チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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ドキッ、硝煙煙る初出動!

『――――いいか!?再確認だッ!!』

 

二課が保有するヘリの中。

未来はクリスと共に現場へ向かっていた。

翼は絶唱のダメージがまだ残っているため、今回は待機を言い渡されている。

 

『未来君は初陣、クリス君は未だ手負いの域を出ない。よって二人には、響君達が到着するまでの時間稼ぎと人命救助を行ってもらう!』

「わかった!」

「は、はいッ!」

 

前回の反省を踏まえ、やや離れた場所に降り立った二人。

ビルからビルへ、家から家へ。

未来は少し遅れながら、クリスの後ろをついていっていた。

 

「ひとまず今回は、おっさんの言うとおりに動くぞ!あのバカに出来るとこ見せたいってんなら、まずは怪我しねぇことだな!」

「う、うん!」

 

そんな未来へ激励を飛ばしながら、クリスは速度を上げた。

一際大きく飛び立てば、現場が見えた。

リブラのときほどではないものの、あちこちで黒い煙が上がっている。

 

「・・・・ッ」

 

一瞬鼻を掠めた、生き物の焼ける臭い。

未来は思わず一歩下がる。

 

「怯んでる場合じゃねぇ、いくぞッ!」

「ッ分かった!」

 

だがクリスの激でなんとか持ち直し、共に現場へ降り立つ。

崩れたブロック塀に倒れた電柱など、真新しい破壊跡がそこかしこに見受けられた。

案の定ノイズもいるらしく、事切れた黒い人型もあった。

 

「あッ・・・・!」

 

苦い顔をしながら駆け抜けていれば、今まさにノイズに追われている民間人が。

先に見つけた未来はすぐに方向転換。

神獣鏡のホバリングで瓦礫をものともせず駆けつけると、手元の鉄扇を開いてノイズを受け止める。

押し返そうとすると、もう一体が突撃してくる。

 

「わ、っぐ・・・・!」

「そのままだッ!」

 

不意に加わった重みに、未来は一瞬退きそうになったが。

クリスが即座に打ち抜いたことで解放された。

前を見据える、片手で足りる数の敵。

一番前の個体は、近づいて鉄扇で殴る。

飛び掛ってきたおたまじゃくし型は、鉄扇に仕込まれた銃で一撃。

その炭に紛れて後ろに回り、もう一体も狙撃する。

と、背後で風を切る音。

振り向けば、複数体が飛び掛ってきている。

しかし、届く前に全て撃ち抜かれた。

未来が別方向へもう一度振り向けば、銃口を向けたクリスが一息ついているところだった。

同じくほっと安堵の息をついた未来は、庇った民間人へ駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?」

「は、はい、ありがとうございます」

 

さっと確認してみても、擦り傷以外の目立った怪我は見受けられない。

 

「失礼します!」

「大丈夫ですか!?」

 

そこへ、自衛隊員が駆けつけた。

前回のように、ノイズに道を遮断されていないからだろう。

命を賭して、人命救助に励んでいるようだった。

 

「後はおまかせください!」

「こちらへ、一緒にいきましょう」

 

速やかに怪我人を背負った彼らは、直ちにその場から撤退していった。

 

「ま、及第点だな」

「わっ、あ、うん・・・・ありがとう」

「ぅっせ、次行くぞ」

「うん」

 

その様子を感心してみていた未来の背中を叩き、クリスはさきほどの戦闘について、簡単な評価を下す。

未来が素直に礼を告げれば、どこか照れくさそうに悪態をついて誤魔化したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――なんで、ころすの?」

 

亡骸の横に座り込んで、呆然と問いかければ。

母の返り血を浴びたそいつは、ゆっくり振り返った。

 

「・・・・おめーのかーちゃん、おめーを守ってたろ?」

「う、うん」

 

意外にも応じてくれたのに驚いて、少し躊躇いがちに頷く。

 

「かーちゃんとしちゃ、すっげえいいことだし、正しいことだろ?ここまでは分かるか?」

「うん・・・・」

 

見下ろす。

胸を一突きされた母は、ぴくりとも動かない。

 

「俺のかーちゃんも昔そうだった。けど、どういうわけかそれを『よくねーことだ』っていちゃもんつけた連中がいてよ」

「・・・・お母さんも?」

「ああ、残念ながらな」

 

その時を思い出しているのか、そいつはとても苦い顔をしていた。

 

「で、なまじっか真面目だったもんで、いつしか『自分が間違っているんだ』って、責任感じちまってさ。ある日首を吊って自殺したんだ」

 

頼れる母が、大好きな母が死んでしまって、悲しい。

悲しいけれども。

自殺に追い込んでしまうような、酷いことをしたのなら。

仕方が無いかもしれないと、納得できてしまう自分がいた。

 

「・・・・ぼくもころす?」

「んにゃ、俺はリブラ・・・・前に暴れた奴とは違うんでね」

 

思い切って聞いてみると、意外な答え。

思わずぽかんと口を開けてしまう。

 

「・・・・逃げていいの?」

「逃げられるもんならな」

 

・・・・どうやらこの場で仕留められることは無いらしかった。

それならばと、まずは離れることにする。

母はいなくなったが、まだ父がどこかで生きているはずだ。

 

(ごめんね、後でお墓作ってあげるから)

 

一度母を振り返り、心でそう告げてから。

逃げ出そうとして、

 

「――――まあ」

 

横から、何かが飛んでくる。

体を貫いた、それは、

 

「――――ノイズが見逃すかどうかは、分からんけどな」




393が割と戦えている件についてはアレです。
ポ〇モンにおける、『レベルの高い奴と一緒にいると~』ってアレと似たニュアンス的な・・・・その・・・・な!?(

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