冬休みに入るまで後一週間という時に、もこっちは奇妙な気配を察知する。
「…これは、誰かが精霊を呼び出そうとしている…?」
興味が湧いた為、その方角へ向かう。
図書館の一角。確か高寺オカルトブラザーズが使って居る場所。
そこのウィジャ盤から気配を察知する。
「…隠れて居ないで出てきたら?」
『ほう、君の気配。並では無いな?』
「サイコ・ショッカー?」
『いかにも。』
ぼんやりとした幻影だが、その姿は紛れも無くサイコ・ショッカーだった。
「高位精霊である貴方が何故ここに?」
『邪悪な気配を察知した。その時にちょうど良く門が開かれたので通って来た」
「邪悪な気配…」
『三幻魔という連中だ。やつらが復活したらこの世界も私も危険だ。手を組まないか?生き延びるために』
「……」
『最初はあの連中を生贄に降臨し三幻魔復活を妨害するつもりだったが、君と契約した方がより良質なエネルギーが手に入ると判断した。』
少し考えるもこっち。かなり切羽詰まっているようだ。自分が生き延びるためなのだから、嘘ではあるまい。
ややあってサイコ・ショッカーをその双眸で見つめる。無機質な目にもこっちの顔が映る。
「結ぼう、その契約」
『では』
握手をするもこっちとサイコ・ショッカー。ややあってもこっちは何かが吸い取られるような感覚を感じ取る。
「…これは?」
『デュエルエナジーを吸わせて貰った。ふむ、これだけあれば当面の活動に不自由は無いな』
実体化したサイコショッカーを興味深げに眺めていたもこっち。ややあって口を開く。
「…呼び出した連中は何と?」
『三体の生贄を捧げよ。そう言ったら、わかりましたと返してきた。おそらくはカードの生贄だと思ったのだろう』
「心霊学とデュエルの精霊を一緒にしているのか…三幻魔復活を妨害しようとする精霊も居れば、復活させようとする精霊も居るの?」
『そうだ。』
「ならばここで灸をすえておかないと、また呼び出すかもしれない。それが三幻魔復活を目論んで居たら厄介」
『…一理あるな』
「だが、相手はオベリスクブルーの男子。勝てるの?」
『…私の実力を疑いなら、今この場で見せよう』
「なら、見せて貰う」
もこっちはディスクにデッキをセットし、起動する。
サイコ・ショッカーの前にカードが5枚シールドのように展開される。
デュエル!
もこっち ライフ4000
手5 場
ショッカー ライフ4000
手5 場
『先行、ドロー!私は怨念のキラードールを召喚!』
「エクトプラズマーを発動して、800のダメージを与えつつ、次のターンで復活させる…」
『そしてエクトプラズマーを発動…随分と詳しいのだな。』
「場に残ることで効果を発揮するサイコ・ショッカーと場に残さないエクトプラズマーは相性が良くない気がするが…」
『そう言う事は私に勝ってから言って貰う、エクトプラズマー射出!』
怨念のキラードールからエクトプラズムが抽出されて射出される。あれはモンスターとの絆を断ち切るカードだと否定されていたが
生贄にされたぐらいで絆を断ち切るモンスターに、絆を求める価値はあるのだろうか?
「…」ライフ4000から3200
『ターンエンドだ』
もこっち ライフ3200
手5 場
ショッカー ライフ4000
手4 場 エクトプラズマー
「私のターン、ドロー。機械軍曹を召喚。バトル、機械軍曹でダイレクトアタック。」
『ぬ、私の場はがら空き…』
「速攻魔法、リミッター解除」
『な、なぁにぃ?!ぬわぁああああ!』ライフ4000から800
「ターンエンド。エンドフェイズにエクトプラズマーで機械軍曹を射出」
『ぬわああああ?!』ライフ0
あっさりと決着がつく。見下していた人間に敗れた事で衝撃が隠せないサイコ・ショッカー。
一方でクリボーなどの防御手段も無いのに先ほどのコンボを使ったことにがっかりするもこっち。
せめて伏せカードなり用意してくれたらもう少し楽しめたのだが。
『ば、馬鹿な…このコンボがまるで通用しないだと…』
「…デッキを改造するぞ、嫌とは言わせん。これでは三幻魔復活の阻止は夢物語だ」
『ぬぅう…』
改造するべく、どういうデッキにするか考えて…
「…出来た、受け取れ」
『これは…』
「並の相手ならそれで蹂躙出来るだろう。さて、仕掛けるがいい」
そこまで言って、もこっちは考え込む
『どうした?何か問題でも?』
「名前が必要だな、ショッカーでは怪しまれる…そうだな、キドニーと名乗るがいい。」
『わかった…』
人造人間から、じんぞう、じんぞう=腎臓、英訳するとキドニー。我ながら安直ではあるが、デュエルモンスターズの精霊でも無ければ気づかないだろう。
三日後、もこっちが課題のレポートをワードで内容をまとめ、語尾が揃って居るか、誤字脱字が無いか推敲していると…パソコンの画面が突然フリーズする。
こまめに上書きしていた為損害は少ないが、作業を邪魔されて鼻白むもこっち。…パソコンに動画が表示される。これは…
「発電施設?」
もこっちの声に、画面が上下にぶれる。これは頷いたのか。となれば…
パソコンにインカムを接続し、もこっちは告げる。
「キドニーか?」
『いかにも』
イヤホンから聞こえてくるのはサイコ・ショッカーの音声。
「どうした?」
『…高寺を倒した』
「儀式と融合の混成だ、かなり使い辛かっただろうが…」
『サーチカードが多いおかげで難なく回ったが、問題が発生した。』
「問題?」
『ハネクリボーと心を通わす人間に絡まれた。相手は赤い服だが…』
「それはオシリスレッドの制服だ。」
『…ブルーの男と同格か。となると黄色が最もレベルが高いデュエリストか?』
「違う、レッドが最下級、イエローが中級、ブルーがエリートだ。」
『ラーが最上級では無いのか…わかった。また連絡を入れる』
「待て。私が用意したデッキを何処まで使えるか興味がある」
『それもそうだな、では存分に見るがいい…』
「お前が高寺達を!何者だ!」
『私は、キドニー。この者達にはおろかな行為として少々灸をすえただけだ。君には関係ない』
「ふざけるな!俺とデュエルしろ!」
『ほう。ブルーを圧倒する私に、レッドの君が挑むか。まぁいいだろう、相手をしてやる』
ディスクを起動させる遊城と、眼前にカードを5枚浮遊させるキドニーことサイコ・ショッカー。
あれはどうやって浮かせているんスか?!だの間抜けな声が聞こえる。ディスクを渡しておくべきだったと反省するもこっち。
デュエル!
十代 ライフ4000
手5 場
ショッカー ライフ4000
手5 場
『私の先攻、ドロー!私はマンジュゴッドを召喚。効果発動!デッキからイリュージョンの儀式を手札に加える』
「儀式魔法…儀式使いか?!」
『さらに手札の沼地の魔神王の効果発動、手札から捨てて、デッキから融合を手札に加える!』
「儀式と融合の混合?!明日香さんみたいッス!」
『私はカードを一枚伏せてターンエンドだ』
十代 ライフ4000
手5 場
ショッカー ライフ4000
手5 場 マンジュゴッド 伏せ1
「俺のターン、ドロー!俺はスパークマンを召喚!バトルだ、マンジュゴッドを攻撃!スパークフラッシュ!」
『ぬっ…』ライフ4000から3800
「俺はカードを4枚伏せ、永続魔法悪夢の蜃気楼を発動!ターンエンドだ」
十代 ライフ4000
手0 場 スパークマン 伏せ4 悪夢の蜃気楼
ショッカー ライフ3800
手5 場 伏せ1
『私のターン、ドロー!』
「悪夢の蜃気楼の効果発動!手札が4枚になるようにカードをドローするぜ!」
『だが次のターン、君は手札を捨てる大きなリスクがある。』
「へへっ、リバースカードオープン!非常食!悪夢の蜃気楼を墓地に送って、ライフを1000回復するぜ!」ライフ4000から5000
『酷い、何だそのコンボ。ええい、私は冥界の使者を召喚!そして儀式魔法、イリュージョンの儀式を発動!場の冥界の使者を生贄に捧げ、サクリファイスを儀式召喚!』
「サクリファイス…?」
サクリファイスの後姿を画面越しに覗きながら、デッキをちゃんと使いこなしている事をもこっちは確認する。この後の流れは…
『冥界の使者が場から墓地に送られた事で効果発動。互いにデッキからレベル3以下の通常モンスターを手札に加える。私は千眼の邪教神!』
「俺はバーストレディを手札に加えるぜ!」
冥界の使者では無くクリッターの方が良さそうだな、と改善点をチェックするもこっち。
【サクリファイス】の天敵、魔のデッキ破壊ウィルスを使われても生き延びれるアタッカーであり、千眼をサーチ出来るのだが、相手も下級バニラを入れていると塩を送ってしまう。
『サクリファイスの効果発動!相手モンスターを装備カードに出来る。スパークマンを取り込め!』
「スパークマン?!」
『バトルだ、行け、サクリファイス!ダイレクトアタック!イリュージョン・スパーク・フラッシュ!』
サクリファイスが電撃を纏って右に左に素早く移動しながら不意打ち気味に体当たりをする。チガウ、コレジャナイ、ともこっちは呟く。
「ぐううううっ?!」ライフ5000から3400
「ブフッ、ターンエンド」
サイコショッカーが軽く笑う。遊城はそれを挑発と受け止め、もこっちは先ほどの呟きをインカムで聞かれたと内心舌打ちをする。
十代 ライフ3400
手4 場 伏せ4
ショッカー ライフ3800
手4 場 サクリファイス スパークマン 伏せ1
「くっ、俺のターン、ドロー!よし、リバースカードオープン!融合!手札のフェザーマンとバーストレディを融合!来い!フレイムウィングマン!」
『攻撃力2100か…』
「バトルだ!いけ、フレイムウィングマン!サクリファイスを攻撃!」
『ダメージは受けるが、サクリファイスの効果発動。戦闘ダメージを受けた時、装備カードを犠牲に破壊を免れる。それだけでは無い。
この戦闘で受けるダメージを相手にも与える」ライフ3800から3300
「なっ?!」ライフ3400から2900
「まだまだ!リバースカードオープン!融合解除!来い、フェザーマン、バーストレディ!もう装備カードは無い、行け!」
フェザーマンがサクリファイスに羽根を飛ばして爆破させ、バーストレディの炎がサイコ・ショッカーに直撃する!
『ぐううううっ!』ライフ3300から1100
「よし、カードを伏せてターンエンドだ!」
十代 ライフ2900
手2 場 フェザーマン バーストレディ 伏せ3
ショッカー ライフ1100
手4 場 伏せ1
『私のターン、ドロー。私は死者蘇生を発動、墓地からサクリファイスを特殊召喚」
「させねぇ!ライフを半分払い、場から神の宣告を発動するぜ!」ライフ2900から1450
神の宣告とは。かなりのレアカードが登場した事にもこっちは驚く。
とはいえ、これで勝負は決したか?
『では私もこれを使うとしよう。融合!手札の千眼の邪教神と融合呪印生物「闇」を融合。現れろ、サウザンド・アイズ・サクリファイス!』
「な、何かすげぇのが出てきたな…」
『まだだ!君の場のモンスター二体を生贄に、溶岩魔神ラヴァゴーレムを君の場に特殊召喚する。』
二体のHEROが地中から突如現れた溶岩の魔神によって握りつぶされ、鉄の檻に遊城が閉じ込められる。
「俺のモンスターを生贄に?!」
「こ、これはまずいのニャ?!」
「どうしてですか、大徳寺先生?」
「あのモンスターはコントローラーに、毎ターン1000ポイントのダメージを与えるのニャ!」
『その通り。そしてサウザンドアイズサクリファイスが場にいる限り、このカード以外のモンスターは攻撃出来ない!』
「って事は、こいつを何とかしないと俺は3ターンで負ける?!」
『いかにも、だが私の狙いは違うぞ?サクリファイスの効果を、サウザンドアイズは引き継いでいるのだ!』
「な、何ぃ?!」
『サウザンドアイズ・サクリファイスの効果発動。溶岩魔神を装備する!』
溶岩魔神を装備するサウザンドアイズだが、目が充血している。
デメリットモンスターを吸収するのは相応にリスキーなようだ。
『バトル、ダイレクトアタック!』
「うわぁああああ?!」ライフ0
『私の勝ちだな、レッドよ。』
「くっ、無茶苦茶つええ…でも、面白いデュエルをするんだな」
『面白いだと?』
「ああ。」
『…面白い男だ。ではまた会おう…』
動画が途切れ、パソコンのフリーズが直る。もこっちは作業を再開する。
「…まだまだ改善の余地あり、か。」
『この学園は思ったより面白いな。』
後ろから声が聞こえるが、振り返らずにもこっちは呟く。
「そのデッキはお前が思うように改善するといい。サクリファイスの吸収戦術が気に入らなければ抜いて、サイコ・ショッカーを重視したデッキにしてもいい」
『いや、存外気に入った』
ふと疑問を感じたもこっちは、サイコショッカーに質問をぶつける。
「…カードの精霊なのだろう?ならば自身の召喚に特化したデッキの方がいいのではないか?」
『そんな事は無いぞ。それを言ったらカオス・ソーサラーなどは究極完全態グレートモスが切り札にしている』
「カオス・ソーサラーに何があったのか多少気になるが…私は課題を終わらせないといけないから話はこれまでだ」
『課題?』
「デュエル理論の方は終わった。佐藤先生の課外授業、プレゼンテーションの発表会用のスライドと原稿を用意しなければならない。」
画面をのぞき込むサイコ・ショッカー。
『デュエルモンスターズのカードだな、古代の機械巨人について5分程度のスピーチをしろ、か…』
「ゆうちゃんはガーネシア・エレファンティス、天上院さんがホーリー・ナイト・ドラゴン。」
『良い教育プログラムだな…』
パソコンを所持している生徒限定の課外授業の課題。パソコンを持っているラーイエローとブルーのみ参加可能。
レッドはパソコンを持たせた所でゲームしかしないと思われている。
画像を取り込み、原稿とパワーポイントをもこっちは手早く仕上げていく。
前書きでカード名を思い浮かべた方、そのカードについて5分程度のスピーチを行ってください。
こういう課題が、デュエルアカデミアでは普通にあると思います。