チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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ごめんなさい、今回も少ないっす・・・・。


フーアーユー?

「――――さって、行くとするかネェ」

 

ノイズ溢れる岩国基地。

見下ろしていたそいつは、鉄塔の上から飛び降りる。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

オッラ!そこのけそこのけわたしがとぉーるッ!!

なんてテンションで。

逃げ回る米兵とすれ違いながら、ノイズを殴ったり蹴ったり。

 

「こっちだ!早く!」

 

まだ軍人やら職員やらがいる状態なので、クリスちゃんは避難誘導メインで動いている。

喋ってるのはもろ日本語なんだけど、みなさんそこそこ日本で暮らしているお陰か。

割と通じているのは幸いだった。

ノイズの標的が、暴れる私に集中しがちなのもプラスされていると信じたい。

 

「わっしょーい!」

 

ちょっと大き目の奴を引っつかんで、叩きつけ。

衝撃で浮き上がった個体を、クリスちゃんが狙撃していく。

ん、避難は終わったみたいね。

それじゃ、気持ちリミッターを一個解除して・・・・。

 

「さあ、クソ共」

 

――――思い出す。

日陰にいた頃を、一歩(たが)えば死ぬ場所を。

 

「泣け、喚け、そして死ね」

 

低く構えて、突っ込んでいく。

・・・・そこ!『冥王乙』とか言わないの!

先頭にいた個体を殴り、その後ろにいた個体を殴り。

わたしが移動するたびにノイズを次々吹き飛ばしていく。

ほら!あんまり文句言うならこうしちゃうぞ!?オッラァアアン!?

なんて。

どこに届くか分からないツッコミをしながら、いつも通りノイズを葬り去っていく。

――――そう。

予定(いつも)通り』のはずだった。

イレギュラーは起こるだろうと思っていた。

思っていただけで、ただ呑気に構えていた。

ノイズの勢いが収まってくる、その数が少なくなってくる。

そろそろ終わるかなと、思ったときだった。

 

「あああああああああッ!!!」

 

施設の一角。

炎に巻かれながら表れたのは、白衣を着たひょろいイケメン。

ようするに、ウェル博士だった。

・・・・・うん!?

 

「あああああああ痛い痛い痛いいいいいいいい!」

「お、おい!どうした!?」

 

白衣や銀髪が、黒や赤に汚れていて。

ついでにメガネもなくしたウェル博士は、ひたすら痛みに悶えている。

そのあんまりな様子に、クリスちゃんがノイズを片付けながら駆け寄っていた。

・・・・いや、何があった!?

思っても見なかったイレギュラーに動揺するけど、ほっとく道理も無い。

ひとまず怪我人にカテゴライズして、クリスちゃんの援護をしようと。

わたしも傍に、駆けつけて。

 

「――――」

 

――――全身が、総毛立つ。

気温を感じないから、秋の涼しさなんて関係ない。

これはそんなものよりもっと重大で、危険な・・・・!

 

「バカッ!後ろッ!!」

 

振り向き様に払えば、手ごたえ。

見上げる。

手甲が何かと迫り合っている。

これは、武器。

重たい、多分斧。

 

「――――へェ?いーい反応するじゃねェか?」

 

聞こえる、ガラの悪い声。

集中しすぎて白んでいた視界(右目)が、戻ってきて。

目の前の、敵を捉えた。

鍛えられた、随分とガタイのいい体形。

上半身は無骨なジャケット以外何も着てなくて、見えるシックスパックが眩しい。

腰にはソロモンの杖、多分博士からパクったんだろう。

けれど何より目を引くのが、真っ赤なメッシュが入った派手な髪。

その手に握っているのは、巨大な斧剣。

無骨で分厚い刃が、わたしの手甲と迫り合っていた。

・・・・・・いや。

マジで誰よ!?

 

「拾ったら帰るつもりだったけど、面白ェ・・・・!」

 

弾かれて、相手が後退する。

ぶつけられる、敵意。

拭くれ上がった闘気が、大気をびりびり震わせた。

 

「ちょいと付き合ってくれや、ネェちゃん!!」

 

轟、と。

目の前。

振り上げた刃が、ぎらついて。

 

「――――ッ!!」

 

刃面を殴り飛ばして、回避。

がら空きになった胴体へ、蹴りを突き刺す。

 

「ッラァ!!!」

 

見た目どおりの、重い一閃。

しゃがんで前転で避けて、足払い。

体勢を崩したところへ、アッパーを見舞った。

相手は上手く仰け反って避けると、片手を離して殴ってくる。

拳は楽に避けられたけど、直後のヤクザキックは受けてしまった。

柄での打撃から逃げつつ、距離を取る。

 

「そーぅらまだまだぁッ!!」

 

地面を巻き込みながら、ぶんぶん振り回せば。

斬撃が飛ばされてきた。

避けたり防いだりしながら、何とかやり過ごす。

ってか、何だアレ!?

シンフォギアにしちゃぁ、色々突っ込みどころ満載だし!?

 

「ハハハッ!いーぜいーぜ!楽しませてくれ!」

「ッ一人でヤってろ!」

 

もちろんやられっぱなしじゃいられない。

刺突刃を展開して、こっちも斬撃を飛ばす。

威力は劣るけど、その分手数を稼げる・・・・!

相手を観察すれば、思ったとおり小さな傷が出来始めていた。

全身に満遍なく刻まれる痛みは、確かに奴を鈍らせる。

 

「あたしを忘れんなァッ!!」

「うっお!?」

 

これを隙と見たのか。

攻防に入り損ねていたクリスちゃんから、グレネードの援護射撃。

直撃コースでぶち込まれた火炎に、相手が包まれる。

 

「やったと思うか?」

「それフラグ」

 

隣に立ったクリスちゃんと、炎を睨んでいれば。

 

「――――ぶっはぁ!!熱っちィなァ!!オイィ!!」

 

案の定、ピンピンした様子で出てくる敵。

焦げてるんで、無傷ってわけじゃないみたいだけど。

ダメージらしいダメージは、与えきれてなかった。

 

「何?お前?」

「熱っちー熱っちー・・・・あ?俺?」

 

服の所々で燻る火を叩いていた奴は、こっちに目を向ける。

・・・・改めて対面して、感じたのは。

『人間じゃない』という直感だった。

 

「俺ァよ?・・・・あ?」

 

相手が何かを言いかけた時、不自然な形で口が止まった。

そのまま明後日の方を睨むように見た彼は、少し沈黙した後。

 

「・・・・ッチ、わぁーったよ。悪かったって」

 

何だかつまらなさそうに舌打ちして、誰かに了承を答えていた。

・・・・誰かと通信してた?

ってことは、仲間がいる?

 

「おい!」

 

斧剣を肩に担いだ相手は、あくどい笑みを向けてくる。

 

「悪ィが今日はここまでだ。また後でナァ?シンフォギアさんよ」

「ッそう簡単に帰れると思ってんのか?」

「帰るんだナァ、これが」

 

ボウガンを突きつけたクリスちゃんが、声にドスを利かせながら問いかける。

対するそいつは小さく鼻を鳴らすと、ソロモンの杖を起動させた。

奴の背後の空間が歪む。

やがて見えてくるサイケなカラーリング。

・・・・初めて生で見た。

アレが、バビロニアの宝物庫・・・・!

 

「心配すんな」

 

こっちの動揺なんてお構いナシに、数歩下がりながら奴は言う。

 

「そのうち嫌でも会うさ」

 

いたずらを仕掛けるように、何やら意味深なことを言うと。

そのまま、体を傾けて。

 

「ちょっ!?待―――!!」

 

止める間もなく。

宝物庫の中へ、身を躍らせた。

連れ戻そうにも、駆けつけた頃には歪みが消えていて。

もう、どうしようもなくなっていた。

 

「何、アレ・・・・」

 

虚しく空を切った手を見つめて、呆然と呟くしか出来なかった。

・・・・・ホントに何が起こってんの?

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

『――――彼との連絡がつきません。情報に寄ればイワクニが襲撃されたとのこと』

 

「・・・・『例の連中』である可能性が高い、ということね」

 

『ええ、幸い起動の準備は整っていますが・・・・』

 

「大丈夫よマム、やるべきことは分かっている」

 

『頼みましたよ』




「このままやとマリアさん達の難易度がDMD、どうすっべ」
考えた結果こうなりました。
ビッキーは生き残れるか・・・・!(

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