チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

49 / 201
了子「ものすっごい久しぶりの出番な気がする。具体的には、一月くらい」



今回LiNKERに関する独自解釈・設定が山盛りです。
苦手な方はご注意を。


あーいー!

――――その話を聞いたとき、頭が真っ白になった。

目の前が何も見えなくなって、周りの音が遠くに聞こえて。

なのに自分の呼吸だけは、やけにはっきり感じていた。

 

『響?どうしたの?大丈夫?』

「ぇ、ぁ・・・・うん、平気。正直ちょっとびっくりしたけど、うん、へーき・・・・へーき」

 

未来の不思議そうな声で、すぐ意識を取り戻して。

どうにか取り繕うことに成功した。

 

「・・・・未来は、いいの?」

 

・・・・どうにか気を取り直した上で、聞いてみる。

電話の向こう、出来ればネガティブな言葉を聴きたいと期待して。

 

『うん、いいの。わたしに出来ることなら頑張りたいし、響に甘えてばかりじゃいられないもの』

「・・・・・そっか」

 

その明るい声に、あっさり裏切られた。

すぐに『裏切られた』なんて感じた自分がいやになって、体が重たくなる。

 

「・・・・LiNKERは、本当に大変らしいから。無茶だけはしないでね」

『うん、気をつける。了子さん達が視てくれるから、大丈夫だとは思うけど』

 

顔が見えない受話器越しでよかった。

だって今のわたし、全然大丈夫じゃない顔をしている。

 

『あ、そろそろいかなきゃ。響も頑張って、ちゃんと休憩もしてね?』

「うん、ありがとう」

 

それじゃあ、と。

通話を切った。

・・・・・この胸のもやもやも、ぶっつり切れればいいのにと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

二課、仮説本部。

その実験室では、新たな装者を生み出す準備が着々と進められていた。

 

「・・・・ッ」

 

入院患者のような衣服を着て待機しているのは、未来。

今回了子から話を受け、二つ返事で了承した彼女。

自ら望んだこととは言え、これから行うことへの緊張感までは拭いきれなかったらしい。

どこか堅い面持ちで、目の前に準備された新たなシンフォギア『神獣鏡』を見つめていた。

 

「未来ちゃん、お待たせ」

「は、はい」

 

やがて、スタッフ達が位置につき始める。

準備が終わったらしい。

音が大人しくなった中へ、了子とウェルがやってきた。

 

「今回は本当にありがとう、頼みを聞いてくれて助かるわ」

「そんなこと、ないです。わたしも、何か出来ることは無いかなって思っていたから」

「素敵なお気遣いありがとうございます、僕達も尽力しますので」

「はい、よろしくお願いします」

 

一礼した未来は、促されてベッドへ。

そんな彼女の視界に、了子はあるものを持ち出す。

まるで拳銃のような形をした、投薬器だった。

 

「それが・・・・?」

「ええ、今回あなたに使用するLiNKERよ」

 

度々話に聞いていた、適合係数を上げるための薬。

かつて奏の命を奪う要因の一つにもなったそれを、未来は固唾を呑んで見つめた。

 

「と言っても、これは私が作ったモノではなくて」

「この僕が調合・製作したものですッ!」

 

了子の説明を引き継ぐように、ウェルが未来の視界へさっと入り込んできた。

 

「・・・・そもそもの話、フォニックゲインと聞くと(ここ)をイメージしがちだけど」

 

ため息をつきながら、了子は自らの胸元を指す。

その指を、未来が目で追っているのを確認しながら、ゆっくり上に滑らせて。

 

「実際は、ここ。脳の中で作り出されるものなのよ」

 

頭を指でつついて、未来が頷いたのを確認して続ける。

 

「正確には脳の『ある分野』を刺激して、フォニックゲインを高める。それがLiNKERの仕組みで、効力なの」

 

だけど、と。

了子は頭にやっていた指を立てて。

 

「調合に使う薬品はどれも副作用が強いものばかり。少しでも匙加減を間違えれば、投薬しただけで人を殺せる劇物に変わる」

「なので、その『ある分野』に効果範囲を絞ることが極めて難しく、その結果要らぬ部分まで活性化させてしまっていたのです」

 

投薬をするたび、重ねるたびに。

脳全体がオーバーヒートのような状態になってしまう。

それが副作用の正体であり、LiNKERの弱点であると。

了子とウェルは説明した。

・・・・彼らの専売特許であるからか、その『ある分野』については終始ぼかされてしまったが。

 

「しかぁーし!それも今日までのことッ!!」

 

二人掛かりの解説により、概要を飲み込んだ未来。

理解した旨を伝えるためにまたこっくり頷くと、突然ウェルが両手を広げた。

 

「天才たるボクが、研究に研究を重ねた結果ッ!!従来のLiNKERよりもはるかに軽い負担となる比率を見つけたのですッ!!!」

「・・・・・大丈夫よ、効力は保障するから」

 

豹変したウェルにぎょっとなった未来は、これから投薬されることもあってか。

何ともいえない不安を覚えた。

助けを求めるように了子を見やれば、盛大なため息があったものの、お墨付きを下してくれる。

 

「それから、これは理論を抜きにしたアドバイスなのだけれど」

 

最後に、気を取り直した了子が付け加える。

 

「未来ちゃんが守りたい人の顔を思い浮かべると、上手くいくかもよ?」

「守りたい、人・・・・」

 

未来は促されてベッドに横たわる。

暴れて怪我しないようにベルトで固定された彼女の脳裏は、先ほどのアドバイスに関する思考が巡っていた。

守りたい人、大切な人。

 

(そんなの、一人しかいない)

 

話を持ち出された時、未来が真っ先に思い浮かんだのは。

気の抜ける笑顔の裏に、悲痛な慟哭を隠した『あの子』。

傷つき続けるあの子を、泣き続けるあの子を。

守れやしないかと、力になれないのかと。

悩み続けていたこれまでが、走馬灯のように駆け抜ける。

 

「――――それでは、実験を開始します」

「――――お願いします」

 

首筋に、小さな痛み。

注射針が離れた後も、束の間は何も起こらなかったが。

 

「・・・・ッ」

 

やがて胸と頭、両方に熱が灯る。

風邪を引いた時のような体を蝕む熱さは、じっくりゆっくり未来を侵し始めた。

 

「ぁ、ぐ・・・・!」

 

耐えられたのは最初だけ。

熱はあっというまに全身へ行き渡り、あちこちで暴れ始める。

 

「あああぁ・・・・!」

 

痛い、怖い、熱い。

喉は枯れ、眼球が沸騰しそうなほどに熱い。

食いしばった口からは、濁りくぐもった声しか出ず。

ただただ苦しみに悶えるしかない。

苦しい、苦しい、苦しい。

今すぐにでもやめてしまいたい。

 

(だけ、ど・・・・!)

 

だけど。

響のほうが、もっと痛い。

もっと怖い、もっと辛い。

もっともっと、苦しい。

だから、だから。

 

(響の、力に・・・・!)

 

泣いているあの子へ、手を差し出せる強さを。

どうか・・・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――Rei shen shou jing rei zizzl(愛してる、光も闇も何もかも)

 

 

 

 

 

 

 

一瞬ブラックアウトする意識。

眠りに落ちる寸前のような感覚から、意識が一気に急上昇する。

急速な変化に眩暈を覚えながら、額を押さえようとした未来は。

ふと、その手に変化が起こっていることに気付いた。

手全体を包むスーツ、着物のようなアームカバー。

さらに視線を下げれば、足全体を物々しい紫の装甲が覆っていて。

顔を上げる、大きな窓ガラス。

了子達が記録を取っているであろう場所は照明が落とされ、ちょうどマジックミラーのようになっている。

その『鏡面』に映し出されたのは、紫を基調としたシンフォギアを纏った少女。

他でもない、未来自身。

 

(―――――ああ)

 

自然と、笑顔が浮かぶ。

安堵と希望に満ち溢れ、どこか疲れきっている笑顔。

少し情けない姿だけれど。

あの子と、立花響と。

支えあえることを、ただただ喜んで。




サーセン。
393聖詠のタイトルは、完全に提造っす。
拙作の393ならこんな感じかなっと。
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