1話
ルグニカ王国、数百年前に当時の国王と盟約を交わした神竜ボルカニカに守られて国が繁栄してきたと伝えられており、「親竜王国」とも呼ばれている。
その王国の片隅でとある少年(?)が目を覚ます
「あれ、ここは...。」
大きな口から大きな欠伸が漏れる。
「あぁそうか、ここが神龍の言ってた新しい世界か。」
寂れた裏路地で目を覚ました悟空は辺りをキョロキョロと見渡すがそこに見えるのは何の変哲も無い建物、何の変哲も無い道。
今目に見えるものを見ただけではここが異世界かどうか判断するにはあまりにも不十分であった。
「とりあえずどうすっかなぁ。」グゥ----
そんな疑問も一つの音によって即座に忘れ去られる。
「飯」
ただの一言、たった一言にこれほどの圧力がかかることは滅多にあることではない。悟空は空腹時に表れる驚異的な嗅覚を用い何か食べられるものを探し始める。
だがやはり、こんな寂れた裏路地でたとえ中身が大人でもこんな子供が1人でいたら訪れるイベントなんて限られている。
「へいへい、僕〜。こんなところで何やってるんだい?」
悟空は声のする方を向くとそこには大中小と表される、如何にも寂れた裏路地にぴったりのチンピラ三人組が立っていた。
「あぁ、オラ腹減っちまってなんか食いもん探そうと思ってたところだ。」
普通だったら少しは警戒するところだが、そんな様子を全く見せないあたり流石悟空といったところだ。
「ヘぇ〜、お腹空いてるのかい。だったらお兄さん達がお腹いっぱい食べさせてあげるよ。」
「ほんとかっ!?」
悟空はその「お腹いっぱい」と言うセリフに目をキラキラさせる。
「いやぁ〜、オラここには来たばっかで金なんて持ってねえしどうしようかと思ってたところだったんだ!」
チンピラ三人組はクスクスと笑いながら近づいてくる。
「でもね僕達だって生きるのに精一杯だから何か代わりの物を貰えたりするとお兄さん達すごく嬉しいかな。」
「えっ!?オラ手ぶらで来ちまったからそんなもん持ってねえよ。」
中チンピラはやはりといったように口角が上がり悟空の頭にポンと手を乗せる。
「うんうん、そうだよねぇ。だから悪いけど君を奴隷として売り捌くことにするよ。ほんとはこんなことしたくないんだよ。いや、ほんとに。」
そう言いながら中チンピラは悟空の後ろに回り肩をガシッと掴む。その瞬間大チンピラが悟空のお腹めがけてボディブローを繰り出す。そのまま悟空は気を失い異世界に来てそうそう奴隷に...なることはもちろんなかった。
「おめぇら、ほんとは悪いやつなんか?飯食わせてくれるってのは嘘なんか?」
チンピラ三人組は開いた口が塞がらないといった様子。呆然とする中チンピラが意識を取り戻し反射的に次の言葉を発する。
「お前何者だ!?」
悟空はチンピラの方を向き声を大にして答える。
「オラ、地球育ちのサイヤ人!孫悟空だっ!!」
「地球?」
「サイヤ人?」
大、小のチンピラのハテナの後、中チンピラの「やっちまえ!」の言葉とともにチンピラ三人組は悟空に襲いかかる!!
悟空、絶体絶命!!
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「いやー、ほんとすんまっせんでしたーー。」
「「すみませんでしたー。」」
土下座する三人。その正面に立つ悟空。はたから見たらまだ10歳程度の少年に土下座するチンピラというなんとも不思議な光景が広がる。そのなんとも異様な光景を他人に見られなかったのは悟空にとって幸運だったのかもしれない。
「おめぇらいつもこんなことやってんのか?バカなことやってねぇで働け!」
どこからともなく「お前が言うな!」と聞こえてきそうだが今の悟空は子供。せいぜい親のお手伝いがいいとこの見た目である。
チンピラ達は「はは〜、そのとうりです。」と、土下座のまま悟空の様子を伺う。
「それにしても腹減ったなぁ。」
その言葉にシュパッと立ち上がる三人。
「な、なら私たちが何か御馳走しましょう!いえ、させて下さい!!」
悟空は一瞬釣られそうになったがさっきの今、その言葉に警戒しつつもやはり空腹には耐えられず...
「嘘じゃねぇだろうな?」
空腹、恐るべし!!
「はい、もちろんでございます!表通りにレストランがございますのでそちらに参りましょう!!」
チンピラ三人組が今考えていることは如何に目の前の少年の機嫌を損ねないようにすることだけ。今まで感じたとかのない恐怖がチンピラ達の体をペコペコ、手をコネコネさせるには十分すぎた。
「でもその金はおめぇらが他のやつから奪ったもんじゃねえのか?さすがのオラも他人から奪った金で飯食おうとは思われねぇぞ。」
さすが見た目は子供、頭脳は大人(?)とはいささか不十分ではあるが、50年以上生きてきた悟空もどこの誰かも知らない者のお金で腹を満たそうとは考えはしなかったようだ。
「いえ、ご心配には及びません!これは私たちが仕事をして稼いだお金です!今日、あなた様に行った行為はどうしてもお金が不足している時に仕方なくやっていることなのです!!」
中チンピラが早口で話す横で大小チンピラがうんうんと頷く。
「なんだぁ、ちゃんと働いてんのかぁ。でもそれだったらおめぇらが困るんじゃねえのか?」
「いえいえ、ご心配は及びません。あなた様は今はお腹を満たすことだけを考えていれば良いのです!!」
「そうか?じゃあ遠慮なく食わせてもらおうかな。」
「ははー、仰せのままに」
完全に悟空に服従した三人のチンピラは悟空とともに歩き始める。
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路地裏を抜け人がちらほら見えだしたあたりでふと気付いたように中チンピラが悟空のお尻から生える細長いものについて問う。
「そういや悟空さん。その尻尾って本物なんですか?」
「尻尾?あぁ、本物だぞ。」
そう言いながら悟空は尻尾をぴろぴろと動かし、尻尾で頰をかく。
「じゃあ悟空さんは亜人なんですか?」
「亜人?オラさっきこの世界に来たばっかでよくわかんねぇんだ。」
悟空はそう言いながら中チンピラへ振り向く。
三人が「この世界?」と疑問に思いながらも悟空の問いに対し大チンピラが
「亜人とはエルフ、巨人、鬼、獣人など、人間と似て非なる種族の総称です。」
その横で中チンピラが「俺のセリフ!」とかなんとか叫んでいるが大チンピラは気にせず続ける。
「50年ほど前に人間と亜人との間で『亜人戦争』と呼ばれる大規模の戦争がありました。今は和平を結んで終戦しましたが、今でも亜人への差別や偏見は根深く残っています。」
「へー、じゃあオラはおそらくおめぇらが言うとこの『亜人』っちゅうやつだな。でもオラ難しい説明はよくわかんねぇから別にいいや。」
尻尾をうまく隠せば亜人ということはわからないほど人間に容姿は似ているにもかかわらず素直に自分が亜人であることを認め、さらには差別や偏見が残るこの国でよくわからないから『別にいい』の一言で済ませた悟空に尊敬と恐怖の2つを覚えた。もしこの少年が戦争と重なる時期に生まれていたならこの国の在り方はまた違ったものになっていたかもしれない。
でもただの子供1人に「何をバカな」と思うことは本気ではないとはいえ、悟空と正面から対峙したこのチンピラ三人組にはどうしても思うことはできなかった。何かとてつもなく大きな力を隠すこの少年にはやはり「恐怖」の二文字が適切であった。
「まぁオラもまだ知らないことが沢山あるから教えてくれな。」
そう言いながらニコッと笑うその悟空の顔に今日行った行為に対し心の広さを感じつつやはり「尊敬」の二文字も外すことはできなかった。
そうこう話しているうちに目的地「表通りのレストラン」が見えてきた。
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「おいやべーよ、どうすんのこれ。」
「亜人ってみんなそうなの?」
「あの強さから普通じゃない事ぐらい察しがついたのに。」
「くそー、今日はいいカモが二匹って思ったのに!」
「今思えばあの精霊使いのねーちゃんは何者だったんだろうな」
チンピラ三人組が話すその正面には悟空...の姿はない。三人の目の前にあるのは皿。ただただ積み重ねられた皿。その奥から「うめぇ〜」と聞こえてくる声。そう、孫悟空である。
予想をはるかに超えるその食欲に初めはただ口をあんぐりさせていた三人だが皿が積み重ねられるにつれ、逆に冷静さを取り戻し始める。
「おい!俺らの二週間分の食費だぞ!どうすんのこれ!まじでどうすんの!!」
「そんなに言うならお前がなんとか言え!」
「そんなの無理に決まってんだろ!!」
大中の2人が言いあうなか、小チンピラがそっと口を開く。
「俺に任せてくれ。」
「な、何バカな事言ってんだ!」
中チンピラは食い気味に言う。
「そうだ!返り討ちにあいたいのか!?」
中チンピラに続き大チンピラも言う。
その2人の言葉には「やめるんだ」と言う意味合いよりも「早く言え!そして犠牲者をなるべく少なく!!」といった意味を多く含んでいそうだ。
「任せろ。さっき悟空さんはここに来たばかりだと言った。あの年できっとまだ寂しいはずだ。それによく見ろ、俺と悟空さんは背丈が似ている。きっとお友達になれるはずだ!!」
小チンピラに演説に大中チンピラは拍手する。そして小チンピラは皿の向こう側にいる悟空に話しかける。
「悟空さん!あのっ!!」
悟空は「ん?」と答えつつも食べる手は止めない。
「あの!...できればそろそろご遠慮願いたいのですが...。」
徐々に弱々しくなる声に大中チンピラは「何がお友達だ、このやろー!」と思うのであった。
悟空の横で食事と食器を永遠と運ぶ店員も汗を掻きながらうんうんと頷く。
大中小チンピラは思わず固唾を呑む。そして悟空の口が開く。
「そうだな、腹八分目って言うしな。今ある分で終わりにするかな。」
周りがずっこけるのを見て、悟空は笑いながら(異世界も悪くねぇな。)と思いながらもやはり食べる手は止めない。
そして、ずっと強張った顔をしていたチンピラ達にも笑みがこぼれる。
しかしそのとき悟空に猛烈な頭痛が起こる。
「痛ってえ、なんだこれぇ。」
悟空はその痛みに思わず目を閉じる。そして突然訪れた痛みが突然弱まり再び目を開けると...、
「寂れた...裏路地。」
そこにはこの世界に来て初めてみた風景が広がっていた。
「結構書いたつもりだったのにまだここか」と言うのが第一に言う事ですかね。
これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします!!