チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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後半、わかる人にはあのBGMが流れると思います(


閑話:小ネタ4

『ただいま』

 

「――――マリアさんと響ちゃん、帰投!!」

「医療班急いで!!」

 

決着直後の二課本部。

慌しく走るスタッフと共に、装者達も駆けつけてみれば。

それぞれ担架に乗せられた、ボロボロの二人が。

 

「あああああああああああ!マリア!マリア!マリアアアアアアアアアアアア!!」

「ややややややややけっ、やけっ!!やけええええええええええ!」

「ふ、二人とも、ちょっと静かに・・・・結構クる、響く・・・・!」

「月読、暁も落ち着け!」

「追撃ぶち込んでんぞ、やめてやれ!」

 

調と切歌は完全に取り乱し、特に調は滅多に出さない大声を上げて。

びゃんびゃん泣きながらすがり付こうとして、翼とクリスに制止される。

一方のマリアも、予想以上の大声に想わぬ追撃を喰らっていた。

 

「ひびき」

「――――――みく?」

 

その隣で、未来は響に駆け寄る。

心ここにあらずといった様子で、ぼんやり右手を見つめていた響は。

二呼吸ほど間を置いて、未来に気がついた。

目は焦点が合っておらず、前を見ているようで見ていない。

一見抜け殻のように見える姿に、胸が絞まる感覚を覚えた未来。

行動は、速かった。

両手を広げて、抱き寄せる。

半年振りに感じる温もりは、やけに懐かしく思えた。

怪我に配慮しながら、なお抱きしめ続けて。

 

「・・・・・ひびき」

 

そっと、耳元に。

響の意識を取り戻す言葉を、告げる。

 

「ひびき、おかえりなさい」

 

たったそれだけの、短い言葉。

だが、それだけで十分過ぎるくらいで。

 

「・・・・・うん、ただいま」

 

弱々しくも、確かに抱き返された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『恨みの行方』

 

「そういえば二人とも、わたしへの復讐はいいのかな?」

 

二課本部、装者の謹慎室。

何の気なしに響が口にした問いに、全員の視線が集中する。

常日頃から自分をないがしろにしがちな彼女を、イヤでも知っているがための反応だった。

翼とクリスは呆れ半分、心配半分の目を向け、未来は大丈夫だろうかとオロオロしている。

マリアは静観を決め込んでいるようだったが、何かあれば動くであろうことは容易に想像できた。

そんな妙に緊張した中、調と切歌は困ったように互いを見てから。

 

「・・・・正直もう、殺そうっていうのは、ちょっと」

「あ、そうなの?」

 

まずは、そんな結論を簡潔に述べる。

 

「毎日罰受けてるみたいな生き方されてたら、流石に考えるデスよ」

「うん」

 

次に切歌が根拠を告げれば、張り詰めた空気は霧散していった。

見守っていた各々は、ほっと息をつく。

 

「いやぁ、照れますなぁ」

「ちっとも褒めてないデス・・・・」

 

響は相変わらず茶化すような口調だったが、決して二人の決断を蔑ろにしているわけではないようだった。

だから切歌も、それ以上の悪態はつかないことにする。

 

「あ、でも挑戦はさせてもらう」

「首をよく洗っておくデス!」

「わーい、楽しみにしてるね」

 

とはいえ、リベンジには燃えているらしい。

自信満々に指を突きつける二人に、響は気の抜けた笑みで答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これからの話』

 

「へぇ、それじゃあ来年から、二人ともリディアンなんだ」

「はい」

「よろしくデス」

 

相も変わらず、装者の謹慎室。

調と切歌の今後を聞いた未来が、感心した声を上げていた。

 

「なら春からは後輩か、センパイとして厳しく指導してやるからな」

「よろしくね」

 

クリスは凄みをかけて身を乗り出し、未来は大らかに微笑んで。

それぞれの反応を見せた。

 

「そういえば、あなた学校は?」

「わたしも来年から通信制の高校に。最終学歴中学中退っていうのは、さすがにまずいんで」

 

その一方で、妹達を微笑ましく見ていたマリアが、思い立って響に問いかければ。

響は苦笑いまじりで答える。

返ってきた返事に、マリアは納得した様子で頷いていた。

 

「ちょっと、楽しみ」

「上手く慣れるといいね」

 

柄にもなくわくわくした様子の調に、未来が話しかけていると。

途端に、響の顔がいたずらを思い出したそれに変わった。

低い姿勢と軽やかな足取りで、装者年少組に近寄って。

 

「『なれ』と言えばねー?」

「えっ?」

「デス?」

 

にゅっと、指を立てながら話しかける。

 

「架空の動物、『ナレ』から来ているんだよ?」

 

突然のことに、未来もクリスも反応が遅れた。

 

「そうなんデスか?」

「そうそう、誰にでも人懐っこくてね。『友達だよね』『壁無いよね』ってフレンドリーに接するんだって」

 

突っ込みが無いのをいいことに、響の弁は続いて。

 

「そこから、『なれる』とか『なれなれしい』って言葉が生まれたんだよー」

「ちょっと、響?」

 

明らかに吹かれた法螺を、未来がたしなめようとしたが。

 

「知らなかった」

「教えてくれてありがとデス!」

 

あろうことか、調と切歌はすっかり信じ込んでしまったらしい。

いつになく目をキラキラさせて、お礼まで言ってしまった。

あんまり純粋な様に、一同唖然となったが。

そんな中真っ先に動いたのはクリスだった。

 

「んの、バカッ!!デタラメ吹き込むな!!信じてんじゃねーか!!」

「あだ、あだだだだだ!!クリスちゃん痛いよ、痛いって!!」

「知るかバカッ!!」

 

直ちに響に飛び掛ると、アームロックを決めて説教を始める。

未来は必要なお仕置きだと判断したのか、特に助けることはせず。

我関せずと、調と切歌の誤解を解きにかかっていた。

 

「分かっていたわよ、ええ、分かっていましたとも・・・・!」

「かわいいな、マリア」

「くっ・・・・!」




タイムリーなんで入れたかったんです・・・・。
テッテレテッテレテテテテテ

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