鬼道衆最強、のんびり鬼道長さん   作:もちふじ

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また投稿。やる気に満ち溢れています。
・・・これがいつまで続くか分かりませんが。


犬猿の二人

九 花厳は基本的に温厚で友好的な男だ。多少だらけたところはあるものの、それも人に不快感を与える程のものではなく、少なくとも嫌われるタイプの者ではなかった。

 

ただし、例外もある。

筆頭としては十一番隊、主に隊長の更木剣八。副隊長の草鹿やちるはそうでもないのだが、彼は花厳のことを毛嫌いしている。

 

もとより戦闘部隊である十一番隊は、自分自身には大した力がなく、味方の背に隠れてちまちま攻撃するような鬼道衆のことが気に入らない。多少の偏見はあるものの、まぁ彼らの考えはあながち間違えではない。

鬼道衆の殆どは剣の才能がなく、真央霊術院を卒業後行き場を失くしたところを花厳に拾われた者ばかりだ。特別何か功績を挙げた訳じゃないし、鬼道長である彼を除いては戦闘能力は護廷十三隊の足元にも及ばない。

 

彼の噂は耳にすることが度々あった。所詮は鬼道長とはいえ、強いなら構わない、戦って見たいと思ったのだ。

が、本人を見て目を見張った。剣八はその時のことを今でも覚えている。いや、死んでも忘れない。

 

──なんだ、このモヤシ野郎は。

 

身体は細く、肌は女と見間違うほど透けるように白い。金色の瞳はやる気が無さそうにぼんやりとしている。加えて言うと喋り方は阿呆みたいで、見ているこっちの気が抜けそうだ。

ヘラヘラ笑う、ペラペラした身体の男。強さの欠片も感じない。剣八より随分前から死神だったらしいが、よくこんな奴が生きていられるものだ。

 

とにかく、出会った頃から更木剣八は九花厳のことが気に食わないのだ。その思いは今でも変わっていない。

 

 

「おー、更木くんじゃあねえですか。久しぶりでさぁ」

 

 

なのに、こうして本人は相変わらず何も考えていないようなアホ面で話しかけて来るものだから、剣八の苛立ちは募る一方だ。

ただでさえ、いきなり隊首会に集められ気が立っているというのに、その上世界一嫌いな相手と出会ったのだ。機嫌が悪いなんてレベルじゃない。

 

「・・・チッ、なんでてめえがこんなとこにいんだよ」

「なんでって・・・。そりゃあぼくも今回は隊首会に参加するからでさぁ。知らなかったんで?」

「ああ!?」

 

初耳だ。実際は伝えられていたが、忘れているだけなのだが。目に見えて、剣八の不機嫌さに拍車がかかった。

 

「てめえなんざいらねえんだよ。とっとと帰りやがれ」

「や、ぼかぁ元柳斎さんに呼ばれて来てんで、そんではい帰りますとはいかんでしょうや」

 

花厳とて帰っていいならば、今すぐ帰って布団にダイブしたいところだが、そんなことしたなら拳骨どころでは済まないことは分かっているので帰るに帰れない。せめて何が起こっているのかくらいは知っておかねば。

 

「くそが、ついてくんじゃねえよ!モヤシ野郎!」

「行き先が同じなんだから、ついてくつもりじゃなくとも、そうなっちまうでしょうや・・・っ、うわ、」

 

腹立たしさをついに行動で示し、花厳の胸ぐらを掴むと珍しく彼から驚いた声がでる。気の短い剣八にしては、これでもよく我慢した方だと思う。

見た目通りに軽い花厳の身体はアッサリと引き寄せられ、剣八の方が身長が高いこともあり、僅かに地面から足が離れる。

 

「けっ」

 

昭和のヤンキーのように、唾を吐き出してから乱暴に花厳から手を離し、大股で去っていく。

いきなり支えを失った花厳はその場でコテン、と尻もちをついた。何とも無様である。

しばらく惚けたようにパチパチと瞬きをしてから、着物を直しつつ立ち上がって一言。

 

「更木くん、そっちは一番隊舎とは方向が逆なんじゃあ・・・」

 

そんな花厳の声は彼には聞こえておらず、剣八が道に迷ったと気づくのはもうしばらく後である。

 

 

■ ■ ■

 

「なんだったんでさ、彼は」

 

花厳は後頭部をポリポリとかきつつ、呟く。怒鳴り散らすだけして、消えてしまった。出会い頭になんて失礼な男だ。虫の居所でも悪かったのだろうか。まさか生理か、なんて考えてもみたが、剣八は男だ。そんなわけが無い。

だとしたら、やはり嫌われてるのだろう。これで花厳は意外にメンタルが弱い。人から嫌われればそれなりには傷つくのだ。

 

「おやおや、相変わらず更木隊長とは仲が悪いのかい」

「・・・京楽さん」

 

聞き覚えのある声に振り返ると、頭に藁でできた笠を乗っけた男性が歩いてくる。女物の半纏が特徴的な彼は、八番隊隊長の京楽春水。余談だが、女ずきな事で有名である。

一部始終を見ていたらしい京楽に、花厳は器用に渋い顔で笑う。

 

「仲が悪いっつうか、あっこさんが一方的にぼくのことぉ嫌ってるだけでさぁ。ぼかぁ、ああいうギラギラした人が苦手ってぇだけで」

「うーん・・・。花厳くんも、もうちょっとこう、覇気を持ったらどうだい」

「数百年生きてきて、今更性根を直せっつうのは無理な話でしょうや。・・・・・・そもそも、あんたさんに覇気を持てとか言われたかぁないですわ」

 

覇気のあるないでは、京楽も花厳と似たり寄ったりだと思う。

どうも、根っこが似たもの同士である二人の仲は良さそうだ。年齢は京楽の方がいくらか上だが、これだけ生きているとあまり差がないのかもしれない。

 

「そいじゃあ、いつまでもくっちゃべってると山じいに怒られちゃうから、そろそろ行こうか」

 

花厳の薄っぺらい背中を、元気づけるように叩いて隣合って一番隊舎へ向かのだった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

「ちょっとー、いい加減元気出しなさいよ。花厳くん」

「・・・別に、いつも通りでさぁ。ぼかぁ、ただの腰抜けモヤシ野郎なんで」

「ハイハイ、不貞腐れないでね」

 

 

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