うちの女子バスケ部がヤバイ   作:小野芋子

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遅れました。
遅れておきながら番外編的なものを投稿します。


言い訳するなら、話自体はこっちの方が先に出来てたんです。けどバットエンドすぎて投げました。けどいつかは書く。ならばハッピーエンドの後にバッドエンドの作品を書くよりバッドエンドの後ハッピーエンドの作品を書いた方が(作者の気持ち的に)良いんじゃないかと思ったんです。

結論、私は悪くない(現実逃避)

っと言うわけで本編ではなくこちらを先に書いていきます。投稿は割とサクサク……サクサク?

走りはしないが早歩きくらいの速度で投稿できると思っております。本編を期待していた方々には深く謝罪を。


うちの男子バスケ部は当然ヤバイ
うちの男子バスケ部は当然ヤバイ


リングを揺らすボールの音、シューズのスキール音、飛び交う怒声、歓声。学校の規模からすれば明らかに小さいといえる体育館を包むのは全校生徒の約三分の一かそこら。詳しい数値を取ったわけではないが館内を埋め尽くさんとする熱気が、興奮が、本来館内にいる人数を倍かそれ以上だと誤認させる今、正しい数字には大した価値はないだろうと吐き捨てて、大人しく視線を目の前の青い髪の獣の如きバスケットボールプレイヤーへと移す。一方の相手は僅かとはいえ視線を逸らしたことが気に障ったのか、つい数秒前より鋭くなった視線で射るようにこちらを睨んでいる。

やれやれ全く、油断していたわけではないと言えばこの目は少しはマシになるのだろうか。いや、明らかに愚問だ、無駄といっても良い。そんな言い訳めいたことを言ったところで攻撃が鋭くなるだけ。ならば態々口を開くことは無い。ただでさえ乱れている呼吸を会話によってさらに乱せば目の前の黒豹の顰蹙を買うことは必定。ならば黙って最善を行おう。

 

回ってきたボールを構え油断なく周囲に目を向ける。素人数人の動きが視界に入り些か苛立ちが募るがそう言うものだと自らを納得させて、今度は対峙する獣を見る。互いに油断はない。慢心も怠慢もない。実力が拮抗しているのは過去の経験から知っている。同時に今の俺は一対一に拘るつもりがないことも当然あちらは気付いている。故に相手に油断はない。隙を見せずその目は只管にボールを追っている。

 

 

つまり、俺の勝利だ。

 

「———ッ!」

「——行け!」

 

その言葉が届くと同時、否、届くよりも遥かに速く全てを置き去りにして走り抜ける。目の前の獣に動きを一瞬でも止めてくれた燻んだ灰色の髪を持つ友人への感謝は後でいいだろう。勢いを落とすことはなく、されど前方へと向けていた速度全てを両足をバネのようにして上空へと軌道を変え、小賢しくも伸ばしてきた二本の腕を軽く躱し、重力に逆らうことなく地面へと吸い込まれる寸前に目の前まで迫って来ていたリングに右手に持つボールを叩き込む。

危なげなく着地を終えると、僅かに遅れて聞こえるのはコートを跳ねるボールの音。

 

 

瞬間歓声が湧いた。

 

 

 

 

 

 

「さて、たかだが球技大会でクラスメイトをガン無視して全力で勝負をした白鳥、青峰、灰崎、何か言い訳はあるか?」

「「「こいつが悪い」」」

 

言うと同時にお互いがお互いを指差すアホどもに愛の鉄槌が下される。飛び交う星、迎えに来る天使、なんだエデンをここにあったのか(白目)

そんな思考を悟ったのか、或いは単に殴り足りないのか(恐らく後者だと思われる)再度振るわれた愛(笑)の鉄槌(理不尽)に今度こそ体は限界を迎え、鈍い音を立てながらコートに沈む。三人の大男が同時に倒れ臥す様は側から見ればさぞかしシュールだろうなとは思うが、当事者たるこちらから言わせれば身長など真の強者を前にすれば『何見下してんだ?あ"?』と言われのない言いがかりをつけられるだけでしかない。あとはイケメンな同級生の頭皮が以外にヤバかったという世にも無残な真実を告げられるだけ。

 

「なんだ身長高くても何も良いこと無いじゃないか。その点赤司と黒子はいいよな、身長ひくゴパッ!」

 

地面に伏しているのをいいことに容赦のない蹴りが炸裂する。辛うじて赤司の蹴り(先端にハサミらしき何かがあったがきっと気のせい)は防げたが、そのせいで生まれた隙をついて黒子から容赦のない掌底が放たれる。成る程いいコンビネーションだ。少なくとも同級生に向けるべきものでは無いと思うけれど。

 

「白鳥くんは相変わらずバカですね」

 

無表情でこちらを見下ろす、否、見下すのはバスケ部マネージャーを務める一人の儚げな少女。黒子テツナその人である。無表情は彼女とその兄の専売特許故、別段今のシチュエーションが特別であると言うわけでは無いのだが、何故か体を悪寒とは違う何かが走り抜ける。分かりやすく言い換えればゾクゾクする。成る程これがゾーンか(歓喜)

などとバカなことを考えていたのが悟られたのか、或いは知らず俺と言う人間がサトラレになっていたのか先ほどよりも容赦のない黒子(兄)の一撃が脇腹を襲う。名をイグナイトという必殺の掌底であるが、残念。コンビネーション攻撃ならばまだしも単独での攻撃は当たらない。危なげなく地面を転がり躱しつつ(地面を転がりながら躱すことは危なげなくである、いいね?)すぐ様態勢を立て直そうと腹筋と腕に力を入れ、るがどういうわけか背中に違和感を感じるだけで立ち上がれない。なんだなんだとそちらに目を向ければこちらを見下ろす赤い髪の魔王がそこに。なんだやっぱりコンビネーションアタックじゃないか(歓喜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チーッス!すんません掃除で遅れました!」

「遅れたのは黄瀬チンがファンの子に囲まれてたからでしょ〜」

「ちょっ!紫原っちアイス奢るから黙っててって言ったじゃないっスか!」

「あれ?そうだっけ?ごめんね〜」

 

少し抜けた間延びした声と、元気だけは伝わる若干イラっとする声が体育館に響き渡るが、いつもなら来る『うるせえぞ黄瀬ェ!』という理不尽な叱責はない。不思議に思いつつ二人が中を覗けばそこには青い髪にガングロの遺体と灰色の髪のDQNの遺体。そして現在文字通り死体蹴りされている純白の髪に運動選手らしからぬ白い肌の優男(自称)の遺体と計三つ。更にその遺体を椅子にして会話をする赤い髪の魔王と水色の髪の悪魔。もはや怒りは冷めたのかメニューの確認をするアヒル口が特徴の主将と、何やら可笑しなものを手に持ちながら、何食わぬ顔で主将と会話する緑髪の美形。

少し離れた所ではドリンクやタオルの準備に勤しむ桃色の髪の長い美人なマネージャーと、パッと見ただけでは見つけられないだろう影の薄い、されどその中身は超絶男前な儚い系の水色の髪のマネージャー。

 

なんだいつもの光景か。

 

初めてそれを目撃したのならば二度見どころか三度、四度と目で追ってしまいそうな光景ではあるが、バスケ部レギュラー陣からすれば最早慣れたもの。中学最強。天才の巣窟。キセキの世代(+α)。彼らを継承する呼び名は多いが、きっと彼らを恐れ、尊敬するバスケ関係者はこんな馬鹿げた光景が日常になっていることは知らない。なんて事はない、なんと言われようと、どれだけ持て囃されようと、結局彼らは単純にバカな事が大好きな中学生でしかない。ただそれだけのこと。

 

そんな彼らに一つ言葉を送るならば

 

「やっぱうちの男子バスケ部はヤバイ」

「「黙れ椅子」」

 

「……………あい」

 


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