そして一つ何キロカロリーなのか?余ったドローパンの廃棄はどうなっているのか?
「あ、甘栗パン…」
「これで連続で外したッスね、兄貴」
「十代も外すなんてね」
もこっちはドローパンを一つ開ける。中身はゴーヤ。
苦味が心地良いが…
「ゴーヤって山の幸なのに海の幸みたいなイメージって無い?」
「沖縄のイメージが強いからだと思うけれど」
「ふむ…」
そうかもしれない、と思いつつペロリと平らげるもこっち。
ゆうちゃんもドローパンを一つ開ける。中身はシャケ
「…どうしてパンにシャケを入れるの?」
「オーナーが海馬社長だから」
「納得」
本人が聞いたら激怒しそうな会話をする二人。
幸いな事に、忠実なKCの社員はこの場には居ない。
「ドローパンって一体いくつ入荷されているんだろう?」
「さぁ?全部買い占めれば黄金の卵パンは手に入るかもしれないけれど、残りの処理が大変」
「卵パンだけ取って残りは」
「ゆうちゃん。」
その双眸に剣呑な光を湛えて、もこっちはゆうちゃんを睨む。
「そこから先を言ったら戦争よ」
「じょ、冗談だよ…」
「ごめんねぇ、実はこの中に黄金の卵パンは入っていないんだよ。黄金の卵パンだけ盗まれているみたいで」
「トメさん。」
「ん?何だい?」
「どうして黄金の卵パンだけ無くなっていると?」
「だって当たったらお客さんの反応で分かるし、売れ残りはウチの従業員で食べるから、そこでも反応で分かるんだよ」
この中からピンポイントに引き当てる…か。
「一つだけ盗まれているの?一度に二個三個盗まれているとかそう言う訳では無くて?」
「在庫管理しているから、盗まれているのは一つだけだよ」
「となると、犯人は内部の人かな?だって外部から忍び込んでいるなら、性別は分からないけれど一個では足りないと思うの」
「ドローパンのカロリーは、大体一つ500~600キロカロリー。確かに一個では足りない…」
「許せねぇ!よし、その泥棒野郎を捕まえるぞ!」
「遊城、犯人が男と決まった訳では」
「翔!今日から張り込みだ!」
「うん!…ええっ?!」
発言をスルーされたゆうちゃんは悲し気にうつむく。その背中を押してもこっちはその場を立ち去る。
ブルー女子寮の前に、タップリとした赤い髪を、腰より長く伸ばした女子生徒が腕組みして立っている。
もこっちと目が合うと、そのまま睨み付けて来るが、もこっちの守備力は下がらなかった。
「あの人は…?」
「二年の胡蝶先輩よ。ほら、毛先の手入れでいつも一角を占拠している」
「ああ、思いだした。腰より長く伸ばす必要がどうにも分からない」
「シャンプーもたくさん使うし、毛先にあれだけ気を使うって事はやっぱり」
「傷みやすい。何より動きにくそう」
「セミロングの方が似合いそうよね」
好き放題言っている二人に、女子生徒が近づいてくる
「随分色々言ってくれたじゃない。」
「すみませんでした、胡蝶先輩」
「貴女が黒木ね?小日向先輩から聞いたわ」
「小日向先輩から?」
思考を巡らすもこっち。だがどうにも話が繋がらない
「たぶんもこっちが思ったより腕が立つと言う事で注目されているのかも」
「腕試し、というには結構剣呑な雰囲気だけど」
「機械族使いなんですってね?」
「はい…もしかして」
「丸藤と同じ機械族使いである事が不本意、と言ったことですか?」
「?!」
目つきが剣呑になり、もこっちを睨み付ける胡蝶。それに対しもこっちは敵意を向けられる理由に当惑する。
「呼び捨て…しかも不本意ですって?」
「いや、呼び捨てにするのが駄目なら、名前で呼べとか、さんをつけろと?」
「もこっちもこっち」
「何?」
「きっと、胡蝶先輩は彼の事が好きなんだと思う」
「いやいやいや、ありえないって。釣り合わないにも程がある」
「何ですって!」
激昂する胡蝶を何とかなだめようとするゆうちゃん
「胡蝶先輩、ちょっと情報を整理してもいいですか?どうにも話が食い違っているような」
「ゆうちゃん」
「もこっち?」
ディスクを起動させて、もこっちは胡蝶先輩と対峙する。
「こうなったらデュエルするしか無い。正直、ゆうちゃんが言うように行き違いがあると思う。」
「ええ、デュエルで決めましょう。そちらが勝てばこの件は蒸し返さない。」
「先輩が勝ったら今後丸藤の事をさんづけで呼びます…いいですか?」
「ええ、それでいいわ」
デュエル!
もこっち ライフ4000
手5 場
胡蝶 ライフ4000
手5 場
「先行は上げるわ」
「では遠慮なく。ドロー!私はメカ・ハンターを召喚。カードを伏せて、ターンエンド」
もこっち ライフ4000
手4 場 メカ・ハンター 伏せ1
胡蝶 ライフ4000
手5 場
「私のターン、ドロー!私は甲虫装甲騎士を召喚!」
「攻撃力1900…」
「バトル!メカ・ハンターを攻撃!」
「破壊されるけれど、罠発動!」ライフ4000から3950
もこっちの後ろに巨大な機械が出現する
「?!時の機械タイムマシーン?!」
「時を超えて再起動しなさい、メカ・ハンター」
「…私はカードを二枚伏せて、ターンエンド!」
もこっち ライフ3950
手4 場 メカ・ハンター
胡蝶 ライフ4000
手3 場 甲虫装甲騎士 伏せ2
「私のターン、ドロー!私はメカ・ハンターを生贄に捧げ、人造人間サイコ・ショッカーを召喚!」
「?!サイコ・ショッカー!罠カードを封じる上級モンスター!」
「バトル、甲虫装甲騎士を攻撃!サイバーエナジーショック!」
「きゃっ!」ライフ4000から3500
「カードを伏せて、ターンエンド。」
もこっち ライフ3950
手3 場 サイコ・ショッカー 伏せ1
胡蝶 ライフ3500
手3 場 伏せ2
「私のターン、ドロー!私は代打バッターを召喚!」
「墓地に送られると手札の昆虫族を特殊召喚出来るモンスター…」
「良く勉強しているじゃない。私は魔法カード、アリの増殖を発動!場の代打バッターを生贄に、兵隊アリトークンを二体特殊召喚!
そして代打バッターが墓地に送られた時、手札の昆虫族を特殊召喚!」」
「あれ?トークンの特殊召喚という処理が入るから、代打バッターはタイミングを逃して手札の昆虫族を特殊召喚出来ないはず…」
ゆうちゃんが呟くが、デュエルディスクは特殊召喚可能という処理で行われる
「いでよ、インセクト女王!」
「?!場の昆虫族モンスター一体につき、200ポイント攻撃力がアップするモンスター…。場には3体の昆虫族。よって攻撃力は2800」
「正解よ、バトル!兵隊アリトークンを生贄に捧げて、インセクト女王の攻撃!クイーンズ・ヘル・ブレス!」
「迎え撃て!サイバーエナジーショック!」
インセクト女王の砲撃と、サイコ・ショッカーのエネルギー弾が激突する。拮抗していたが、インセクト女王の砲撃が上回り、サイコ・ショッカーは撃破される
「…サイコ・ショッカー…」ライフ3950から3750
「虫除けバリアーを発動して、ターンエンド。エンドフェイズ!敵を倒したインセクト女王は卵を産む!」
もこっち ライフ3750
手3 場 伏せ1
胡蝶 ライフ3500
手0 場 インセクト女王 兵隊アリトークン インセクトモンスタートークン 虫除けバリアー 伏せ2
「私のターン、ドロー!おろかな埋葬を発動!デッキからデモニックモーターΩを墓地に送る!そして永続罠、リビングデッドの呼び声を発動!
デモニックモーターΩを特殊召喚!」
「攻撃力2800?!」
「バトル!インセクトモンスタートークンを攻撃!モーターバイオレンスッ!」
「永続罠!DNA改造手術を発動!発動時に種族を一つ宣言、場のモンスターは宣言した種族になる!私が宣言するのは、昆虫族!」
「虫除けバリアーを発動したからあるとは思ったけれど。」
デモニックモーターΩに異変が生じる。クワガタムシを連想させる角が生え、赤色のボディがキチン質の外殻に変貌し、異形の姿に変わり果てる。
「…DNA改造手術のこの演出凄いね…法則でもあるの?」
「インダストリアルイリュージョン社の公式回答では、全モンスターカードに対してそれぞれ変えられた場合のイラストが設定しているとの事だけれど」
「イラストレーターの負担が凄い事にならない?」
単純に一種類モンスターカードをデザインしたら、それの種族違いを新たに用意しなければならない。
最も給料はそれに見合った額が与えられるという噂だ。
「虫除けバリアーとのコンボにより、攻撃は通らないわ!」
「…メインフェイズ2に入り、モンスターをセット。カードを伏せてターンエンド。エンドフェイズ、デモニックモーターΩの効果発動!モータートークンを特殊召喚!」
もこっち ライフ3750
手1 場 デモニックモーターΩ モータートークン セットモンスター リビングデッドの呼び声 伏せ1
胡蝶 ライフ3500
手0 場 インセクト女王 兵隊アリトークン インセクトモンスタートークン 虫除けバリアー DNA改造手術 伏せ1
「私のターン、ドロー!リバースカードオープン!魔法カード、ワーム・ベイトを発動!私の場に昆虫族モンスターが存在する時発動できる。場にワームトークン二体を特殊召喚!
ただし、発動ターンにレベル3と4のモンスターを私は召喚出来ない」
「珍しい制約ですね。」
そのターンの特殊召喚を封じるならばともかく、3と4は駄目とは。インダストリアルイリュージョン社と海馬コーポレーションの考える事は分からない…
まぁ、名誉会長と社長がアレだから仕方ないか。
当の本人たちが聞けば怒りそうな事を考えているもこっちの前で、胡蝶は宣言する
「場の三体のトークンを生贄に!出でよ!The tripping MERCURY!」
「?!」
またまたプラネットのお出ましに驚くもこっち。
「三体の生贄で出てきたのが攻撃力2000…何かあるね」
ギャラリーの指摘に楽し気な表情を浮かべる胡蝶。
「外部から入って来た一年生は有望そうね、いかにも。The tripping MERCURYの効果発動!生贄召喚成功時、場のモンスターは全て攻撃表示になる!
これでスフィア・ボムは解体してやるわ!」
もこっちは淡々と場のモンスターを表側表示にして告げる
「魔装機関車デコイチのリバース効果発動、カードを一枚ドローする」
「……」
「…胡蝶先輩、貴女のターンですよ?」
「う、うるさいっ!The tripping MERCURYの効果はまだあるわ!
三体の生贄を捧げて召喚された場合、相手モンスターの攻撃力はその元々の攻撃力分ダウンする!アトモスフェリク、ディザフェランスッ!」
「?!デモニックモーターΩとデコイチの攻撃力が0に?!」
「バトル!デモニックモーターΩをスクラップにしてやりなさい!Temperature Change!」
「永続罠!ガリトラップピクシーの輪!相手は私の場の最も攻撃力が低いモンスターを攻撃出来ない!」
「?!マーキュリーの効果が裏目に…ターンエンド」
もこっち ライフ3750
手2 場 デモニックモーターΩ モータートークン 魔装機関車 リビングデッドの呼び声 ガリトラップピクシーの輪
胡蝶 ライフ3500
手0 場 The tripping MERCURY インセクト女王 虫除けバリアー DNA改造手術
「私のターン、ドロー!キャノンソルジャーを召喚!効果発動!モータートークンと魔装機関車を生贄に捧げる!1000ポイントのダメージよ!」
「きゃあああああっ?!」ライフ3500から2500
「ターンエンド、エンドフェイズにモータートークンを特殊召喚!」
もこっち ライフ3750
手2 場 デモニックモーターΩ モータートークン キャノンソルジャー リビングデッドの呼び声 ガリトラップピクシーの輪
胡蝶 ライフ2500
手0 場 The tripping MERCURY インセクト女王 DNA改造手術 虫除けバリアー
「くっ、私のターン、ドロー!カードを伏せて、ターンエンドよ!」
もこっち ライフ3750
手2 場 デモニックモーターΩ モータートークン キャノンソルジャー リビングデッドの呼び声 ガリトラップピクシーの輪
胡蝶 ライフ2500
手0 場 The tripping MERCURY インセクト女王 DNA改造手術 虫除けバリアー 伏せ1
「私のターン、ドロー!キャノンソルジャーの効果発動!モータートークンを生贄に捧げて、500ポイントのダメージ!」
「くっ!」ライフ2500から2000
「…キャノンソルジャーの効果発動!デモニックモーターΩを生贄に捧げる!」
「なっ?!何ですって!」ライフ2000から1500
「速攻魔法、スケープゴート!羊トークンを4体特殊召喚!キャノンソルジャーの効果発動!羊トークン3体を生贄に捧げて、1500のダメージよ!」
「きゃあああああっ?!」ライフ0
最後はほぼごり押しだった事に、内心舌打ちをするもこっち。
「…私の負け、ね。この件は蒸し返さないと約束するわ」
「胡蝶先輩、誤解があるようなので、聞いてくれませんか?丸藤って、オシリスレッド一年の丸藤ですよね?」
「は?オベリスクブルー三年よ?」
「え?」
「…もしかして、苗字が同じだけで別人なのかな?」
「そういえば、亮様は弟さんが居るって言っていたけれど…」
「丸藤に兄が…」
あの眼鏡に背丈を足したような感じか?と推測するもこっち。
「三年生の丸藤さんの事を胡蝶先輩は言って居ると思って居て、もこっちと私が一年の丸藤の事を言って居た、と言う事でいいのか…な?」
「真相はそういう事みたいだね。」
「骨折り損のくたびれ儲け、って奴?」
「胡蝶先輩とデュエル出来たのだから、骨折り損では無いわ。結構疲れたけれど」
その場を立ち去るもこっちと、その傍らについていくゆうちゃん。
「ねぇ、もこっち」
「何?」
「…もしも、インセクター羽蛾とエスパー絽馬がデュエルをしたらどちらが勝つのかな?」
「インセクター羽蛾」
「どうして?」
「他人の手札を覗き見しないと戦えない決闘者に敗れる程、彼は無能では無いからよ」
「相手のデッキに細工をするのもどうかと思うけれどなぁ…」
今度デュエルシュミレーターで試してみよう、とゆうちゃんは考えながら寮へと入っていく。
胡蝶さんが登場する遊戯王GX二次って少ないですよね
結構情熱的な良いゲストキャラだと思うのですが…
胡蝶さんの伏せカードは砂塵の大竜巻でした。