃ、ばれました?」
翼さんにたしなめられて、ぺろっと舌を出して誤魔化す。
「敵は倒したが、何が起こるか分からんのだ。緩みすぎるのは感心しないな」
「はい、すみません」
言うことはごもっともだし、実際調子乗ってるとこも自覚していたので。
素直に謝っておく。
「・・・・まあ、気持ちは分からんでもないが」
・・・・訂正。
翼さんもちょっとテンションあがってたみたい。
よくよく見てみると、ほっぺたがほんのり赤かった。
「――――お前たち!」
「司令?」
先輩の可愛い一面にほっこりしていると、弦十郎さんが駆け寄ってくるのが見える。
そのはるか後方で、ぐったり膝を突いている藤尭さんと、それを支える緒川さんの姿が。
もしかして、あの地下からここまで一気に駆け上がってきたんだろうか。
そりゃ疲れて当然だよ。
むしろふつーに動いている弦十郎さん達がおかしいんだよ。
「一仕事終えたところすまないが、厄介ごとはまだ続いている」
「忙しねぇな、今度はなんだ?」
合流するなり、抱えていたノートパソコンを見せてくれた。
三人一緒になって画面を覗き込む。
「先ほどはがれた月の欠片、現在落下中とのことだ」
「・・・・はぁッ!?」
クリスちゃんの素っ頓狂な声と一緒に、空を見上げると。
確かに分かるか分からないか、びみょーな速度で動いているっぽい欠片が見えた。
っていうか欠片って言ってるけど、あのサイズが落ちてきたらやばいって。
「あれほどのものを、通常の兵器で破壊しきることは難しい。出来るのは君たちだけだろう」
「はいはい!じゃあ飛べる今のうちに、さっくり壊してきますねー」
申し訳なさそうにする弦十郎さんを元気付けるために、わざと大きめの声で明るくお返事。
そんなに気に病まなくても、それがわたし達のお仕事なんですから。
だからそんなしょげた顔しないでくださいなー。
「だな。どちらにせよ放っておく理由は無い」
「最後の仕上げか、〆の一暴れにゃちょうどいい!」
翼さんとクリスちゃんもヤル気満々。
士気に問題なし、実にいいことだ。
「すまない、頼んだぞ」
弦十郎さんに向け、力強く頷いて。
地面を踏みしめ、空へ繰り出す。
これが終わったら・・・・そうだなぁ。
まずは未来に褒めてもらいたいな、なんて。
我ながらちょっと子供っぽいかもしれない。
でも飛びついてハグするくらいならしてもいいかな。
・・・・あの優しさに、ほんの一時だけ。
甘えさせて、もらえたら。
ひとまず書き溜めの第一波はここまでです。
間に合えばすぐに第二波を投稿できるかもしれません。