Steins;Gate/輪廻転生のカオティック   作:ながとし

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主観移動のアニクスペクティド

 あの日から俺は数えて4回の大きな世界線移動を”瞬間移動”という形で実感していた。

 あり得ない事ではない。全て世界線においてすべての俺が同じ行動をしているわけではないのだから。

 

 一度目は目の前に金が現れた。総額70万。これはおそらく原作中で書いてあった宝くじのナンバーを利用して手に入れたロト6の三等の賞金だろう。まぁいずれにしても買う予定だったから何も問題はない。

 それにしても70万か、やはり俺もチキンだったと言うことだ。

 

 後の、二度目と三度目は主観的な瞬間移動はしているものの変化は少なかった。

 

 そして四度目。

 

「ニャッ。たきニャンはつぎはどうするのかニャン?」

 

 瞬間移動まではいい。いつも突然だが慣れたものだ。

 

「なな、フェイリスたんが押されている……だと?」

 

 壁一面がガラス張り。街のビル群が作る少し歪な地平線。今座っているソファーもフカフカ。

 

「ううー、コウ君がんばってー。まゆしぃの仇をうつのです」

 

 目の前には雷ネットの盤面。対戦相手は猫耳娘フェイリス。

 

「どうしたのかニャ。早く次の手を打つニャ」

 

 世界線移動して取り乱している岡部倫太郎も気になるが、今は雷ネットを何とかしなければ。自分の配置したカードの種類さえわからない。でも諦めるな。この世界線の俺の思考をトレースしろ、いつだって俺は変わらないはずだ。

 

なら……このカードを―――

 

 

「やったニャー!」

 

 負けた。為されるがままっていうわけじゃ無い。リンクとウイルスのカードの位置はほぼ考えていた通りに配置されていた。

 互いにターミナルカードを使い、試合は全くの運にかけられることになったのだ。

 

「いやー、瀧原氏がフェイリスたんとこんなにいい勝負をするなんてびっくりだお。弟子にしてください!」

 

「それにしても、たきニャンはどんな考えをしてるのかニャ? 途中から全く先が読めなくなったニャ。さすが凶真が認める謎の男ニャ。今度の大会に一緒に出てほしいくらいだニャン!」

 

「うはー、フェイリスたんに雷ネットパートナーとして誘いを受けるなんてマジ裏山。僕に変われ!」

 

「でもでもー、ダル君はフェリスちゃんと、ここまでいい勝負したことあるっけー?」

 

 椎名まゆりの子供の様な純真な疑問により橋田至は崩れ落ちた。

 

「でも、さすがフェイリスたん。どんな強敵でも倒してしまう、そこにしびれる憧れる!」

 

「当たり前ニャ。それに今度の大会で優勝するってパパに約束したのニャ! たとえ、たきニャンの様な強者でも負けるわけにはいかないのニャン!」

 

「パパ?」

 

 椎名まゆりの問いにフェイリスはしっぽをぶんぶんと振り回しているかのようにうなずいた。―――犬娘ではなく猫娘であるのだが。

 

「フェイリスが優勝したらどんなに仕事が忙しくてもフェイリスのために時間を作ってお祝いしてくれるってそう約束したのニャン!」

 

「僕も全力で祝福したいのだがその日―――」

 

 セクハラ発言はあまり見逃すべきではないだろう。阻止しよう。

 

「―――その日の夜はパパと二人でお食事。ですよね。フェイリスさん」

 

「ニャニャ! 何で知っているのかニャン!?」

 

「ちょ、また例の超能力ってやつなのかお!」

 

「……超能力ニャ?」

 

 橋田至が以前俺がやったマジックみたいな予知のことをフェイリスに説明した。そして予想通り”チェシャ猫の微笑”を持っているのかと聞かれ、笑ってごまかしているうちに椎名まゆりが話を進めてくれた。

 

「ぜったい、決勝戦はラボのみんなで応援にいくからねー」

 

「ありがとニャー♪」

 

 決勝戦は『ヴァイラルアタッカーズ』というコンビと当たる。これも変わっていなかった。フェイリスのライバルであった『イディヨナ』もそいつらに負けているようだ。少しばかりびっくりしたが、どうやら無事に世界線移動したようだ。

 話の流れはフェイリスの優勝を応援するといったものになっていた。

 

 その時ドアがノックされた。

 出てきたのはカッコイイ初老の男性。街に出たら『オジさま』と周りの注目を集めそうだ。

 

「失礼。留未穂、少しいいかね?」

 

「あ、パパ」

 

 サッと立ち上がるとそのパパと共に隣の部屋に出て行った。

 

「あれが、フェイリスのパパさんか。もしもの時ために挨拶しに行った方がいいのかな」

 

「フェイリスちゃんのパパさん社長さんなんだってー」

 

 話しているとフェイリスはすぐに戻って来た。

 

「ごめんニャ! フェイリスはパパと外に出かける用事ができたのニャ」

 

「それじゃ、そろそろおいとまさせてもらうお」

 

 記憶が確かならここでダルがまたセクハラ発言擬きをしたのだがさっきので懲りてやめたのだろうか?

 

「オカリン、そろそろ帰るよー」

 

「ああ」

 

「それにしても、凶真はやけに静かだったニャン」

 

「岡部さんにはほかの人にはわからない悩みがあるんですよね?」

 

 岡部倫太郎以外はきょとんとしているが彼には俺の言わんとしていることは分かったのだろう。

 

「ああ、その通りだ。……瀧原よ後でしっかりと事情は聴かせてもらうぞ」

 

「お手柔らかにお願いするよ……」

 

「オカリン……今日も意味不明ナリ」

 

 フェイリスについて行って玄関まで行った。俺の主観的にはこの家に入ったことすら記憶にないわけだから。

 リアル執事さんとフェイリスパパ名前は確か―――秋葉幸高さんも玄関まで見送りに来てくれた。

 ”また来なさい”との紳士な言葉にさすがオジさまと言いたい。

 

 岡部倫太郎らと共に出て今歩いているのは秋葉の駅前。

 さすが秋葉だ。様々な人たちがごった返すように歩いている。ビシネスマンと思われるスーツの人や外国人が大きな荷物をもっていたりとこの街のごちゃまぜ具合はいつも驚かされる。

 椎名まゆりがふらっと駅の方向に歩き出した。意識してても自然すぎて見逃すところだった。

 

「椎名さん何処へ行くんですか?」

 

「ん? まゆりがどうかしたのか瀧原」

 

「いえ、ただ駅へといきなり方向転換したので」

 

「全く気付かなかったお。まゆ氏の気配を消していなくなる能力は異常」

 

 椎名まゆりはこの技能? で岡部倫太郎をいつも困らせているんだっけか。

 

「家に帰るついでに中野に寄って行こうと思って。そのことで頭がいっぱいになっちゃってごめんねー」

 

「そもそも中野に何の用事があるのだ?」

 

「あのね、昨日、『哀ソード』の同人誌が出たんだ―」

 

「エロ?」

 

「ううん。でもね絵師さんは甲賀ゆいさんなんだー。まゆしぃは久々に本気を出さないといけないんだよ」

 

「へー。甲賀ゆいって去年のガンバムのキャラデザだったような。僕のぶんも買っといて」

 

「分かったー」

 

「おいおい、お前たち何を言っているんだ。同人誌ならそこにある店で……あれ?」

 

 やっと気付いたらしい。

 

「ない……ない? まさか萌え系ショップがすべて消えているのか!?」

 

「ちょ、オカリン萌え系ショップはないお。秋葉は電気街。万が一そういう系の店ができたらすぐに暴動が起きるレベル」

 

「なぁ、瀧原。お前はここにショップがあったことを知っているよな?」

 

「知っています」

 

「瀧原氏も何言ってんの。ここに萌え系ショップなんてあったはずがないお」

 

「いいから黙っていろダル。瀧原、今すぐ事情を話してもらおうか」

 

 

 椎名まゆりはそのまま駅へ、俺と橋田至は岡部倫太郎によって未来ガジェット研究所へ連行された。

 ずっとお留守番していたらしい牧瀬紅莉栖も交えて話が始まった。

 

「で、岡部が言うそのリーディングシュタイナーってのが瀧原さんにもあるっていうの?」

 

「その通りだ助手よ。これで俺の妄言だという可能性は消えたな」

 

「私は瀧原さんに聞いてるの。岡部はちょっと黙ってて」

 

「はい。確かに僕もそのネーミングはどうかと思いますが確かに世界線を移動してる記憶はあります」

 

「秋葉原はもともと、つまり岡部たち主観の過去では萌の聖地だったってことか……」

 

「僕はいまだに信じられないお、でもフェイリスたんの店があったら常連になってるのは間違いないだろうから少しは理解できる罠」

 

 俺はなぜフェイリスの店、メイクイーン+ニャン2が無いのに橋田至がラボメンとなっているのかが信じられない。

 橋田至を動かすほどの物がここら近辺にあっただろうか? ブラウン管工房? ないない。

 

「それで、そのフェイリスさんが送ったDメールの内容は何なの?」

 

「分からん」

 

「え?」

 

「だから、分からんと言っている」

 

「ちょっと、岡部。あんたの話では実験として参加させたのよね」

 

「ああ、しかしまんまと猫娘にしてやられてな。ダルとまゆりの反逆もありDメールの中身を確認しないまま送信させてしまった。そして、秋葉から混沌が薄らいだ……しかし案ずるなクリスティーナ。二人目の魔眼適合者が現れた今この鳳凰院凶真に敵はいないっ!フゥーハハハ!!」

 

 牧瀬紅莉栖は呆れ顔で”ダメだコイツ早く何とかしないと”等とつぶやいた。

 ラボメンたちに「え?」と聞き返されるも顔を赤くしながら強引に話をつづけた。

 

「とにかく! 岡部はDメールの危険性について十分に理解しているはずじゃない! それでもサイエンティストなの?!」

 

「うるさい! 俺はマッドサイエンティストだ! って今は俺じゃなくて瀧原について聞くときじゃないのか? 趣旨を間違えるんじゃない助手よ」

 

「っ……そうね。確かに岡部の言う通りね。で、瀧原さん率直に聞きますがあなた、何を知ってるんですか?」

 

 ここはどういうべきだろうか。ほとんど正直に話してもいいんじゃないだろうか。

 

「ここから先、岡部さんが辿る可能性世界をいくつか知っています」

 

「どういうことだお?」

 

「橋田さんに解かりやすく言えばヒロインルート全攻略済みってところでしょうか?」

 

「おk把握」

 

「ちょっとまって、つまりあなたは未来から来たとでも言うの?」

 

「まさか、お前がこのジョン・タイタ―なのか!?」

 

 興奮したように岡部倫太郎が座っていた椅子から立ち上がる。

 そして携帯を取り出してジョンタイターとのメールを俺に見せる。

 

「いいえ、ジョン・タイターは別の人です。そして未来人でもありません。……いえ、もしかすると未来人は半分アタリかもしれません」

 

 一応ここは2010年なのだから前世の俺からすれば過去に当たるだろう。

 

「取り敢えず僕が言いたいのはこれから起こることに対してどういうことをすれば回避できるかについて助言することがあります。その時は理解できないかもしれませんが従ってほしいんです」

 

「……なるほどね。前に私たちの考えを当てて見せたのも全部今日のお願いのための布石というわけね。納得した」

 

「ならば、その起こることについては教えてはくれないのか?」

 

「たぶん……瀧原さんはこれからの事は言えないはずよ。私達とこうして話すのもリスクなのかもしれない。その未来で起きたことと違う行動をすればそれだけ瀧原さんは未来を予測できなくなるもの。そうですよね」

 

 ……さすがだ。何というかこっちが心を覗かれている気分になったぞ。

 でもこれだけの頭脳がこちら側についているんだ。俺の世界の収束との戦いももう終わりが近いのかもしれない。




-追記-

メイクイーン+ニャンの後に二乗の2を付けていたのですが表示されない場合があるらしく、普通の2に代えさせてもらいました。
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