咲-Saki- loop-top  この檻の中で君を想う   作:入道雲

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 この作品は基本的に暗い話です。それでも良い方はどうぞ。

あと京太郎がだれかと付き合ったりなどは無いので、そのようなイチャラブ展開を望む方はブラウザバック。


不定期更新なのであまり期待しないでください。


始まりの起点

 ――清澄高校。

 

 今年初めて全国のインターハイで優勝した長野県の代表校。

 今でも忘れない。あの熱気、あの歓声、あの喜び。

 

 俺の親友、咲は家庭の事情で分かれた姉に会いたいといっていた。

 

 しかし会う為には全国、インターハイに出なければならなかった。

 100を優に超える高校がその頂に向かう果て無き道。

 そして咲の姉のいる白糸台、全国の高校生の頂点に君臨する王者、覇者。

 意外なことに普段は物静かな文学少女だった咲には麻雀の才能があった。

 

 幾つもの高校と戦い、そして勝ち取り、優勝した。

 

 

 

 

 

 「――ああ、またあの夢か……」

 

 きしむベッドから身体を起こし、洗面台に向かう。鏡に映った自分の顔は余り、健康的とは言えなかった。

 ボサボサになった髪の毛に充血した瞳にその下には濃い隈。とてもじゃないが元気そうには見えない。

 

 「酷い顔だ……」

 

 季節の所為で蛇口から出てきた水はとても冷たく、これが現実であると自分に伝えているようだった。

 顔を洗いたくなったのは気分を変えたかったからであった。部屋に戻り、常備してある錠剤を飲み下し、毛布に包まる。

 

 やがて薬が効いてきたのか、京太郎の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 彼が来なくなって一週間。それも当然だと思ってしまう。

 一週間前の彼はそれほど酷かった。

 

 

 ――皆さんが暗い顔の中、沢山の人がやってくる。

 彼女の交友の広さ、いや、彼女の人徳が成せる業ですね。その中には勿論、彼もいた。

 

 フラフラとした足取りで彼女の前に行き、急に騒ぎ出した。いや、一種の錯乱状態だったのでしょう。

 

 「なあ、咲起きろよ。みんなもどうしたんだよ? そんな暗い顔をして」

 

 ――こんなドッキリ面白くないぜ。

 

 「今なら怒らないから起きてくれよ。そうだ!! お前がほしがってた本買ってやるよ!!お前好きだっただろあの作者の……さ他にもいろんなヤツもプレゼントするぜ。十冊でも百冊でも買ってやるよ。それでさお前のお気に入りのあの木陰で一緒に読もうぜ。いつもみたいに本の薀蓄をお前が披露してくれよ」

 

 周囲から嗚咽が聞こえます。私も必死で嗚咽こらえ、彼を止めようと肩をゆすります。

竹井先輩も彼を止めようとします。しかし、彼は私達の手を振り払い、咲さんに近づきます。

 

 「何だよ部長に和、いま咲と話しているんだ。邪魔しないで下さい。――でさ、俺が本を沢山抱えて、お前は笑いながら次はー、とか言って……あ!! お前甘いものも好きだっただろ?この前できた駅前においしいお菓子が出来たんだよ。そこにも行こうぜ。部長と染谷先輩と和と優希、皆でさ……今回は特別だからな、俺が奢るぜ」

 

 龍門渕の方々が彼を抑えようとしています。涙を流しながら。私も涙を流しながら彼を抑えます。

咲さんのお父様も彼を止めようとして掴み彼女から引き離します。彼は身体を捩りながら抜け出そうとします。

 

 「絶対に――ね――ぞ」

 

 彼がポツリと言葉を漏らす。

 

 「絶対に認めねえぞ!!」

 

 大きな声を出しまわりに叫ぶ。

 

 「咲が死んだなんて、絶対に認めねぞぉぉおおおおおおおおお」

 

 掴んでいた腕から抜け出し咲さんに向かって須賀君は走って行く。しかし、咲さんの入った棺と、須賀君の間に割ってはいる一つの影。

 

 「どいてくれよ……ハギヨシさん……」

 

 「それは……友人として見過ごせません」

 

 残念そうに顔を一瞬だけ伏せるハギヨシさん。しかし、すぐに須賀君に視線を戻します。

 

 「頼むから……どけよぉおおおおおお」

 

 「ちょ、やめるっす」

 

 須賀君がハギヨシさんに向かっていこうとしましたが、後ろから鶴賀の東横さんが羽交い絞めをして押さえつけます。その隙に周りの上級生達も須賀君を取り押さえます。

 

 彼はハギヨシさんに連れて行かれました。

 

 私が知っているのはココまでです。

 

 

 放課後の麻雀部の部室。京太郎を除いたメンバーがそろっていた。

 

 「今日も来ないわね……」

 

 麻雀部部長、竹井久は暗い顔で言った。彼女が知っていることといえば、京太郎が数日間入院して、普通なら既に学校に来ているということだった。

久の言葉に他のメンバーもうなずく。

 

 「そうじゃの……」

 

 「和も辛いと思うけど、乗り越えていきましょ」

 

 「はい……」

 

 「そうだじぇ、部長の言う通りだじぇ……」

 

 メンバーが僅かだが暗い顔をする中、急遽扉が開いた。

その扉から出てきたのは京太郎だった。

 

 「すみません、遅れました」

 

 予想していなかったメンバーに皆が驚愕する。

 

 「どうしたんすか?」

 

 「須賀君、もう大丈夫なの?」

 

 「ええ、少し風邪で寝込んでましたけど全快しました」

 

 

 咲が亡くなる前と変わらぬ笑顔で京太郎は答えた。

その笑顔に皆が違和感と言えばいいのか、薄ら寒いモノを感じた。

 

 全員が思った、彼女と一番付き合いが長かった彼がこんな笑顔をする筈が無いと……。

むしろ一番付き合いが長い京太郎が傷ついていると……

 

 ――だから

 

 ――――須賀京太郎は

 

 「す、須賀く――」

 

 「あ!! 咲は今日来れないらしいです。少し用事があるって電話で言われました」

 

 ――目を背けた。

 

 ――この辛い現実から逃げ出した。

 

 「アイツも酷いっすよねー、ようやく全国が終わって俺に麻雀を教えるって約束してたのに」

 

 「――が――ん」

 

 「まあ、見ていてください。これから俺の逆転劇がはじ――」

 

 「須賀君!!」

 

 言葉を遮るように大きな声を出す久に、京太郎は驚き声を上げる。

 

 「おわっ!? なんすか部長、いきなり大声出して……」

 

 「ごめんなさい須賀君、今日は部活無いのよ。皆も集まってもらって悪いけど解散して頂戴。須賀君は少し残ってもらうわ」

 

 和と優希は素直に出て行くが染谷まこは何か言いたそうにするが、久はこの件は任せてと言い、まこを言いくるめる。

まこは渋々と部室から出て行き、部室に残ったのは京太郎と久の二人だけだった。

 

 「どうしたんですか、部長?」

 

 「須賀君、こんなことを貴方に言うのは酷だと思うわ、でも貴方に言わなきゃいけない……」

 

 久が京太郎に向き合い、京太郎の瞳を見つめる。

 

 「咲は……死んだのよ」

 

 その言葉に京太郎は身体を一瞬震わせる。

 

 「――な、なにいってんすか?」

 

 京太郎が一瞬震えたのを久は見逃さなかった。

 

 「いい加減にしなさい……貴方だって解っているはずよ」

 

 「いい加減にして欲しいのは部長の方です。咲とは今日電話してたんですよ? なのに、いきなり死んだとか訳の分からないこと言って」

 

 「……、本当に電話してたなら咲のケータイに電話をかけてみなさい……」

 

 そう言われ、京太郎は携帯を取り出し、見知った番号に掛ける。

 

 「あれ? おかしいな……」

 

 焦りながらもう一度かける。

しかし、スピーカーから聞こえてくるのは同じ機械音声。

 

 「すみません、アイツ電源切っているみたいで……」

 

 パァンと乾いた音が部室に響いた。

 

 どうしても現実を認めようとしない京太郎に久が平手打ちをしたのだ。

 その拍子に京太郎の持っていた携帯が落ちた。落とした衝撃で携帯がスピーカーフォンに切り替わった

 

 ――ておりません。

 

 ――お掛けになった電話番号は現在使われて……

 

 「いい加減に目を覚ましなさいッ!!」

 

 その言葉に京太郎は目を見開き驚く。

 さらに、久が京太郎に詰め寄り胸倉をつかみ上げる。久の顔が京太郎の目の前に近づく。

 

 「アンタに、アンタなにがわかるんすかっ!!」

 

 京太郎も大きな声を上げ、反論する。

 

 「アナタだけが悲しんでいると思う!? みんな悲しんでいるのよ、まこも、和も、優希も、そして私だって!! でも、いつまでも悲しんでいられないの!!でも、いつまでも悲しんでいられないの!!」

 

 冷たい現実を京太郎に突きつける。

 久にとっても、京太郎にとっても、冷たい現実を。

 

 京太郎の頬に暖かいモノが流れる。

 涙ながらに訴える。

 

 「だって、そんなの……認めたくないっすよッ!! ……アイツが――自殺したなんて……信じられますか? インハイが終わったら……約束してたんすよ、俺に麻雀教えてくれるって」

 

 「……ええ」

 

 「アイツとは幼馴染だったんすよ」

 

 「咲から聞いているわ……」

 

 「幼馴染の俺でも知らなかったんすよ、アイツが麻雀がめちゃくちゃ上手い事」

 

 ――須賀京太郎と宮永咲は幼馴染だった。

 男女の垣根を越えた友情が確かにそこにはあった。同じ幼少期を過ごした仲間でもあった。

 

 ――そして彼らは

 

 「アイツは、俺のかけがえのない親友……だったんです」

 

 「――それでも、貴方は……いつまでも彼女の死に縛られていては……いけないわ。私たちは生きているの、彼女の死を受け止めて、この現実を乗り越えなきゃいけないのよ……前に進まないといけないの」

 

 

 京太郎は嗚咽に混じった声で返事をする。その声は小さくとも久には届いていた。

 

 力が抜け、膝を折る。

 涙を流しながら何度も頷く。

 

 「悲しむのは構わないわ、でも、いつまでもそれに囚われてはいけないわ。明日から少しずつでも構わないから」

 

 「……わかりました」

 

 

 久の言わんとした事を理解する。

 その言葉は京太郎の心に届き、現実向き合わせる勇気を与えた。

 

 

 

 自宅に帰り、京太郎はベッドに横になる。

 暗くなった、室内には月の明かりが入り込み、京太郎には幻想的に見えた。

 

 「なあ――咲、今日だけは許してくれ……」

 

 ――やっぱり、お前が生きていてくれればどれだけ……

 

 京太郎は襲ってきた眠気に体を委ねた。

 

 

 

 

 みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。

みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。

 

 じりじりとした日差しが身体に当たる。皮膚を焼かれているような感覚が身体を襲い、目を覚ます。

 少しは我慢しようと試みたが、ついには汗が心地悪くなり身体を起こす。

 

 「熱っ!!」

 

 ベッドから飛び降り周りを確認する。壁には中学の制服が掛かっている。部屋の配置も少し変わっていた。

 夢……だったのか?

 

 「なんんつー夢だ、まったく……アイツが死ぬなんて」

 

 寝汗が気持ち悪くなり、一旦シャワーを浴びたら、食欲がわいてきた。

 リビングに何か食料が無いか散策していたら母さんがいた。

 

 「あら、京太郎。朝食はもう少しで出来るからまっていて。朝食食べたら学校でしょ、今日は終業式なんだから最後くらいビシッとしなさい」

 

 生返事をして自分の部屋に戻る。

 頭にタオルを乗っけながら冷房を入れる。冷たい風が肌に当たり気持ちいい。

 部屋で涼んでいると、自分の名前が呼ばれた。朝食が出来たみたいだ。

 

 朝食を食べ終わり、制服に袖を通す。

 

 「京ちゃーん」

 

 玄関に向かうと咲がいた。

 

 「もう、京ちゃん。今日は三年生最後の前期が終わるんだから少しはビシッとしてよね」

 

 口を膨らましながら言う咲はいつもと変わらなかった。

 

 「んじゃ、行くか」

 

 「うん」




 酷い文章ですがよろしくお願いします。
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