たった一つの望み   作:#1106

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お久しぶりです


ファーストコンタクト

ところ変わって鉄華団の本拠地イサリビ。

傾斜した艦内で、オルガの命で作業が進められていた。

それは「敵からの逃走」にほかならない。

モビルスーツではなく、かといって見たこともないナニカ。それが敵であることは自明だ。団員が数名殺されている。敵で間違いないし、もし敵対の意思がなくとも、落とし前を付けさせなければならない。

この場所の地図などあるはずも無く、とりあえずナニカに遭遇したのと反対方向に行こうという、ざっくりとしたもの。不安がない訳では無いが、ここに留まっていても襲われるだけなのは全員が理解している。疑義を挟むものは居なかった。

数十分後準備が整う。持てるだけの物資をコンテナに詰め込み、ランドマン・ロディに持たせる。その護衛は昭弘や三日月などの阿頼耶識使いのガンダムフレームパイロットが担う。

 

 

 

 

 

 

イサリビから数10キロの戦術機基地。

そこでは、レーダーの異状が観測され、担当の者が原因究明に駆けずり回っていた。

怒号や冷静な報告の声が指揮所に満ちている。無理もない。BETAの進行を察知するためのレーダーや観測機との通信が全て途絶したのだ。原因は不明。いきなり、なんの前触れもなく通信が途絶えた。分かるのはそれだけだ。

 

しかし、その状況に対応できる策がある。目視確認だ。この場合、BETAが原因であることも考えられるため、戦術機での偵察による状況調査が命じられた。BETAとの遭遇や不測の事態に対応できるようなベテランの部隊・・・つまり、第666戦術機中隊がその任を負うことになった。

ブリーフィングを終え、出撃準備に取り掛かる。ベテランらしく、特に問題なく全機が出撃準備を完了。

滑走路から順次発進していく。

(クソッタレ・・・次から次に面倒なことを)

心中で悪態をつくテオドール。表情は無表情のまま、黙って編隊を維持して飛行している。

補充要員の技量向上のための訓練をする前にこの特別任務が当てられた。まだ実際の操縦を見ていないため憶測に過ぎないが、元西ドイツの衛士カティア・ヴァルトハイムの技量は期待しない方がいいだろう。むしろ、この任務で死んでもおかしくないと思っていた。アイリスディーナと政治将校のグレーテルが、なぜ新参であり西ドイツ出身でスパイの可能性もある彼女を中隊に編入させ、いきなり任務に参加させたのかは分からない。アイリスディーナの事だ、おそらくなにか考えがあるのだろう。政治将校を諌める場面は何度も見てきたが、ここまでリスクの高いことを押し通すのはテオドールも初めて見る。

(どうなることやら)

 

相変わらずの吹雪だ。雪の白色と鬱蒼と生い茂る木とその葉が眼下に見える。代わり映えしない景色ではあるが、今飛んでいる空はやつらの支配下である。

レーダーや音紋センサーの不可解な一斉停止の原因を探るためのこの作戦。アイリスディーナに言われるまでもなく気を引き締める隊員達。

「総員傾注」

アイリスディーナの声。

「ブリーフィングで聞いての通り、我々はこれよりセンサー類の不可解な一斉停止の原因究明のための行動に入る。既にここはBETAの支配領域だ。本部もセンサー類の停止の影響で、周囲の状況を把握出来ていない。」

しばしの間。

「先ほどの飛行中に試したが、こちらから本部への長距離通信も使えない。電子機器が使えない以上、各々の状況確認が肝となる・・・気を引き締めろ」

連鎖する了解の応答。

「よし、中隊各機・・・」

「01!待ってください!」

中隊の次席指揮官ファム・ティ・ランが声を上げる。

因みにテオドールの評価はお人好し、である。物腰は柔らかく、アイリスディーナは勿論グレーテルやシルヴィアなどとも積極的に会話するあたり、その性格が滲み出ている。まぁそんな人間が国家保安省側の人間でも驚かないが。

「0時方向距離4000に何か見えます!数は複数!」

「なに・・・?」

アイリスディーナが怪訝な声を上げる。

それに釣られたテオドールも、飛行中の高度を活かして望遠機能を使い、その辺を注意深く観察する。

すると吹雪の合間に、戦術機にしては派手なカラーリングの機体が10機以上こちらに向かってきているのが見て取れた。

「あれは・・・!」

グレーテルが呟く。無理もない。その機影は間違いなく、以前BETAとの交戦中に見た奇妙な機体だったのだ。

「止まれ!我々は東ドイツ所属第666戦術機中隊である!貴官らの所属と部隊名を名乗れ!」

アイリスディーナの誰何。通信機能が使えないため、スピーカーを使っている。吹雪の中であるが、しっかりと聞こえたはず。

これで不審な動きをするようであれば、恐らく・・・。

 

と、向こうからの返答が返ってくる。

「あ?え、えーと・・・」

「こっちは鉄華団だ。火星の。あー・・・」

若い声。最初に答えた人物よりも、その後に発言した人物の方がしっかりとした物言いをしている。その発言の内容を入れなければだが。

「・・・鉄華団?なんだ、それは」

「ふざけるな!」

聞き返そうとするアイリスディーナの発言を遮りグレーテルが激高する。気持ちはわからないでもないが、またかという呆れの気持ちが勝る。もちろん顔には出さない。面倒ごとになるのは分かっている。

「ふざけるなったってよ、そうとしかえいえねぇし・・・つか、俺らのこと知らないのか?」

戸惑っているようだ。それどころかこちらに知らないのかなどとのたまってきた。

痺れを切らしたテオドールは、アイリスディーナに攻撃を具申しようとした。

結果的にいえば、それは中断せざるを得なかった。先頭の長刀を持った機体が急に真後ろを向き、身構えたのだ。

「ミカ?」

「何か来る・・・。たぶんさっきの奴らだ」

「さっきのやつら?」

拡声器を介しての会話。

「ああ、なんか気持ちの悪い生き物がわんさかとこっちに来てよ。仲間も数人殺られちまった。あんたらも逃げた方がいい」

気持ちの悪い生物。この地で、この状況でそれは一つしかいない。

「君たちが目にしたその生物を、我々はBETAと読んでいる」

「べーた?」

「ああ」

「それって、何?」

問いかけ。

その短い言葉の無効に、澄んだふたつの瞳が見えた気がした。

「敵だよ。我々の・・・人類の」

「同志大尉?!いったい何を言っているの?!」

グレーテルの叱責が聞こえていないかのように続ける。

「奴らは我々の故郷を、家族を、友を、恋人を、踏み潰し、喰らい尽くし、滅ぼした。我々の、敵だ」

アイリスディーナらしくない、詩的な発言。

しばしの間があった。両者の間に沈黙が流れる。

「わかった。じゃあそいつを殺せばいいんだ」

穏やかでいて、荒んだような、敵対したくないと思わせる声だった。

「邪魔するやつは全部潰す。それが何であろうと、誰であろうと。全て」

また思い沈黙が流れる。

 

 

 

 

 

 

その両者を分け隔てなく食らいつくさんと、BETAが迫っていた。




やっと会わせることができました。ここから本格的に柴犬キャラと鉄血キャラを絡めていきたいなーと思ってます。
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