チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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これにて決着

「――――ぶっはぁッ!!!」

 

ああああああ!!死ぬかと思った!!

なんか、もう。

これでゴールしてもいいんじゃないかなって思っちゃうけど、そうは行かない。

 

「これは・・・・!?」

「なんだこりゃあ!?」

 

両隣を見てみる。

真っ白なギアを纏った翼さんとクリスちゃんが、珍しくおろおろしながら自分の体を見ていた。

そんな二人を面白く思うわたしの格好も、同じく白。

・・・・デュランダルを利用した限定解除。

ひとまずの賭けには、勝てたみたいだ。

 

――――ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

ほっとするのも束の間、咆哮が耳を衝く。

見下ろせば、まだまだ健在なトカゲさん。

いやぁ、元気なこって。

 

「まあまあ、お二人さん。驚くのはその辺にしといて――――」

 

ほっとく道理は無い。

かける情けも無い。

デュランダルを握り締め、一気に急降下して。

 

「――――まずこの爬虫類を躾けましょうよ」

 

その巨体を、思いっきり跳ね上げる。

上がりきったところに接近して、また打ち上げ。

 

「はあぁッ!!」

「おとなしくしてなァッ!!」

 

翼さんも意図を理解してくれたのか、途中から参加し始める。

クリスちゃんは反撃しようとするトカゲを狙撃して、その動きを封じ込めていた。

そんなこんなで成す術もないトカゲさんは、戦いにくい狭いカ=ディンギル内から。

お空が広がる、外へ。

 

「――――Be goneッッ!!」

 

仕上げに横薙ぎを叩き込めば、トカゲは元の地上をゴロゴロ転がっていった。

 

「力が漲ってしょうがねぇ、お前どんな手品使ったんだよ」

「タネもしかけもあるんだよ~」

「そこは『ございません』じゃないのか・・・・」

 

おどけている間にも、起き上がったトカゲが咆えてくる。

あーも、うるさい。

突進をデュランダルで受け止めて、弾き返す。

奴は傾けた体を上手く回転させて、尻尾を振り下ろしてきたけど。

立ち位置を入れ替わった翼さんにより、切り落とされた。

だーから叫ぶな!痛いのは分かったから!

うるさい!

喉元を殴り飛ばせば、カエルが潰れるような声がして途切れる。

 

「容赦ねぇな・・・・」

「やらなきゃやられる、分かるでしょ?」

「はは、違い無ぇッ!!」

 

クリスちゃんはにんまり笑うと、性懲りも無くビームぶっぱしようとした口へミサイルをぶち込んだ。

そっちも十分容赦ナシじゃないですかー、ヤダー。

んー、それにしてもやっぱアレだなぁ。

道具って担い手次第なんだなって。

アニメと比べて、どうよこのフルボッコ振り。

フィーネさんじゃない分若干ヌルゲーになっているのかな?

あ、翼さんが四肢斬り飛ばした。

なんかツチノコの亜種みたいになってる。

もうそろそろいいかな?

辛かろう?苦しかろう?

楽になりたかろう?

ははは、いい子だ。

語らずとも分かるよ、物欲しそうに手元のデュランダルを見てるもんねぇ?

うんうん、お互い十分暴れたし、っていうかちょっと飽きてきたし。

じゃあ、そういうことで。

再三接近する。

顎の下をよく狙って、デュランダルへ力を充填する。

――――突然だけど。

翼さんの『蒼ノ一閃』を見たとき、みんなは何を思い浮かべただろうか。

定番はやっぱり『約束された勝利の剣』だったり、某大人気RPG歴代技の『魔神剣』だったり。

ちょっとマニアックなのだと、『ソードビーム』とかあるかもしれない。

だけどわたしはやっぱり、一番多く想起されたであろう名前を咆える。

 

「――――月牙天衝ォッ!!!」

 

解き放たれる、黄金の光。

飛び立つ斬撃は獲物の首を撥ねるべく、風を切って駆け抜けて――――

 

(あれ?そういえば・・・・?)

 

デュランダルとネフシュタンって、対消滅してたっけ?

こう、『無限』と『無限』がぶつかり合って、矛盾的な意味で大変なことになって。

なんて呑気に思い出した直後。

相手のどまん前にいたわたしは、閃光に飲み込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、ほぼほぼワンサイドゲームでトカゲもといアメリカのおっちゃんはオダブツ!したのであります。

デュランダルは流石に消滅してしまったし、ネフシュタンも同じ。

ソロモンの杖は残機(ノイズ)供給以外は特に関係なかったはずだから、多分その辺に落ちてる。

限定解除はしたままだけど、これもほどなく終わるだろう。

周辺への被害も原作に比べて格段に少ないし、まずまずの結果じゃなかろうか。

どっちにしろカ=ディンギルという異端技術の塊はあるんで、周辺の封鎖は不可避だろうけど。

 

「お、日の出」

 

戦闘がそんなに長引かなかったお陰なのか、朝日が顔を出す瞬間を拝めた。

元旦のご来光ほどじゃないけど、なんか、こう。

ありがたみがあるね!

溜まった疲労と終わった高揚感に任せるがまま、何となく手を合わせておいた。

うん、何かご利益もらえた気がする。

 

「立花、少し浮ついているだろう?」

「ありゃ、ばれました?」

 

翼さんにたしなめられて、ぺろっと舌を出して誤魔化す。

 

「敵は倒したが、何が起こるか分からんのだ。緩みすぎるのは感心しないな」

「はい、すみません」

 

言うことはごもっともだし、実際調子乗ってるとこも自覚していたので。

素直に謝っておく。

 

「・・・・まあ、気持ちは分からんでもないが」

 

・・・・訂正。

翼さんもちょっとテンションあがってたみたい。

よくよく見てみると、ほっぺたがほんのり赤かった。

 

「――――お前たち!」

「司令?」

 

先輩の可愛い一面にほっこりしていると、弦十郎さんが駆け寄ってくるのが見える。

そのはるか後方で、ぐったり膝を突いている藤尭さんと、それを支える緒川さんの姿が。

もしかして、あの地下からここまで一気に駆け上がってきたんだろうか。

そりゃ疲れて当然だよ。

むしろふつーに動いている弦十郎さん達がおかしいんだよ。

 

「一仕事終えたところすまないが、厄介ごとはまだ続いている」

「忙しねぇな、今度はなんだ?」

 

合流するなり、抱えていたノートパソコンを見せてくれた。

三人一緒になって画面を覗き込む。

 

「先ほどはがれた月の欠片、現在落下中とのことだ」

「・・・・はぁッ!?」

 

クリスちゃんの素っ頓狂な声と一緒に、空を見上げると。

確かに分かるか分からないか、びみょーな速度で動いているっぽい欠片が見えた。

っていうか欠片って言ってるけど、あのサイズが落ちてきたらやばいって。

 

「あれほどのものを、通常の兵器で破壊しきることは難しい。出来るのは君たちだけだろう」

「はいはい!じゃあ飛べる今のうちに、さっくり壊してきますねー」

 

申し訳なさそうにする弦十郎さんを元気付けるために、わざと大きめの声で明るくお返事。

そんなに気に病まなくても、それがわたし達のお仕事なんですから。

だからそんなしょげた顔しないでくださいなー。

 

「だな。どちらにせよ放っておく理由は無い」

「最後の仕上げか、〆の一暴れにゃちょうどいい!」

 

翼さんとクリスちゃんもヤル気満々。

士気に問題なし、実にいいことだ。

 

「すまない、頼んだぞ」

 

弦十郎さんに向け、力強く頷いて。

地面を踏みしめ、空へ繰り出す。

これが終わったら・・・・そうだなぁ。

まずは未来に褒めてもらいたいな、なんて。

我ながらちょっと子供っぽいかもしれない。

でも飛びついてハグするくらいならしてもいいかな。

・・・・あの優しさに、ほんの一時だけ。

甘えさせて、もらえたら。




ひとまず書き溜めの第一波はここまでです。
間に合えばすぐに第二波を投稿できるかもしれません。

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