お前達を忘れない。
お前達の罪を忘れない。
お前達の所業を忘れない。
胸に抱くはただ一つ。
『許さない』
当たり前の権利を、持ちえて当然の感情を。
無残に傷つけ、血に塗れさせたお前達を。
肉と言う肉を引き裂き、痛みと言う痛みを覚えさせ、泣いて赦しを請わせるその日まで。
決してお前達を忘れない。
『許さない』
『許さない』
『許さない』
あらゆる想いを傷つけた、あらゆる尊厳を嬲り殺した。
お前達を決して、赦さない。
◆ ◆ ◆
ヒィーハァーッ!
本日の天気は雨時々ノイズの嵐が吹き荒れマースッ!!
三ヶ月前。
アメちゃんとのなんやかんやで決まった、『サクリストS』こと『ソロモンの杖』の引き渡し。
東京から専用車両に揺られまして、山口は岩国の米軍駐屯基地までの長旅。
当然何も起こらないわけがなく。
現在進行形でノイズの団体様に集られている次第ー!
「一旦戻るぞ!」
「おーらい」
雨粒に打たれながら周囲をざっと確認しおえて。
クリスちゃんと二人して、中に引っ込む。
車両の屋内には、友里さんともう一人。
「連中、明らかにこっちを獲物と定めていやがる」
「モテモテですね、『ウェル博士』?」
銀色の髪に白衣。
『ウェル博士』こと、『ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス』さん。
真っ白な見た目とは裏腹に、ススワタリとタメ張れる真っ黒なモツをお持ちのマッド。
その上本当に優秀だってのが、彼の厄介さを際立たせてるよね。
なお、今はまだキレイキレイなイケメンさんなんだけど。
「はは、男としては女の子に囲まれてみたいものです」
「現状まさにそのとおりなのに?」
「公私の区別は付ける派でして」
「さっすが、出来る人は違うなぁ~」
『HAHAHA!!』なんて笑っている間にも、友里さんは本部と通信を繋げている。
と、こっちを振り返って、手を振った。
移動するらしい。
「ノイズに混じって、高速で移動する反応・・・・?」
ふと、友里さんのそんな声が聞こえて。
何となく周りを見渡してみる。
でも雨風が顔にぶち当たって、見えるものも見えないので断念。
とっとと次の車両に乗り移る。
「はい、はい・・・・分かりました、迎撃します!」
「出番ってわけだな!」
屋根の下に入って程なく、本部からのゴーサイン。
クリスちゃんも暴れたくってたまらないのか、ヤル気満々だ。
と、上から物音。
飛行型が次々屋根をぶち破り、友里さんがそこへ何度も発砲している。
ゴーサインも出たことだし、遠慮はしない。
全力全開でいかせてもらおうじゃないか・・・・!
聖詠を唱えながら、再び外へ。
暗がりに慣れた目で見渡せば、もう説明不要のノイズの群れ。
「視界は悪い、制空権はあちらが独占。イケる?」
「っは!イケるも何も、余裕が爆発しすぎだぜ!」
ごしゃん、と両手にガトリングを構えたクリスちゃんは。
何故かプルプルふるえて。
「ああ、そうだとも・・・・」
そこへさらに、腰のグレネードと背中のミサイルも追加される。
・・・・んー。
ちょっと盛りすぎじゃあ・・・・?
「どっかのバカが提案したッ!!『DMD』に比べたらああああああああッ!!!!」
あっ(察し)
クリスちゃんの雄叫びに呼応して、大バーゲンといわんばかりに放出される銃火器達。
まるで鬱憤を晴らすように、鉛玉が次々ノイズをあの世送りにしている。
・・・・あの時提案した『
了子さんが珍しく本気出して組んだ、ハード以上の難易度だけど。
結構ガチで仕留めにかかっている内容だからなぁ・・・・。
ちなみにクリア者は未だ無し。
まあ、バーチャルとはいえ、二課最強勢に徒党を組まれたら・・・・ねえ?
「そいっ!」
ひとまずサボるわけにもいかんので、わたしも千切っては投げ、千切っては投げ。
面倒になって、途中から千切るだけにしたい衝動に駆られるけど。
それはそれで負けた気がするので、黙々と殴り続ける。
殴りつつも、考える。
――――ノイズが古代人が作り出した兵器であることは、了子さん自身から語られている。
統一言語を失い、相互理解を失った彼らは。
分かり合うよりも排除を選んだ。
そのバケモノに対抗しようとして、このガングニールを始めとした聖遺物が作られたわけなんだけど。
これは一旦置いといて。
今回出現しているノイズは、誰かに操られているらしいとのこと。
ノイズは人間を殺戮するようにのみプログラムされていることを考えると。
目的を持って動いているこの状況は、何よりも不自然ってことになる。
んで、普通ならここで『じゃあ誰が?』ってなるんだけど。
原作知識を持っている身としては、既に粗方の検討はついているんだよなぁ。
なお『粗方』と表現しているのは、他に起こりうる様々な要因を踏まえた結果だ。
博士を疑ってたら実はそうじゃなくて、足元すくわれましたとか。
ぶっちゃけワロエナイ。
「おっとぉ?」
とまあ、なんやかんや考えているうちに。
親玉っぽい個体を発見。
二課の通信でもアレが司令塔だって言っているから、間違いない。
じゃあ、見逃す理由も無いので。
右腕を変形させる。
ジャマダハルにロケットエンジンをつけた、いかにも威力ありそうな形。
ジャッキで足元を固定して、エンジン点火。
気付いた向こうも、こちらに狙いを定めてくる。
引きつける、引きつける。
溜めて、溜めて、溜めて。
―――――今ッ!!
「ヒャッハー!ノイズは掃討だァーッ!!」
モヒカンが似合いそうな台詞を叫びながら、突進!
携えた刃を、真正面からノイズにぶち当てるッ!
でもでも、やっこさんってば生意気にいっちょ前の装甲を持っているらしい。
ぶつかった箇所で火花を散らしながら、相手を往なすだけに留まった。
クリスちゃんの援護を受けつつ、車両に着地。
「くっそ、やっぱ飛べねぇのはきっついな!」
「無いものねだりなんていつものこと!それに今は『アレ』があるっしょ?」
「バァーカ!あのコンビネーションはまだ未完成だろッ!」
「あはは、とっておきたいとっておきだもんね!」
接近するノイズも、飛び回るノイズも。
殴って撃ち落しながら軽口を叩き合っている脇。
ふと、後ろに目を向けて。
「ッ、ちょっと失礼ッ!!」
「うおッ!?」
クリスちゃんをホールドして、足元をぶち抜く。
二人して車内に落ちれば、頭上の穴は一気に暗くなった。
「トンネルか・・・・悪い、助かった」
「お互いサマー」
とはいえ、未だにノイズはこっちを諦めてない。
車内にいても、連中の無機質な殺意をビンビン感じる。
・・・・そういえば、原作だとここで車両を切り離してたんだっけ。
どっちにしろ制空権取られた所為で苦戦しているわけだし、攻めるなら閉鎖空間にいる今が好機か。
「こうなったらアレだね、車両を切り離すか」
「おいおい、おっさんの
「ちっちっちー、ところがそうでもない」
予想通り怪訝な顔するクリスちゃんへ、指を振る。
「奴さん方、『透過』は出来ても『透視』は出来ないっしょ?」
「ッ、そういうことか・・・・!」
こっちの意図は伝わったらしい。
クリスちゃんが頷いてくれたことで、決行が決まった。
早速外に出て連結部分へ。
「これでいいか?」
「ぐっじょぶ!後はぁ、っとぉ・・・・!」
連結部分を狙撃で壊してもらい、両足で力いっぱい押しのける。
「友里さん達は任せた!」
「そっちこそきっちり決めろよ!」
ゆっくり動く車両が、ある程度離れてから飛び降りた。
また右腕を引き絞って、構える。
ロケットエンジンを噴かして、ぐっと溜める。
まだ我慢、まだ我慢。
じぃーっと耐えて・・・・・今ッ!
さあ、みなさんご一緒にッ!
「スクラップフィストオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
最速で!
最短で!
真っ直ぐに!
一直線にッ!!
握った拳を、叩きつけるッッ!!!
殴られてへこんだ箇所から、爆発。
轟音に紛れてノイズ達の断末魔が聞こえる。
紅蓮の爆弾魔さんなら大喜びしそうな光景だけど、わたしはあそこまで変態じゃないので。
爆風に乗ってとっとと退避。
『ノイズの反応、全て消失!』
『お疲れ様、派手にやったわね』
二課の通信を聞きながら、右腕から排熱。
背中に浴びる朝焼けが、何とも心地いい眩しさだった。
そんなこんなで。
あれからは特にトラブルもなく、無事に目的地へ到着。
「見せてもらいましたよ、『ルナアタックの英雄』と呼ばれた実力を」
友里さんが電子の印鑑を押している隣で、ウェル博士が話しかけてくる。
・・・・英雄。
英雄ねぇ・・・・。
「はは、女の子には縁遠いですかね」
「まあ、なりたくてなったわけじゃないので」
微妙な表情が出てしまっていたみたいだけど、ウェル博士は戸惑っていると勘違いしてくれたらしい。
大らかに笑って、流してくれた。
「混乱に陥っている現在、世界は英雄を求めています」
そして始まる、例のあの台詞。
「そう!誰もが羨望するッ!英雄の存在をッ!」
見開かれた瞳からは、幾ばくかの狂気が読み取れて。
・・・・普通なら、黙ってスルーするべきなんだろうけど。
あえてこう返す。
「英雄なんていなくても、世界は回りますよ」
某トゥーハンドがお仲間の黒人さんの台詞を、ちょっといじる。
・・・・そうだよ。
誰もが納得できる正義や英雄だなんて、いるわけがないじゃん。
もし、実在していたのなら。
わたしの家族や、未来は。
「・・・・ッ」
自分の思想を否定されたからだろう。
こっちを見下ろすその顔は、虚を突かれたように見えて。
その実、わずかばかりの敵意を感じさせた。
「まあ、いいでしょう」
次の瞬間には、元の人畜無害そうなモヤシさんに戻っていたけど。
「あなた方に託されたこのソロモンの杖は、僕がきっと役立てて見せます」
「不束なソロモンの杖ですが、よろしくお願いしマース」
「頼んだからな」
自分の胸に手を当てて宣言する彼に一礼したことで。
今度こそ今日の任務は終わった。
「――――気になる?」
「・・・・まあ、な」
米軍基地を出たところで、さっきから浮かない顔をしているクリスちゃんに話しかける。
「ソロモンの杖は、簡単に扱っていいものじゃねぇ。あの脅威は身を以って経験しているからな」
経験って、アレかな。
ルナアタック最終決戦の、あのトカゲ。
フィーネさんに比べれば雑魚だったけど、限定解除無しなら十分強敵ではあったんだよなぁ。
「尤も、目覚めさせたあたしが言うことじゃねぇだろうが・・・・」
「だからこうやってお仕事してんでしょ?」
顔を覗きこむと、ちょっと驚いた顔。
面白い。
「そうよ。クリスちゃんが真剣なことは、皆分かっているから」
友里さんも便乗して、何度も頷いていた。
「もちろん響ちゃんのことも」
「いっやぁ、光栄ですなぁ」
手を広げておどければ、友里さんは面白そうに笑った。
「さて、そんな二人のために、司令が東京までのヘリを手配してくれたわ」
「マジっすか!?」
読めていても、これはありがたいッ!
早く未来の膝枕でスヤァしたいよ!
―――――なんて、思った後ろで。
爆発、炎上。
振り向けば、大型ノイズが咆哮を上げているところだった。
・・・・・読めていても。
辛いいぃ~・・・・。
「マジっすか・・・・」
「マジだ!行くぞッ!」
クリスちゃんに促され、米軍基地へとんぼ返り。
・・・・『フロンティア事変』が始まる。
さてさて、
『
響の何気ない提案に、了子がノリノリで開発したシュミレーターの新難易度。
弦十郎(ネフシュタン装備)と緒川(忍者フル装備)が、フィーネ(ソロモンの杖装備)の援護を受けながら攻撃してくる。
当然ヤル気満々で向かってくるため、一瞬でも気を抜けば。
拳で砕かれるか、忍術に翻弄されるか、ノイズの弾幕に飲み込まれる。
クリア者は未だ無し。
挑んだ装者は毎回涙目になって断念する。
『チョイワルビッキー』のストックは、今回でおしまいです。
少なくてすみません(´・ω・`)