『――――いいか!?再確認だッ!!』
二課が保有するヘリの中。
未来はクリスと共に現場へ向かっていた。
翼は絶唱のダメージがまだ残っているため、今回は待機を言い渡されている。
『未来君は初陣、クリス君は未だ手負いの域を出ない。よって二人には、響君達が到着するまでの時間稼ぎと人命救助を行ってもらう!』
「わかった!」
「は、はいッ!」
前回の反省を踏まえ、やや離れた場所に降り立った二人。
ビルからビルへ、家から家へ。
未来は少し遅れながら、クリスの後ろをついていっていた。
「ひとまず今回は、おっさんの言うとおりに動くぞ!あのバカに出来るとこ見せたいってんなら、まずは怪我しねぇことだな!」
「う、うん!」
そんな未来へ激励を飛ばしながら、クリスは速度を上げた。
一際大きく飛び立てば、現場が見えた。
リブラのときほどではないものの、あちこちで黒い煙が上がっている。
「・・・・ッ」
一瞬鼻を掠めた、生き物の焼ける臭い。
未来は思わず一歩下がる。
「怯んでる場合じゃねぇ、いくぞッ!」
「ッ分かった!」
だがクリスの激でなんとか持ち直し、共に現場へ降り立つ。
崩れたブロック塀に倒れた電柱など、真新しい破壊跡がそこかしこに見受けられた。
案の定ノイズもいるらしく、事切れた黒い人型もあった。
「あッ・・・・!」
苦い顔をしながら駆け抜けていれば、今まさにノイズに追われている民間人が。
先に見つけた未来はすぐに方向転換。
神獣鏡のホバリングで瓦礫をものともせず駆けつけると、手元の鉄扇を開いてノイズを受け止める。
押し返そうとすると、もう一体が突撃してくる。
「わ、っぐ・・・・!」
「そのままだッ!」
不意に加わった重みに、未来は一瞬退きそうになったが。
クリスが即座に打ち抜いたことで解放された。
前を見据える、片手で足りる数の敵。
一番前の個体は、近づいて鉄扇で殴る。
飛び掛ってきたおたまじゃくし型は、鉄扇に仕込まれた銃で一撃。
その炭に紛れて後ろに回り、もう一体も狙撃する。
と、背後で風を切る音。
振り向けば、複数体が飛び掛ってきている。
しかし、届く前に全て撃ち抜かれた。
未来が別方向へもう一度振り向けば、銃口を向けたクリスが一息ついているところだった。
同じくほっと安堵の息をついた未来は、庇った民間人へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、ありがとうございます」
さっと確認してみても、擦り傷以外の目立った怪我は見受けられない。
「失礼します!」
「大丈夫ですか!?」
そこへ、自衛隊員が駆けつけた。
前回のように、ノイズに道を遮断されていないからだろう。
命を賭して、人命救助に励んでいるようだった。
「後はおまかせください!」
「こちらへ、一緒にいきましょう」
速やかに怪我人を背負った彼らは、直ちにその場から撤退していった。
「ま、及第点だな」
「わっ、あ、うん・・・・ありがとう」
「ぅっせ、次行くぞ」
「うん」
その様子を感心してみていた未来の背中を叩き、クリスはさきほどの戦闘について、簡単な評価を下す。
未来が素直に礼を告げれば、どこか照れくさそうに悪態をついて誤魔化したのだった。
◆ ◆ ◆
「――――なんで、ころすの?」
亡骸の横に座り込んで、呆然と問いかければ。
母の返り血を浴びたそいつは、ゆっくり振り返った。
「・・・・おめーのかーちゃん、おめーを守ってたろ?」
「う、うん」
意外にも応じてくれたのに驚いて、少し躊躇いがちに頷く。
「かーちゃんとしちゃ、すっげえいいことだし、正しいことだろ?ここまでは分かるか?」
「うん・・・・」
見下ろす。
胸を一突きされた母は、ぴくりとも動かない。
「俺のかーちゃんも昔そうだった。けど、どういうわけかそれを『よくねーことだ』っていちゃもんつけた連中がいてよ」
「・・・・お母さんも?」
「ああ、残念ながらな」
その時を思い出しているのか、そいつはとても苦い顔をしていた。
「で、なまじっか真面目だったもんで、いつしか『自分が間違っているんだ』って、責任感じちまってさ。ある日首を吊って自殺したんだ」
頼れる母が、大好きな母が死んでしまって、悲しい。
悲しいけれども。
自殺に追い込んでしまうような、酷いことをしたのなら。
仕方が無いかもしれないと、納得できてしまう自分がいた。
「・・・・ぼくもころす?」
「んにゃ、俺はリブラ・・・・前に暴れた奴とは違うんでね」
思い切って聞いてみると、意外な答え。
思わずぽかんと口を開けてしまう。
「・・・・逃げていいの?」
「逃げられるもんならな」
・・・・どうやらこの場で仕留められることは無いらしかった。
それならばと、まずは離れることにする。
母はいなくなったが、まだ父がどこかで生きているはずだ。
(ごめんね、後でお墓作ってあげるから)
一度母を振り返り、心でそう告げてから。
逃げ出そうとして、
「――――まあ」
横から、何かが飛んでくる。
体を貫いた、それは、
「――――ノイズが見逃すかどうかは、分からんけどな」
393が割と戦えている件についてはアレです。
ポ〇モンにおける、『レベルの高い奴と一緒にいると~』ってアレと似たニュアンス的な・・・・その・・・・な!?(