咲-Saki- loop-top この檻の中で君を想う 作:入道雲
6/26に龍門淵→龍門淵に直しました。
もしかした番外編の様なモノをネタで何か投稿します。
この時間の巻き戻しをループと呼ぶ事にした。
二回目のループも、中学三年の夏休みの前日、終業式当日だった。
机の上にあるカレンダーに目をやる。カレンダーは一年前のものだった。
時計を見るとそろそろ学校の支度をしないといけない時間だった。急いで筆記用具をバッグにつめ、夏用の制 服に着替えリビングに向かう。
食卓には既に炊き立ての白米と白身の焼き魚、蜆の味噌汁が並べられていた。勿体ないと思いつつも、リビングを後にする。母が朝食を食べないのかと聴いてきたが時間が無いと答えると納得してくれた。靴を履いていると、インターホンがなる。この時間に来る人物は一人しかいないので、母が出る前に扉を開ける。
玄関の扉を開けるとそこには長年見知った親友がいた。
「よう、咲」
「あ、京ちゃん。てっきり寝坊しているのかと思ったよ」
バッグを肩に下げ通学路を歩く。
咲は京太郎より頭一つ分より小さい。その小さい親友の頭にぽんと手と置く。咲は少し驚きどうしたのかと聴いてきたが気にするなと返えした。
――今度こそ……絶対に守るから。安心してくれ。
胸に秘めた覚悟、消えないように刻み込む。
「それじゃあ行くか」
須賀京太郎は一歩、そしてもう一歩、地に足をつけ覚悟と共に歩み始めた。
中学を卒業し、高校に入学をした。
幸い学力は変わらず、勉強などはそこそこ身についていたので受験勉強は楽だった。
自分と同じ制服を着た人だかりのに混じり、桜の舞い散る校門を潜る。目的地は清澄航行の体育館だ。
体育館にあらかじめ設置されていた椅子に座り、しばらくして入学式が始まる。壇上の上で校長先生の長い挨拶が終わり、次に現れたのは――
「……部長」
部長だった。思わず胸に何かがこみ上げてくるが必死で堪える。部長……今度も優勝しましょう。俺も、雑用も麻雀だって前よりは上手くなっていますから練習相手もします。そして咲も俺が助けます。なので、皆で――祝勝会をしましょう。
部長の話も終わり、次は新入生の挨拶だった。出てきた人物に周りがざわめく。桃色の髪、整った顔立ち、和だった。
和らしく暗記してきたであろうその台詞を舞台の上で喋る。
見入ってしまった。それは周りの生徒達も同じで騒がしかったはずの館内もいつの間にか静寂が戻っていた。やがて和のスピーチが終わり館内に拍手が巻き起こる。ココからではあまり良くわからないが顔を赤らめているだろう。
新入生代表のスピーチも終わり、俺と咲はクラス分けを見ていた、そこには俺と咲の名前、そして和と優希の名前があった。また一年同じだな。
ホームルームでの簡単な自己紹介も終わり、新入生に対しての部活動や学校の校舎の見取り図などのプリントが配られただけで今日のやる事は終わった。
俺と咲は帰る支度を終え、帰るついでに構内を見回っていた。校舎での構内での部活動の勧誘のポスターが何枚かあった。その中には麻雀部のポスターも。日に焼けていて白かったであろう紙も薄っすらと茶色になっていた。部長……せめて毎年張り替えましょう。
一通り見終え、咲と帰っている最中にどの部活に入るかと話し合った。咲は相変わらず本が読みたいという理由で文学部に入るつもりらしかった。
俺はどの部活に入るのかと聴かれたが、正直、答えは決まっていたが咲は麻雀が好きでは無いと言っていたので適当に答えた。
高校に入学して一週間が経った放課後。咲は読みたい本があると言って、直ぐに帰宅して言った。俺は記憶を頼りに、咲を麻雀部に入部させるための手筈を整えるために部室に来ていた。部室の古めかしい扉を空けるとそこには三人の部員がいた。扉を開けたことに気づいた部長はこちらに視線をよこした。
「入部希望かしら?」
「はい」
「ええと、麻雀は初心者かしら?」
「大体、二年くらいですがやっていました」
「よし、入部決定」
相変わらずの部長の即答ぶりに思わず苦笑がこぼれてしまう。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
「そう、じゃあこれからよろしくね。麻雀部の仲間を紹介するわ。皆、来て頂戴。新しいメンバーよ」
部長の一言でメンバーがこちらに視線をよこす。
「ええと、同じクラスの……」
和が何かを言いかける。
「須賀京太郎です。よろしく」
「須賀くんですね。こうやって面と向かって話すのは初めてですね。これからよろしくお願いします」
『初めて』その言葉にどこかチクリと刺さった気がした。
「よろしくの、京太郎。染谷まこじゃ」
「はい、染谷先輩」
自己紹介を終え、お互いの力量を知るために麻雀を打っていると、不意に扉が開いた。そこには、優希が居た。右手に持った小さな紙袋にはタコスが入っているのだろう。こちらに気づくと新しい部員かと聴いてきたので自己紹介をすると、名前を教えてくれた。
「片岡優希だじぇ、よろしくな。京太郎」
「ああ、よろしく。タ――優希」
いつものあだ名で呼びそうになってしまったが、寸での所で言い直す。
幸い気づいた様子も無いので、麻雀を続ける。
「うーん、須賀君は基本は出来ていわね。独学で覚えたのかしら?」
麻雀を終えて、唇に手を当ててながら部長が口を開いた。
「いえ、友人に少し教えてもらいました」
嘘は言っていない。
何回も部長達に教えてもらったんだ。これで初心者といわれたら俺は壊滅的に才能が無く、記憶力も無いのだろう。
「牌効率も理解しているみたいですし、かなり上手な方に教えてもらったのでしょう」
和、お前の事だよ。感謝しているんだぜ、こんな初心者にわかりやすく教えてくれたのは。
また、インターハイで優勝を目指そうな。
「さて、麻雀部も残るところ後一人で団体戦に出場できるわね。。須賀君、女装に興味ない?」
「ハハ……勘弁してくださいよ」
破天荒すぎます、部長。引きつった笑みがこぼれてしまう。
安心してください部長、咲は俺が連れてきます。
部員との交流を深めるために、何度か対局をする。
時計を確認すると結構な時間が経っていた。空は暗くなっていて、そろそろ帰宅する時間だった。少しして、部長の言葉で本日の部活動は解散になった。
清澄麻雀部に入って、数日が経った。周りのクラスメイト達は新しく入った部活動の話しに花を咲かせていた。咲はいまだ部活動に登録しておらず、それそろいい機会だろう。
土曜日は授業が半日で終わるので、校舎に居るのは部活動に所属している者のほかにもチラホラ見える。昼なので木陰で読書をしていた咲を誘い、学食に向かう。学食で昼食を摂りながら学校生活について咲と話し合う。
咲は相変わらず文学部に入部する予定らしく、来週中には入部用紙を持っていくらしい。
ここで一年前と同じ行動をとる。おもむろに携帯を取り出し、携帯に入れてある麻雀アプリ取り出す。咲は何をしているのかと興味を持ったらしく横から携帯を覗き込む。
「何やってるの、メール?」
「いや、麻雀。最近はじめたんだけど麻雀っておもれーのな」
「私麻雀って好きじゃない」
「お、麻雀できんのか?」
「出来るけど……」
知ってるよ、お前が麻雀をあまり良く思っていないことも。
白々しくも続ける。
「じゃあ、話は早い」
ほとんど食べ終えていた昼食の残りを急いでかきこみ、咲の手を引いて麻雀部に連れて行く。
咲は少し抵抗してきたが諦めたらしく、おとなしくしている。
麻雀部の扉を強く開ける。
「ちゃーっす。部員一人連れてきゃしたー」
さあ、咲。これからインターハイに向けて頑張ろう!!
県予選までの毎日は、非常に充実していた。学生の本分である学業の方は流石に一年生を二回繰り返していたので問題は無く、日々、牌譜とのにらめっこが続いた。俺は出来るだけ牌譜の研究をして、ひたすら部長や咲たちのバックアップに勤めた。牌譜から解る相手の癖など持っている調べたり、PCで映像があればそれを繰り返し見た。もちろん部長が俺にも個人戦に出るように進めてきて、俺の練習にも時間を割いてくれた。そして迎えた当日。
そのには決して少なくは無い人数がいた。長野という片田舎の中でこんなに沢山の人間を見るのは久々だった。
大会のトーナメントを確認する。やはり決勝卓にくるのは風越、鶴賀、龍門渕だろう。
こうして県予選大会は始まった。清澄は順調に決勝魔で勝ち進んで行った。
そして決勝、大将戦。咲と共に決勝卓に向かう。流石に緊張しているのか咲の表情も硬い。
「咲、トイレ済ませたかー?」
「あぁ!! 行こうと思ってたんだ、ありがとう京ちゃん。行ってくるよ」
「おい咲、トイレはそっちじゃねーよ。まったく……この近くだとあっちの方だよ」
この近くにあるトイレの場所を頭の中から掘り起こす。
咲は急ぎ足でトイレに駆けて言った。トイレから出てて来た咲は少し恥ずかしそうに目を伏せていた。
「何やってんだよ咲。相変わらずおっちょこちょいだな。頑張れよ咲」
「うん」
頭をガシガシとすると咲は恥ずかしそうにする。咲を大手を振って送り出す。
咲も手を振り替えしてくれた。
そして手にした全国への切符。咲はあの天江、加治木、池田を抑えて逆転勝利を飾った。
清澄メンバーは皆喜び次の戦いに向けていく。
俺も努力して個人戦に出たが力及ばず、準々決勝で敗退した。
待ちに待った全国大会、俺はいつものように雑務をこなす。牌譜だったり昼食の用意だったり。人によっては嫌がるだろうがそんな気は起きなかった。
そして、全国の決勝。
並み居る高校を相手に一歩も引かずに咲き達は戦った。
中継された試合は全国に居る麻雀プレイヤー達に固唾を呑み、手に汗にぎる試合だっただろう。
王者白糸台の大将、大星淡に新星の阿知賀、高鴨苦戦しつつも逆転勝利を手にする。
部長達は涙を流し勝利を喜んだ。
大星、それに高鴨、俺は両方知っている。高鴨は和の古い友人で、運動が大好きな奴だ。大星も大会が終わった後咲と仲良くなったアイツの友人。
インターハイが終わり、長野に帰ってきた。ついにこの日がやってきた。地元から長野駅の近くに二人で皆に買出しを頼まれ、出かけている最中に咲が事故にあった日だ。いまでも覚えてる。咲に向かって車物凄い速度で迫ってきた事を。
案の定、車が急接近してきた。直ぐに咲の手を引いて寸での所で間に合う。車が電柱に衝突した。周りの人たちの絶叫が響いたが咲は無事だった。
ついに、ついに……涙が出そうになる。
「危なかったな、咲」
グシャリと何かが割れる音と、重いものが地面に叩きつけられる音。
振り返えると親友が倒れていた。頭から血を、いや頭と言っていいのだろうか、白い何かの破片。
生臭い血の匂い。
親友の頭の上に看板が乗っかっていた。
膝か力が抜ける。
「あ、あ……ああ……ああああああああああああああああああああああ!!」
止めてくれ、止めてくれ。
意識が遠のいていった。
みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。
みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。みーん、みーん、みんみん。
じりじりとした日差しが身体に当たる。皮膚を焼かれているような感覚が身体を襲い、目を覚ます。
少しは我慢しようと試みたが、ついには汗が心地悪くなり身体を起こす。
三回目のループ。
数回ループを繰り返しているので京太郎は少し麻雀が上手くなっています。
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