チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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だから頭の中のぞいてるでしょ・・・・!?(ツイッター覗きながら)
あれからちょくちょくツイッターも覗いてます。
いやはや、色んなチョイワルビッキー見れて幸せです(笑

毎度の閲覧や評価、お気に入り登録も本当にありがとうございます。
とてもよく効く励みです。

―追記-
出勤前の寝ぼけた頭で書いたせいか、ツイッターについてのコメントが少しおかしくなっていました。
普通に右腕装備と書けばいいのに、なにやってんですかね、この物書きは(
今後このようなことがないように努めて参ります。
申し訳ございませんでした。


消失へのカウントダウン

「ちはーっす」

「・・・・あら、いらっしゃい」

 

アヴェンジャーの騒動が終息してから、数日。

負傷で寝込んだマリアが、目を覚ましたところへ。

人懐こい笑みを浮かべて、響は病室へ入ってきた。

まだ寝ぼけ眼のマリアは、薄く微笑みを湛えて迎え入れる。

 

「りんご持って来ましたけど、食べれそうです?」

「ありがとう、けどごめんなさい、今はちょっと・・・・でも、切歌達が食べるかも、そこに置いてくれる?」

「はーい」

 

ビニール袋をがさがさまさぐって、スーパーで買ってきたらしいりんごを取り出す。

マリアがりんご好きだと聞きかじって持ってきたものだったが、今回はあまり意味が無かったようだった。

 

「聞きましたよ?めずらしく怒ったって」

「ふふ・・・・ええ、そうね」

 

『どかーん!がおー!』と両手を挙げておどける響を、マリアは愛想笑い。

しかし長くは持たず、やがて暗い顔になる。

響もまた、口を閉じたマリアへ何か問うわけでもなく。

ただ薄く笑ったまま、見つめるだけだった。

 

「・・・・ごめんなさい」

 

束の間静寂が流れて、マリアはぽつりとこぼす。

 

「調と切歌のことでも苦労をかけているのに、私は・・・・」

「ああ、別にいいですよそんなこと」

「けど・・・・!」

 

重々しく告げられた謝罪をあっけらかんと許す響へ、マリアはなお食って掛かったが。

響は首を横に振って制した。

 

「何か勘違いしてるっぽいんで、言っておきますけど」

 

それから背筋を正して、真っ向からマリアを見つめる。

 

「マリアさんは、強い人ですよ」

 

何事かと身構えるマリアへ、はっきり言い切った。

 

「そうやってどうしようもない感情を抱えてるのに、調ちゃんや切歌ちゃんみたいな、家族の為に耐えているじゃないですか」

 

お世辞でも取り繕いでもない。

本気で感じて、その上で受け入れている声。

 

「そんな人を悪く言えません、言いたくありません。他人にだって、言わせたくないです」

 

言い切られてしまったマリアは、病み上がりであることもあったのだろう。

何か悟ったような顔で目を伏せて、また黙り込んだ。

また沈黙が流れる。

窓の外、自衛隊や被災者の声のさざめきが聞こえ始めた頃。

 

「・・・・それで」

 

ふと、マリアはまた口を開いた。

 

「用事はそれだけ?お見舞いと言うなら、あの子の方にはいかなくていいの?」

「未来のほうにはこれから行きますよ、ただその前に」

 

響は参ったなという笑みから一転。

今まで以上に、真剣な顔つきになって。

 

「マリアさんに、お願いがありまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さーてさてさて。

リブラ、アヴェンジャーと続いた『執行者団(パニッシャーズ)』の襲撃でてんてこまいして、うっかり忘れそうになっていたんだけど。

わたし達、月の落下も止めなきゃいけないんだよ(白目)

実際、今回の騒動も含めて近隣の国々にはダダ漏れらしく。

ロシアをはじめとした先進国の後ろから、『はよ、月の軌道修正はよ』と、なんとなーくじーわじーわと催促が来ているとか。

自分らで言ってくるならともかく、虎の威を借る狐みたいに大国の後ろからっていうのはちょっとずるいと思わない?

とはいえ、年末に迫る世界滅亡をほっとけないのもまた事実。

というわけで、誰もがなんとなーく『次の襲撃がありませんよーに』とお祈りしながらの、ネフィリム起動実験ですよ。

関東地方の、某山奥。

万一事故が起きても被害を留められるよう、人気?何それおいしいの?何て田舎を選んだ。

ギアペンダントをいじりながら、慌しく動き回るスタッフさん達を眺めてみる。

ふと技術者陣に目をやると、未だ包帯をこさえたマリアさんの姿も見えた。

・・・・・あのお願いを実行してくれるのか、それとも心配してくれてるのか。

どっちにせよ、心強いことに変わりはないんだけど。

 

「立花?何故櫻井女史達を見てにやついている?何かあるのか?」

「いーえ、なーんにも」

 

めでたく復帰した翼さんに返しながら、勢いつけて立ち上がる。

改めて見てみると、粗方の準備は終えているらしい。

頃合かと思ったので、所定の位置についておく。

ほどなくして、続々集まる装者達。

特筆することは、その中に未来もいること、病み上がりのマリアさんは今回お休みなことだろうか。

 

「では、これよりネフィリム起動実験を行う」

「当然ながら危険も伴います、命を落とす危険も十分に存在するので、どうか、決して、油断をしないように」

 

弦十郎さんに続いて、重々しく語るナスターシャ教授。

・・・・・F.I.S.での実験については、ざっくりだけど聞いている。

()()()のその時、亡くなった人がいることも。

調ちゃんや切歌ちゃんも思い出したのか、どこか険しい表情になって。

現場を、重い空気が支配した。

 

「脅すようでなんですが、今回起こそうとしている聖遺物はそれほど危険な代物でもあります。十分やってくれることは、こちらも重々承知していますが、改めてお願いしますね」

「はい」

 

眼鏡を直すウェル博士に、翼さんが代表して返事。

全員でギアを纏って並ぶ。

目の前には、何重ものセーフティを掛けられた、休眠状態のネフィリム。

 

『――――それじゃあ、始めてちょうだい』

 

了子さんの声を合図に、わたしは両脇のクリスちゃんと翼さんに手を伸ばす。

差し出された手を、二人が握り返してくれた。

そしてそこから更に隣の人へ手を繋ぐのが見える。

――――前提として。

完全聖遺物を励起させるためには、大量のフォニックゲインが要る。

ものによって必要量は違うみたいだけど、個人でやるにはまず無理だ。

だから二年前の二課は、ライブ会場と言う大きな場所に人を集めたわけで。

だけど今回は、ひたすら危険なことに定評のあるネフィリム。

一般人を至近距離に近づかせるわけには行かない。

じゃあ、どうするか?

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

個人でやるのが難しいなら、みんなで。

 

「Emustolonzen fine el baral zizzl」

 

シンフォギアを扱える装者全員で、

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

歌い上げた絶唱を、

 

「Emustolonzen fine el zizzl...」

 

束ねて、ぶつければいい。

 

「――――が」

 

膨れ上がる『歌』、溢れかえる『熱』。

感じる。

繋いだ手を伝って、わたしへ五人の歌が流れてくる。

 

「耐えろ、立花!」

「まだ正気かぁ!?しっかりしろ!!」

「響!わたしもいる!頑張って!」

 

仲間達の声に押されながら、暴れる流れを何とか制する。

――――奇しくも発現した、『立花響(げんさく)』と同じ力。

傷つけるのが怖いくせに、ひとりぼっちを嫌がる。

浅ましい力。

 

「グ、ウウウウゥゥゥゥッ・・・・!」

 

役に立てるというのなら・・・・!

 

「ッおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

手を離す。

腕を重ねて、装甲を一つにする。

狙いは一点。

ネフィリムただ一つ。

間合いは三歩、駆け出す。

飛び出し、踏み込み、近づいて。

束ねた歌を、明日への音色を。

力の限り、叩き込むッッ!

 

「だあああああああああああああああああああッ!!」

 

感じる、固い手ごたえ。

設置された注入部から、フォニックゲインが流れ込むのが分かる。

一歩飛びのいて後退。

みんなとの中間地点に立ち、様子を見る。

荒れ狂う嵐は、七色に煌いていて。

だけどやがて、食われるように吸い込まれていく。

風が強い、油断すると塵が目に入りそう。

腕で顔を庇いながら、最後の一筋が飲み込まれていくのを確認して。

 

「・・・・」

 

沈黙。

警戒は解かない。

それは後ろのみんなも同じこと。

未来がちょっと揺れてるかな?初心者らしい可愛らしさだ。

感じる気配に、少し微笑ましさを覚えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――ダメ、セーフティが持たない!!』

『響ちゃんッッ!離れてッッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間。

瓦礫が顔面に飛んでくる。


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