Steins;Gate/輪廻転生のカオティック   作:ながとし

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最大効率のリブート

 そのあとタイムリープマシンでタイムマシンが壊れる前に飛べばいいという案が出たが、そのタイムマシンが壊れたと思われる原因の大雨が降っていたのが10日の朝、夜明け前から降っていた。

 タイムリープマシンが跳べる限界はどれだけ頑張っても11日の14時まで。タイムリープマシンでは届かない。

 

 橋田至が直してみようと声を上げるが、そうはいかない。椎名まゆりがあと二時間もしないうちに死んでしまうことが確定しているからだ。

 今からラジ館に忍び込んでも残された時間は多くても1時間だろう。直せるはずがない。岡部倫太郎もここまで考えられたのだろう。

 椎名まゆりと橋田至に一万円を持たせてラボから追い出した後こう切り出した。

 

「今から、タイムリープできる限界まで行ってタイムマシンの修理を試みる」

 

「当てはあるの?」

 

「ない。今から修理しに行くよりはましだという程度だ」

 

 そのあと岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖は少し議論した後、タイムリープマシンで跳べる限界まで過去に飛んで、タイムマシンを修理すると言うことへ希望をかけると結論を出したのだ。

 まだ、ジャンクリモコンが使えるように電話レンジ下の穴を広げていないので阿万音鈴羽に頼んで42型ブラウン管テレビの電源を入れてきてもらった。

 

 岡部倫太郎に習い、俺も黙って再びタイムリープマシンのヘッドギアを被る。

 マシンが起動した。

 

 

 8月13日 17時38分

 

      ↓

 

 8月11日 14時21分

 

 

 一度跳んだ後、再び俺たちは跳んでタイムリープマシンが完成する二日前までやって来た。

 阿万音鈴羽に対する説明は岡部倫太郎がやってくれたので、俺は必要以上に疑われることは無かった。

 俺が言うとあんなに不信感を持っていたのに岡部倫太郎が言うと余りに事がさらっと済んだ。……少し心にダメージを受けたが、文句を言ったとしても当然、今の阿万音鈴羽には伝わらないので少しの理不尽さを感じながら、タイムリープという現象を実感した。

 

 そのあと、帰って来た椎名まゆりと橋田至にタイムリープ前と同じことを説明してもらった。

 タイムマシンが今壊れていることも含めてだ。

 

「じゃあ、さっそくラジ館に見に行くべき」

 

 タイムマシンを修理する事に、やる気のある橋田至にみんなついて行こうとする中、椎名まゆりが声を上げた。

 

「ちょっと、待ってー。みんなもう一つ忘れているよー」

 

「もう一つ? なんかあったっけ?」

 

「もー、みんなひどいよー。スズさんのお父さんを探さなきゃいけないでしょー」

 

「……父さんのことは、今はどうでもいいでしょ」

 

 そう言う阿万音鈴羽だったが、椎名まゆりは納得いかないようだった。

 岡部倫太郎も阿万音鈴羽の言うことに助勢しようとしたが、この時間から言うと一昨日の夜。つまり8月9日の夜にやった残念会の時に岡部倫太郎が”ラボメンのみんなで鈴羽の父親を捜す”と約束をしていたらしく、それを言われ岡部倫太郎は椎名まゆりの意見を聞くしかなかった。

 

「あのね、スズさんがここに来たのはね、未来を変えなくちゃいけないーっていうのもあるけど、やっぱりお父さんに会いたかったからかなーって思うのです。もしそうなら、まゆしいは会わせてあげたいのです」

 

 この言葉を聞いて岡部倫太郎は椎名まゆりの意見を飲むしかなくなった。

 

「椎名まゆり、君っていい子だね」

 

 阿万音鈴羽はそう言って顔を隠すように鼻をすする。

 彼女の情報によると、バレル・タイターというのは実際の父親の名前ではなく、レジスタンス時代のコードネームなんだそうだ。

 だから、外国人っていうわけでもなく日本人。でも、本名は教えてくれなかったようだ。名前を娘に言うことすらリスクになる壮絶な時代だったのだろう。

 

 この時間、この場所へタイムトラベルしてきたのも2010年の秋葉原に父親がいたことだけはわかっていたかららしい。

 

 唯一の手掛かりは、父親の形見であるピンバッジ。中央に歯車があしらわれ、それを大きく弧を描いた矢印が貫いている。

 淵には、記念メダルに刻印した時のようなイメージで、”OSHM***AT 7010”と浮き彫られているように見えた。

 すぐに岡部倫太郎が橋田至にググるように言うが、検索結果は海外のよくわからないサイトが出てくるのみだった。

 

 俺は、阿万音鈴羽の父親が誰か知っているが、今言うなんてことはしない。ここから先の時間が、阿万音鈴羽にとって一番幸せな時間だろうと思うからだ。

 

 そのあと椎名まゆりのスズさんのお父さんを探すという採決は、全会一致で賛成となった。

 

 でも、阿万音鈴羽はタイムマシンの修理のめどが立つまででいいと言った。彼女としても椎名まゆりが死ぬことは望んではいないからだろう。

 

 こうして、牧瀬紅莉栖と俺を残してラボメンのみんなはそれぞれの行動に移った。

 岡部倫太郎は、阿万音鈴羽と共にアキバにあるアンダーグラウンドなショップを巡ってピンバッジの出所を探す。椎名まゆりは一人で父親捜し。橋田至はタイムマシンの修理。

 そして俺と牧瀬紅莉栖の役目は前のリープと時間的に大きな差を付けないためにタイムリープマシンの完成を急ぐことだ。

 

 作業を進めていくうちに夜になった。橋田至はラボには帰ってきていない。そのまま帰ったらしい。夜になっても明るくして作業すればいいかとも思うが、あのタイムマシンは常時人の注目を集めている。警察に通報されたらそれで終わりだ。

 

 椎名まゆりの姿もなく、結局帰って来たのは岡部倫太郎と阿万音鈴羽だけだ。

 顔を見る限り、成果はなさそうだ。

 そのあと、岡部倫太郎は橋田至のパソコンを使いピンバッジの情報をBBSに求めることにした。

 明日はその情報をもとに探すらしい。

 

 

 8月12日、6時52分。

 

 牧瀬紅莉栖がソファーで寝ている岡部倫太郎の耳元でアラームを鳴らした。

 もちろん、たまらず飛び起きた。

 

「―――SERNの襲撃か!?」

 

 俺たちの姿を確認すると目をぱちくりさせている。

 

「グッモーニン」

 

 ちっともよくなさそうな顔で牧瀬紅莉栖はそう言った。

 岡部倫太郎は少し迷惑そうな顔をしたが、起こしてくれたことに対して、牧瀬紅莉栖に礼を返した。

 

「岡部倫太郎にはさ、見てほしいものがあって、起こしてもらったの」

 

 ソファーの前にあるテーブルにはニキシ―菅8個で構成されたメーターがあった。ダイバージェンスメーターだ。いつか確認したいと思っていた。

 

「……これは?」

 

「世界線変動率メーターっていうんだ。今、あたし達がどの世界線にいるかを数値で表示してくれる物なんだ」

 

 メータの数字は0.337187。原作と変わりはない。俺は間違ってなかったんだ。

 そんな安心感に包まれた。

 

 話を聞くとやはり、これは岡部倫太郎が未来で作っていたものらしい。でもダイバージェンスメーターの変動を確認できるのはリーディングシュタイナーを持っている者だけで、俺と岡部倫太郎以外には役に立たないという致命的な欠陥を抱えていた。これも正しく未来ガジェットの一つと言えるだろう。

 感心していた牧瀬紅莉栖はすぐに呆れの表情に変わった。

 

「でもそいつ、あたしがこの時代に来たころなんだけどさ、表示がちらついてたんだよね。今は安定してるみたいだけど、もしかしたら壊れてるかも」

 

 原作と同じ数値を表しているのだから壊れてはいないはずだ。大方、タイムトラベルしてきた影響だろう。

 

「で、このメーターを俺に見せた理由は?」

 

「このメーターが1%を超えたとき、君はβ世界線にたどり着いたことになる。ディストピアが回避され、椎名まゆりが救えるんだよ」

 

 あとたった0.6%ほど、しかしこのメーターには小数点以下が六つあるのに対して十の位がない。世界線を変えることの難しさを物語っていた。

 

 それから再び岡部倫太郎は阿万音鈴羽を連れて外へ出て行った。父親探しにいったのだ。

 

「さぁ、瀧原。私達も頑張りましょうか」

 

 俺たちは再び作業に戻った。

 

 

 8月13日。

 

 岡部倫太郎がラボにこもっている。昨日の椎名まゆりの話によると何でも警察に一時間ほどこってりと絞られたらしい。その原因は椎名まゆりが父親捜しのためにビラ配りをしていたのだが、誘拐事件と銘打っていたのがまずかったらしい。

 それに、この日は岡部倫太郎が怪しい外国人の露天商から手に入れた情報、ピンバッジの制作を頼んだ人物を確かめるためにタイムリープするつもりのはずだ。

 

 俺と牧瀬紅莉栖は予定の通り、午後2時ごろにタイムリープマシンを完成させた。

 直ぐに岡部倫太郎が跳ぼうとしたが、俺は止めた。

 

「何故止めるんだ。俺はタイターのピンバッジについて重要な手がかりを掴んだ。それを確かめに行くのだ。というかお前は一緒に跳ばないのか?」

 

「今回、僕は跳ぶ必要はないんです。それにまたタイムリープマシン制作するのは骨が折れますよ……。まぁとにかく夕方までは待ってほしいんです。いつ飛んだって岡部さんからすれば変わらないはずでしょう?」

 

 そう言って夕方まで待ってもらった後、8月11日の6時30分ごろに着くようにタイムリープマシンを設定して跳んでもらった。

 

 直後、予想通り、主観的な瞬間移動が起きた。場所はラジ館の8階。ドクター中鉢の記者会見が行われるはずだった場所だ。壁には大きな穴が開き、それを埋めるようにしてタイムマシンが鎮座している。下から見たときには分からなかったが、マシンに幾つもの亀裂が見られた。

 

「そうだ、これあげるよ」

 

 そう言って取り出したのは阿万音鈴羽自身が、父親の形見と言ったピンバッジだった。

 状況的に見れば、タイムマシンの修理が完了して阿万音鈴羽がもうじきタイムマシンで1975年に跳ぶころだろうか。

 

 橋田至の機転により、阿万音鈴羽ピンバッジのデザインを元にしてラボメン全員分を作るということになり、ピンバッジは阿万音鈴羽の手元に残った。

 

 それから、椎名まゆりによる重大発表が行われた。

 橋田至が阿万音鈴羽の父親だと言うことを見事に証明して見せたのだ。始めはみんな疑いを持っていたが、ピンバッジの記号の意味。

 

 Oは岡部、Sは椎名、H橋田、Mは牧瀬、Aは阿万音、Tは瀧原だというと途端に納得したように話を聞いていた。

 

 そして何よりも、タイムマシンの名前”FG204 2nd EDITION ver.2.34”というのが決定的だった。それは正しく橋田至のネーミングセンスだったからだ。

 阿万音鈴羽は橋田至に抱き着いた。

 

「父さん、あたし……来たよ。父さんが作った……タイムマシンに乗って」

 

「うん」

 

「父さんが託してくれた使命……あたし、ちゃんとやり遂げるから……」

 

「うん」

 

「だから、ちゃんと見ててほしい」

 

「うん、見てるよっ、絶対、見逃さないから!」

 

 泣きそうな顔で阿万音鈴羽はまだ橋田至に抱き着いている。

 たまらず、橋田至が未来のお嫁さんのことについて聞くがはぐらかされた。阿万音鈴羽の容姿を見る限り、橋田至の希望通りなのはわかっているだろうに。

 

「じゃあ、そろそろ行くよ」

 

 覚悟を決めた顔でそう言った。岡部倫太郎が父親と積もる話はないのかと引き留めるが決意は固いらしい。

 

 しかし、このまま行かせてしまっていいのだろうか。俺はこの先の事についても知っている。過去に行って失敗して、失意のうちに自殺する。

 今から岡部倫太郎に、尾行メールの打消しをさせるか?

 

 ダメだ。それではこの数日間の思い出が消えてしまう。この、父親との奇妙な再会さえも消えてしまう。

 俺はどうする?

 

「未来の運命は君たちにかかってる。あたしは使命を果たして必ずこの秋葉原に戻って来るから……」

 

 原作の流れを捻じ曲げてもいいのだろうか。俺は……

 

「……お願い―――」

 

 俺は……

 

「未来を―――」

 

 原作を……

 

「変えてほしい」

 

 ―――変えるんだ。

 

「……待ってください。阿万音鈴羽さん」

 

「何? 瀧原浩二。行くなって言われても私は絶対に行くよ」

 

「いえ、これからあなたは過去に行っても使命を思い出せずに失敗して自殺します」

 

「なッ! 何でお前なんかに分かるんだ!」

 

 俺の言葉に阿万音鈴羽は激昂する。

 

「ちょっと!瀧原! 冗談じゃ済まされない事言ってるわよ! あんたはそれを分かって言ってるの」

 

「はい。牧瀬さん。これは事実です」

 

「いいかげんなこと言わないでよ! あたしはいかなくちゃいけないんだ!」

 

 タイムマシンに飛び乗ろうとする阿万音鈴羽を岡部倫太郎は止める。

 

「待て! 鈴羽。こいつの話は一度聞いたほうがいい。何故だか知らんが瀧原は予言ができる」

 

 阿万音鈴羽はよろけるようにその場に崩れ落ちた。

 

「僕の言っていることはラボに戻れば正しいと証明されます。皆さん行きましょう。嘘ならばそのあとすぐに跳べばいい話です」

 

 俺の言葉によってみんなでラボに帰った。

 帰る最中、誰も口を開かない。誰だってこんなことは認められないからだろう。

 

 ラボについて数分。ドアをノックした後、ヌッと天王寺裕吾が現れた。阿万音鈴羽がいることに対してなにさぼってるんだと怒鳴り声をあげたが、俺が呼んだことにしてやり過ごした。

 岡部倫太郎と少し話した後、手紙を残して去って行った。

 

 岡部倫太郎は封を空け、それぞれに聞こえるように読み上げ始めた。

 その手紙は、絶望の色に塗りたくられ、聞いていてこちらの気持ちをも引きずり込んでしまうほどの物だった。

 

「―――こんなっ……人生は無意味だった……」

 

 岡部倫太郎が読み終えた途端に阿万音鈴羽は泣き崩れる。

 

「あたしはどうしたらいいって言うのよ……」

 

「安心してください。まだ手段はあります」

 

「……手段ってなんなの?」

 

「タイムリープマシンを使うんです」

 

「でも、タイムリープマシンでは雨があった朝まで届かないはずじゃ……」

 

「牧瀬さんと阿万音さんの二人で跳んでもらうんです。あの日に向かって。そして牧瀬さんにはタイムリープマシンを完成させる時間をもっと早くしてもらいます」

 

「……なるほど、過去へ梯子を掛けるように、タイムリープマシンで届くようになるまで完成する時間を早めろって言うのね?」

 

「そうです」

 

 牧瀬紅莉栖にはとても負担がかかる話だ。しかし、俺が過去に行くよりもよっぽど成功率は高いだろう。

 阿万音鈴羽は泣きながらも立ち上がる。

 

「あたし、行くよ。そこに希望があるって言うのなら」

 

「私も、跳ぶわ」

 

 牧瀬紅莉栖も覚悟を決めてくれたようだ。

 

 俺はタイムリープマシンの設定は最大の48時間に設定した。

 もう2人はヘッドギアを被っている。

 

「済まない……」

 

 俺のしたことは脅しだ。未来の現実を突きつけて、言う通りに跳ばざるを得ないようにしたのだ。

 

「いいんだよ。瀧原浩二、これは君なりの最善策ってやつなんでしょ? あたしはこの時代の思い出をもって過去に行けるんだ。感謝することはあっても、謝られるようなことは無いよ」

 

「済まない……」

 

 俺はタイムリープマシンを起動させる。

 青い放電現象が始まった。阿万音鈴羽の目は赤いが笑顔で俺を見ている。

 

「それじゃ、行ってくるね」

 

 阿万音鈴羽の指が携帯のボタンに添えられて押された。

 

 視界が縦と横に大きく引き伸ばされ、そして縮む。あの存在自体がぼやけるような感覚も俺を襲った。

 俺と岡部倫太郎は世界線移動を観測した。

 

 俺の隣には岡部倫太郎がいた。ここはラボのようだ。俺たち以外のラボメンは何事もないように過ごしている。

 

「変わったのか?」

 

「そのはずです」

 

 談話室のテーブルからダイバージェンスメーターは消えていた。牧瀬紅莉栖と阿万音鈴羽はあの無茶な作戦を成功させてくれたようだ。

 

「……岡部さん。話があるのでちょっと外に歩きに行きませんか。大丈夫です、椎名まゆりの死は今日は来ません」

 

「別にいいが、その話本当なんだろうな?」

 

「はい。信じてください」

 

 岡部倫太郎を連れてやってきたのはラボの近くにあった公園だ。

 俺は未だに話を切り出せずにいると岡部倫太郎が問いかけてきた。

 

「それで、話ってなんだ」

 

「……これはいわば遺言の様なものです」

 

「何?」

 

「岡部さんが最初に一人でタイムリープした原因は何でしたか?」

 

「ラウンダーに襲撃されてだ。たしか俺はお前に庇われてタイムリープに成功した」

 

「そうですか、……僕はそんなことをしてたんですね。……この後、具体的には8時前に岡部さんをかばった僕に上書きされて消えます」

 

 もうそんなに残された時間はない。

 

「消える……!? リーディングシュタイナーのせいか!」

 

 リーディングシュタイナー。それは世界線を越えて記憶を継続する力。別の言い方をすれば移動した世界線にいた自分を塗りつぶしてしまう力。

 

「そうです。せめて岡部さんには、この数日間僕が……元の瀧原浩二とは違うこの俺が……確かに此処にいたことを覚えていてほしいんだ」

 

 岡部倫太郎をかばった瀧原からすれば、岡部倫太郎がタイムリープした直後にリーディングシュタイナーが発動するわけだ。つまり元々この世界線にいたこの俺は別の世界線の瀧原に上書きされるということになる。

 

「瀧原……」

 

「これが、報いなのかもしれない……神でもないのに世界を変えようとした事に対する。でも安心してくれ、この俺が消えても、移動してくる瀧原浩二が岡部を助けてくれるから」

 

 素が出ている、もう取り繕うことすらできない。

 涙が止まらない。自分が消える恐怖。俺とは違うもう一人の俺がこの体に入り込んでくるという不快感。逃げ出したかった。でも、逃げられない。

 

「でも、俺がこんなになって消えたことはこれから来る瀧原浩二には言わないんでほしいんだ。きっと俺は動けなくなるから……」

 

 俺は岡部の手を握る。暖かい。

 

「それじゃあ岡部、また何処かの世界線で会おう」

 

 できるだけ笑顔を意識して別れを告げる。きっと歪な笑顔だろう。

 

「瀧原っ! 待て!」

 

 俺は走った。秋葉原の人ごみに紛れて岡部倫太郎を撒くまでにそう時間はかからなかった。

 

 時刻は19時53分。俺の足は止まった。

 

 




-追記-

何度も誤字報告ありがとうございます。

17/04/26/19:26
わかりにくいので少し書き直しました。今後も物語に影響のない範囲で、内容を変えるかもしれません。
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