鬱展開は筆が進むなぁ!←
ところで、某方言で『カエル』のことを『ビッキー』と呼びましてね?(
人里離れた山の奥。
意外と手入れが行き届いている館の客間に案内される。
「飲むといい、アールグレイだ」
「あ、どうも」
紅茶を勧められるけど、口にしない。
や、失礼なのは自覚している。
しているんだけど・・・・。
「くくっ、警戒されるのはしょうがないか」
「ぇっと・・・・あははは」
笑顔を取り繕うけど、どうしても引きつってしまう。
・・・・だって、だってさ!?
ラスボスに出会うなんて、思いもしませんやん!?
で!そんな二課に隠れてアレコレ画策してる人が勧めるものとか、絶対盛られてますやん!?
万が一!万が一に何も入ってなかったとしても!!
疑うのはしょーもないことやないですかー!ヤダー!
「まあ、いい。最初から従順であるのはいささかつまらんからな」
「さいですか・・・・」
それって調教のしがいがあるってことですか?
怖えーぜ・・・・。
そう考えると、こっちを見る目がまるで獲物を見つけた目に見えて・・・・。
あ、やばい。
感じないはずなのに、背筋が寒い。
ちょっとー、この人怖すぎんよー(泣
「招かれた理由は、分かっているか?」
「・・・・わたしが叩きのめした『飼い犬』ちゃんの代わりに、雇いたいってところですか?」
『ついでに実験動物』と内心でつけくわえる。
話した内容は合ってたみたいで、満足そうに口角があがった。
・・・・わぁお。
おっかないけど、綺麗だ。
不覚にも見とれてしまった。
「けど、それだけじゃ理由としては不足してますよ。わたしだって暇じゃないんです」
いけないいけないと、これまた内心で頭を振りながらジャブ。
昨日といい今日といい、いいところで邪魔が入るんだから・・・・。
もうこれ以上は勘弁願いたいんですけど。
「ああそうだな、お前を引き止めるには弱い理由だ」
・・・・言ってる割に、笑顔が崩れない。
なんだろう、いやな予感が・・・・。
「だが、この子が関わればどうだ?」
そう、一枚の写真が取り出される。
カップのソーサーの横、いい感じの位置に置かれたのは。
友達と笑いあっている、未来。
「・・・・わたしの渾名知ってるなら、どうなるか分かっていますよね?」
「ああ、知っているとも。お前の守る『宝』に手を出したものには、等しく滅びが待っている」
睨みつけても、何食わぬ顔で紅茶を一口。
「『ファフニール』だなんて、良く似合っている渾名じゃないか」
「だったら・・・・!」
「しかしだな」
徐に、フィーネは写真を取り上げる。
そして、
「お前が離れた後なら、どうとでも出来るんだぞ?」
これ見よがしに、二つに裂いた。
一気に破くんじゃない。
じっくり、ゆっくり。
獲物の首を締め上げるように。
もがき苦しむ様を愉しむ様に。
彼女の目論見どおり、ビリビリという音が耳にこびりついた。
「この子が身を寄せている二課には、私の手のものが潜り込んでいる。私の命令次第では、簡単に刈り取れる」
・・・・息が、上手くできない。
心臓の音がうるさい。
「このままお前が日本を出れば、あの子の危機に駆けつけることが出来なくなる。優秀なあの連中とて万能ではない、ましてや指揮官がアレでは、身内に敵がいるなどと考えにくいだろう」
「・・・・何が、言いたいんですか?」
――――変わった。
品のよさと威厳は保ったままで。
彼女の本性が牙を見せた。
「もしそうなったのなら・・・・可哀想に、切に望んだお前との再会が叶わなくなる。いや、それだけで済めばいいのだが」
「・・・・どういう、ことだ」
彼女が立ち上がる。
震える頬に手を添えられて、ぱっくり割れた口が耳元に近づいて。
「『来てくれなかった』と『裏切られた』と、お前を怨む可能性だってあるのだぞ?」
「――――ッ!!」
・・・・ああ、畜生。
そんな言い方しなくたっていいじゃないか。
彼女の声は、ただの声じゃない。
心の奥の奥に、直接響く。
わたしの『本音』の部分を、喰い付く前の味見のように。
かっぷり甘噛みしてくる。
・・・・いや、
「どうする?断ったとて構わないが・・・・その場合この子はどうなるだろうなぁ?」
甘噛みなんてものじゃない。
わたしは、もう。
彼女の傍に来た時点で。
「―――――いい子だ」
蛇の腹に、呑み込まれたんだ。
◆ ◆ ◆
初めて少女を知ったのは、去年の暮。
アメリカはサンフランシスコで、ガングニールのアウフヴァッヘン波形が観測されたときだった。
公になっている記録では、有り得るはずのない反応。
当然興味が沸いたので、『器』の中から一つ選んで向かわせた。
そして、完膚なきまでに叩きのめされて戻ってきたのだ。
よこした『器』は聖遺物適合薬『LiNKER』がなければギアを纏えなかったが。
逆に言えばそれ以外の目立った弱点がない、それなりに優秀な個体だったのだ。
それを虫の息になるほどぶちのめすなど、戦慄するとともに好奇心が刺激された。
諸々の事情から、映像記録などの贅沢は言えなかったが。
戻ってきた『器』の証言に寄れば、マイクユニットらしき赤い宝玉は持っていなかったということ。
・・・・自らが生み出した『シンフォギア』は、まず歌えなければ話にならない。
これが他の聖遺物だったのならまた違う可能性を考えなければならなかったが。
自分には一つだけ、心当たりがあった。
もう二年前になる『ツヴァイウィングのライブ』、そこから始まった迫害。
そして怨嗟の激流に飲み込まれ、行方知れずになった少女二人。
数千年もの永き時の中知識を蓄えた頭脳は、ある結論を導き出す。
『立花響』あるいは『小日向未来』のどちらかが、『聖遺物との融合』を果たしている。
融合自体なかったわけではない。
人類が始まって以来、現代まで語られる英傑や偉人の中には、該当者が何人もいるのだから。
だが自分がその存在を知ったときには、既に名を馳せていたり、逆に強固な守りに固められて。
手を出せず仕舞いだったのだ。
・・・・あれから半年がたった今、片割れである未来を検査する機会があった。
結果は、シロ。
消去法でいくなら響が『当たり』ということになる。
果たして、それは予想通りだった。
昨晩目の当たりにした左手の大怪我。
それが先ほど見たときには、既に完治寸前にまで再生していた。
たった数時間で、あれほどの回復力。
『融合症例』と見て、まず間違いないだろう。
「――――ふ、っく」
・・・・嗚呼、止まらない。
笑みを止められない。
「くくくくくくくくく・・・・!」
『あの御方』へ至る為の切り札とも言える存在が手に入った今。
湧き上がる愉快な気分を抑えられない。
「ふふふふはははははは・・・・・あはははははははははッ」
多少はしたなかろうが気にしない。
周りに人はいないのだから、これくらいは許して欲しいものだ。
「あははははははははははははははッ!!!!はははははははははははははははははははははッ!!!!!!」
笑い声を隠そうともしないまま、廊下を闊歩していく。
赤い絨毯が敷かれていることも合間って、彼女には『あの御方』へのヴァージンロードのように見えた。
(˘ω˘)oO(フィーネが珍しく爆笑してる)
(#˘ω˘)oO(うるせぇ)