チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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ここのところ、長く間が開いてしまって申し訳ありません。


割と大変な状況なのです

負傷した響は直ちに保護された。

破壊されたガングニールも技術班へ送られ、順次修復と改修が行われている。

 

「隣、いい?」

 

そんな中、一人廊下に蹲っていた未来。

『手術中』のランプが付いた医務室から、一向に離れようとしない彼女を見かねて、マリアが話しかける。

未来が僅かに頷いたのを見たマリアは、遠慮なく隣に腰を下ろした。

一度顔を上げた未来は、再び顔を膝に埋めてしまう。

対するマリアも特に何か話すでもなく、ただ気遣うように沈黙を保っていた。

が、やがて口火を切る。

 

「・・・・立花響がやられる直前に出てきた、あの子」

 

マリアがちらりと目をやれば、こちらを伺う未来と目が合う。

 

「単に、幼い頃の彼女というわけではなさそうね?」

 

恐らく、今日の戦いを見守っていた誰もが抱いた疑問。

いや、()()()()()()()()であろう存在。

マリアの問いに、未来は沈黙を保ったまま。

しかし、わずかに顔を上げた彼女は、ゆっくり唇を動かす。

 

「――――あの子は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『Project IGNITE』。

翼、クリス、響は戦闘不能。

調と切歌はまだ回復に至っておらず。

マリアにいたってはギアのコンバーターが破損し、そもそも纏えない状態。

そんな絶望的状況を打開するべく、エルフナインが立案した計画だ。

彼女が持ち込んだ聖遺物『魔剣・ダインスレイフ』の欠片をシンフォギアに組み込むことで、アルカノイズ、およびキャロルへの対抗戦力を手に入れる。

単純な強化作業に留まらないため、承認の為には様々な壁を突破しなければならなかったのだが。

そこは開発者である了子の許可と、翼の父親である『風鳴八紘』の後押しによりクリア。

以降、技術班とエルフナインによる改造・及び修復作業が行われることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一週間。

S.O.N.G.本部、技術班。

 

「――――ッ」

 

転寝から我に返ったエルフナインは、慌てて手元を見る。

握られていたはずの半田ごては無く、さらに慌てそうになると。

 

「十分くらい寝落ちてたわよ。半田ごては危ないから、置いといたわ」

「あ、ありがとうございます」

 

了子がコーヒーを差し入れながら、机の上を指差して教えてくれた。

エルフナインは頭を下げて、膝にかけてあったブランケットを畳む。

その後、どこかぼんやりと動きを止めてしまった。

 

「・・・・夢でも見てた?」

「な、なんで分かるんですか?」

「顔に出てた」

「あう・・・・」

 

内面を見せてしまったのが恥ずかしかったらしい。

赤くなったエルフナインを微笑ましげに見て、了子は自分のコーヒーを一口。

 

「話したくないなら、それでもいいけど」

「・・・・いえ、お話させてください」

 

束の間沈黙を保ったエルフナインは、ややためらいがちながらも。

記憶を、思い出を。

綴るように、語りだす。

 

「パパと・・・・あ、キャロルのなんですけど・・・・山に、薬草を取りに行ったときの、記憶を見たんです」

「キャロルの父親も、錬金術師だったのよね」

「はい、住んでいた村が流行り病で困っていたので、薬を作るため、アルニムという薬草を取りに」

 

聞き覚えのある名前に、了子は反応する。

 

「ヨーロッパの山間部に自生している、薬効の高い薬草だったわね。確か今は、その希少さから天然記念物になってるんじゃなかったかしら?」

「そうです、天然記念物は初めて聞きましたけど・・・・」

 

そこで一旦途切れる言葉。

了子は特に続きを促すこともなく、静かにコーヒーを味わう。

 

「・・・・ボクの中には、キャロルの、パパとの想い出があります、でも」

 

香ばしい中のフルーティな味わいに、我ながら上手く淹れられたと満足する脇で。

エルフナインはまた口を開いた。

 

「どうしてキャロルは、失敗作のボクに、記憶を託したんでしょう?」

「・・・・さて、さすがの私も、そこまでは知らないわ」

 

了子は、何気なく呟かれた疑問への解答を持ち合わせていなかった。

正確には、()()()()が正しいだろうが。

脳裏に過ぎるは、キャロルが使いこなす錬金術の数々と、そんな少女に付き従う自動人形(オートスコアラー)達。

 

(エネルギー源は、やはり・・・・)

 

すっかり思考の海に沈んだエルフナインを見守りながら、了子は目を細める。

確信めいた答えを、コーヒーの味と一緒に確かめながら。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――腕の調子はどうだ」

 

どことも知れぬ場所に建つ、キャロル一味の本陣『チフォージュ・シャトー』。

その広間、腕をぐりぐり動かすミカへ、キャロルが頬杖を突きつつ話しかける。

 

「これより上が無いくらいバッチシだゾ、これでまた解体に精を出せるゾ」

「なら良い」

 

ピョンピョンとびはね、感情豊かに喜びを表現するミカ。

全快を十分に感じ取ったキャロルは、淡白な反応を返した。

 

「しかし、破壊前の状態でミカを損傷させるなんて・・・・」

「マスターが地味に警戒するだけある」

 

往復するミカを目で追いながら、冷静に分析するはレイアとファラ。

レイアはクリスを、ファラは翼を戦闘不能にした個体だ。

戦闘能力は特化型のミカに比べて低いものの、それぞれが強力な技を持ち合わせている。

仮にギアを破壊されなかったとしても、装者達の苦戦は必至だったろう。

 

「確かに脅威ではある・・・・が、計画は順調だ」

「それにあのドラゴンモドキ、ちょぉーっと揺さぶっただけですーぐナヨナヨポキンですもんねぇ。案外楽な相手かも~?」

 

懸念は懸念として気に留めているようだったが、さして重要視している様子ではないキャロル。

同調するように、ガリィは思い出し笑いを下品に零した。

性根の腐った配下のリアクションを横目に、キャロルはここではないどこかを見つめ始める。

・・・・再び握られたそれから、火花が散り始める中。

見える景色を出来る限り、かつ迅速に観察して。

判断を下せるだけの情報を集めて。

 

「――――頃合か」

 

キャロルがローブを翻し立ち上がれば。

自動人形(オートスコアラー)は、待ってましたといわんばかりに微笑んだり、口を結んだり。

 

「次の一手を打つ、遠慮はいらん」

 

号令を出すように、右手を掲げて、

 

「――――盛大に暴れて来い」




響「( ˘ω˘ ) スヤァ…」

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