チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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先日投稿しました短編へのご反応、ありがとうございました。


邂逅

異変は、ロンドンでも起こっていた。

 

「お前は、一体・・・・!?」

 

ライブ会場、バックヤード。

マリアが睨む先、緑を基調とした衣装の女が。

フラメンコのステップを踏んで立つ。

その足元には、彼女の攻撃や『接吻』で事切れた護衛達。

 

「何者だッ!?」

 

現在別行動している翼の安否を気にしつつ、マリアが声を荒げると。

女は妖艶に笑みを浮かべた。

 

「――――オートスコアラー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっどど、どどうど、どどうど、どどぉーっ!!

邪魔な壁はぶっ飛ばせー!あっつい炎も吹き飛ばせー!

ってなわけで、せっせと救助活動ですよ。

燃え盛るマンションの中、本部のナビに従いつつ、遠慮なく壁をぶち抜きながら前進する。

・・・・バックドラフト?

それ起こる状況なら、そもそも酸素がないべよ?

というわけでまた壁をぶち破ると、マンションの住民達を見つけた。

 

「避難経路はこっちです!」

 

なんて声をかければ、みんな目に見えて安心した顔。

またナビに従いながら、壁を壊しつつ移動。

途中で消防隊員さんに引き継いでから、屋内にとんぼ返り。

 

『響ちゃん、生体反応ラストワン!』

『今ので随分救助出来たわ、あと少し!』

 

友里さんと了子さんの声を聞きながら、熱気の中を駆け抜ける。

また当然のように壁を抜けば、階段の踊り場でぐったりしている子どもを発見。

駆け寄る。

気を失っているだけで、まだ脈はある。

抱えた直後に天井が崩れてきたけど、難なく蹴り上げて。

勢いに乗って、外へ。

夏とは言え、熱気の中から飛び出せば、夜の空気が冷たくて気持ちいい。

 

『残りは消防が救助、および消火しているわ』

『それで最後よ、お疲れ様』

「はい!」

 

ギアを解除して、救急隊が集まっている場所へ。

 

「うちの子はどこですか・・・・?うちの子はまだ見つからないんですか・・・・!?」

 

手の空いている人を探そうとした矢先、泣きそうな声で詰め寄る女の人を発見。

 

「この子をお願いします!煙をたくさん吸い込んでいて、意識がありません!」

「っこうちゃん!!」

「ご協力、感謝します」

 

話しかけてみれば、ビンゴだった。

お母さんに子どもを渡して、救急車に乗せられていくのを見送る。

周囲を見渡してみたけど、手は足りているようだった。

 

「・・・・ん?」

 

クリスちゃんの方はどうなったかしらなんて考えながら、ふと見上げる。

傍の階段を上がりきったところ、その更に上の渡り廊下。

未だ燻る炎を、食い入るように見つめる後ろ姿が見えた。

・・・・階段を上って、近寄ってみれば。

明るく照らされた顔が見えて。

・・・・・ああ、これは確かに。

無視できないなぁ。

自分の顔に、乾いた笑みが浮かんだのが分かった。

だから、声をかける。

 

「そんなとこにいたら危ないよー?」

「・・・・ッ!?」

 

案の定驚いてこっちを見下ろす女の子。

ほっぺたは濡れたままだ。

 

「ご家族の誰かとはぐれちゃった?今そっち行くから、あんまり動かないように・・・・」

「――――黙れ」

 

濡れた頬をおざなりに拭ったと思ったら、問答無用で烈風が襲い掛かってきた。

難なく避けられたけど、さっきまでいたところが思いっきり抉れていてびっくり。

いや、冗談抜きでやべぇよ・・・・。

 

『敵だッ!敵の襲撃だッ!そっちはどうなっているッ!?』

「こっちにもいるよー、綺麗なおべべのかわいこちゃんだ」

 

未だこっちを睨みつける女の子を見上げつつ、クリスちゃんの通信に答える。

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術は、世界を壊し、万象黙示録を完成させる・・・・!」

 

展開していた緑の陣をさらに重ねていく女の子こと、キャロルちゃん。

素人目で見ても、威力が増大していくのが容易に想像できる。

・・・・・ところで名乗って大丈夫なの?君。

 

「これでお前を、奇跡を殺してやる!!」

 

言うなり、さっきよりも強烈な風が襲い掛かってきた。

ギア、間に合わない。

ちょっと危ないけど・・・・!

前方に飛び込む。

そのまま飛び跳ねれば、暴風が追い風に変わった。

 

「なっ・・・・!?」

 

渡り廊下に飛び乗れば、目の前に驚くキャロルちゃん。

にやっと笑いかけながら、ごろんと転がって背後へ。

そしてさっと脇に手を差し入れて持ち上げる。

 

「わーははは!とったどーッ!!」

「こ、このッ!!はなせ!降ろせぇッ!!」

「いーやだっひょーん!!あはははははッ!!」

 

気分は某獅子王のマントヒヒ。

意外とバタバタ暴れるキャロルちゃんだけど、むしろそれくらい。

やっぱり子どもなんだなー。

・・・・・このまま持ち帰ったら、『勝った!GX完ッ!』なんてならないかなと考えたけれど。

背後に湧いた冷気に気付いて、やっぱ無理かと苦笑いしてしまう。

 

「あらよっと!」

「うわぁッ!?」

「っち・・・・!」

 

キャロルちゃんをホールドしたまま飛び降りると、思ったとおり青い女の子(ガリィちゃん)が舌打ちしていた。

右手の手刀に、氷を纏わせている。

殺る気満々やんけ・・・・。

 

「っいい加減にしろきさまぁ!!」

 

と、ここで。

キャロルちゃんが我慢の限界を超えたようで。

今度は真っ赤な陣をこっちに向けて・・・・・って。

 

「わわわわッ!?」

 

こっちもこっちで殺意マシマシィーッ!!

慌てて降ろして飛びのくけど、結局発動した陣から炎が吐き出される。

幸いさっきよりも余裕はあったので、何とかギアをまとって腕を交差。

熱かったけど、どうにか防げたよ・・・・。

 

「・・・・・破壊し、滅ぼすお前の手が、どこまで抗えるのか」

 

炙られたなー、なんて呑気に思っていると。

ふいに口を開くキャロルちゃん。

青い女の子(ガリィちゃん)(もしかしなくてもオートスコアラー)を従えて、また睨んできている。

 

「見せてもらうぞ、ファフニール」

 

言い切ると、キャロルちゃんは赤い結晶を地面に叩きつけて。

そのまま転移で去ってしまった。

・・・・・久々に、『ファフニール』って呼ばれたな。

 

『響くん、無事かッ!?』

「どーにか五体満足です」

 

ここで弦十郎さんから通信。

まあ、耳元の通信機はオンのままだったし、音声は筒抜けだったろうね。

それよりも、

 

「クリスちゃんどうなりました?」

 

気になっていたことなので聞いてみると、少し言い渋る弦十郎さん。

 

『・・・・新たに出現した、未知のノイズにやられた。調くんと切歌くんが駆けつけたことで、何とか無事だが』

「・・・・そう、ですか」

 

返ってきた答えは、だいたい予想通りだった。

とうとう出やがったな、武士ノイズ。

 

『響くんが接触した少女と、無関係とは思えない。一度本部に戻ってくれ』

「了解です」

 

多分、翼さんの負けも聞かされるんだろうなと思いながら。

言うとおり、一度本部に戻ることにした。

 

 

でも、その前に。

 

 

「そこのおにーさん、ちょーっと同行してもらえますー?」

「ええ・・・・気付いてたの?」

「曲がりなりにもプロですから。あと、映像を売っても、結局もみ消されると思いますよー?」

「そんなぁ、マジかよ・・・・」




\ッマアアアアアアアアホディエンニャアアアアアアアンバラダイイイッッ!!/

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