ラブライブ!〜onlydesire truth〜   作:ハイネ1021

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実に約半年ぶりの投稿…!
(キリが良いので勝手に)最終章突入しました。
このSSを描き始めて約3年…はやくこの小説も完結させないとビューラー様方に申し訳が立たない…!(シャニマス 叩きながら)


最終章
最終章 第1話 出会い(はじまり)決別(おわり)の日に


ーーーとても、

深く暗い水底で

ずっと見えもしない空を眺めている。

 

手を伸ばしたって届かない。

叫んでも誰にも聞こえない。

だから理解していた。生まれ落ちた日から、ここにいることが僕の宿命なのだと。

だけどある時届くはずのない日の光が差し込み、君の声が聞こえた。

 

とても眩しくて暖かくて…

何故かとても心地よい。

 

差し伸べられた手に惹かれ、

だんだんと水底から離れていく。

握られたその手が温かすぎたから……、

いつまでもこの手を握り続けていたいと思った。

 

たとえこれが幻で虚に塗れた世界だとしても。

 

僕は…、

 

そんな君の心に救われたからーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜…」

目が覚めると天井が見えた。どうやら私は建物の中にいるようだ。少なくとも外ではない。というか今は何時くらいだろうか。

 

などと考えていると、近くにいたであろう青年が私の目覚めに気づき声をかけてきた。

 

「気がついたか?高坂穂乃果殿っ。」

「ここは…?」

「ここか?あー、ここは元UTX軍の戦艦内さ。まぁなんというか…今はそうじゃないんだがね。」

 

青年は煙草を吸いながらそう答えた。

確か雪穂がUTXのメンバーで、私がその雪穂に戦闘で敗れた。

それで気がついたらここにいた。

あんなに優しかった妹の雪穂が、この戦争に参加してることが私にはショックでしかなかった。

かけがえのない妹と…、年が離れていて私が幼い頃に家を出ていった兄、秀穂お兄さん。

 

私はよく彼に懐いて、よく「穂乃果殿〜」とか「雪穂殿〜」とか肩車されながら言われていたっけ。

そういえばついさっき似たような口癖を聞いたような………、

 

「…ってあれ、あなたはもしかして秀穂兄さん?!」

 

「そうだ。俺は高坂秀穂、32才。元ニシキノ軍技術開発部μ’s開発班所属、そんでもって最近まで元UTXの一佐、ね。」

 

「え〜?!」

 

5分間ぐらいパニックになってたが、その間に秀穂兄さんは私の分のお茶を取りに行きそんな私を落ち着かせた。

 

「しっかし、大きくなったな〜穂乃果!」

 

「ほんとびっくりしたよ〜。まさかこんなところで秀穂お兄さんと会えるなんて。

でもなんで穂乃果がこの船に…?」

 

「簡単な話さ。君は俺たちが捕らえたから。いわゆる捕虜ってやつ。」

 

「えーーーっ?!」

 

「まぁ安心したまえ。別に危害は加える気はない。だが協力はしてほしい。」

 

「…でもピュペリオンは堕とされた。

あの機体がない今の私にはなんも力も…。」

 

「だがお前に会いたがっている奴がいる。そいつと会ってくれないか?」

 

会いたい人?私に?誰だろう。

 

「まぁ、それくらいなら…。」

 

「よし、決まりだな。俺はこの後仕事があるんでね。代わりの奴にそいつのところへ案内させるよ。いるか、徹。」

 

ーーガチャ。

「…っ!」

私は彼の正体をみて絶句した。

「うそ……。」

 

「俺は高崎徹。又の名を、黒騎士。」

 

その姿は高崎翔とそっくりだった。

でも翔ちゃんではないことは雰囲気と口調ですぐにわかった。容姿がそっくりなのはよくある話だ。けどそれはただの偶然?

それとも…。

 

「じゃ後は頼んだぜ、徹。」

 

「了解、キャプテン。」

 

秀穂兄さんはそのまま部屋を後にした。

 

「あのぉ……。」

 

「ついてこい、高坂穂乃果。お前にはまず真実を知ってもらわなければならない。」

 

彼が部屋を出ると私もそれについて行き部屋を出た。

 

 

 

 

 

「ここだ。」

ついて行った場所は薄暗く大きな筒状の水槽がある、まるで屋内水族館のような部屋だった。

そして徹は足を止め、清閑な空間に溶け込む中ゆっくりと口を開いた。

 

「…穂乃果、ここは俺の生まれ故郷だ。」

「生まれ故郷?どういうこと…?」

「俺は高崎翔と全く同じ遺伝子を持つ存在。正確にはそれを植え付けられ人為的に作られた存在。つまりクローンだ。」

 

「クローン…?翔ちゃんとμ's何か関係があるの?」

 

 

「高崎翔の正体。それは他でもない、

彼こそがμ'sコア本体だ。」

 

「…っ?!」

 

μ'sには心があり、

その核となるμ'sコアがその心であること。

 

「μ'sコアは9つあり、それらは世界の平衡を保っているというのは知っているな」

 

「うん…」

 

「その中核を為しているのが高崎翔だ。μ'sに意志があるというのは、つまり高崎の心の一部を象り自ら形成したものだからだ。この世界もまた彼の心の写し鏡となっている。」

 

「翔ちゃんが…μ's………そんな……。」

 

「以前、西木野博士がμ'sコアを全て集めたが世界を変えることができなかった。それはμ'sコアを集めるだけでは足りなかったからだ。ここから先の話が、この話の本質となる。」

 

少し長い話になるが…、と高崎徹は前振りを置いた。

 

「事の始まりは17年前。高崎がこの世に生まれ落ちてからだ。この時点で世界は彼が創り上げた偽りの世界と、元々あった世界に分離した。最初にその異変に気付いたのが西木野博士だった。あくまで仮説だが、この現象はパラレルワールドが物量化したものであるとレポートには記されている。これがμ’sコアによる『想いの力』の根端であるとも博士の推測が立てられている。」

 

「彼の出現とともに世界各地で強大なエネルギーを放出する物体…後のμ'sコアが現れ、世界の均衡はμ'sコアの放出するエネルギーによって支配されていることを突き止めた。さらに高崎翔の心身の成長とともに比例してそのエネルギーは肥大化していった。」

 

「人々の感情を彼の心を軸にしてそれをあらゆるエネルギーに変換させる…そんなμ’sコアによる想いの力によって、最初はオリジナルの世界のコピーに過ぎなかった偽りの世界が

容易くμ’sコア独自の時空に支配されていった。」

 

「最初に見つかったμ'sコアを解析をした西木野博士がその強大なエネルギーの一部をくみ取るシステムを作り、人型巨大兵器を開発した。それがμ’s1号機、織姫だ。しかしある事件を境に高崎は自分がどういう存在なのかを知った。」

 

「ことりちゃんが行方不明になった事件だね。」

 

「そうだ。因みに同時期、同じく海外の施設でμ'sの研究をしていた綺羅家が倒れている南ことりを保護していたそうだ。ちなみにその頃の綺羅ツバサは今現在のような野心はなく、だだの育ちのいいお嬢様だったらしい。」

 

「この世界に生まれ落ちたせいで世界を変えてしまったこと、そのせいで誰かを不幸にしてしまったこと。自分ではどうしようもないことだが、そんな自分が許せず心を閉ざした。心が壊れたと言ってた奴までもいた。

しかし彼は自分を…この世界を壊そうとはしなかった。自分には自分を殺める権利はない、そう思ったから。」

 

「だが代わりに償いとして、翔の能力をモーメントリングフラグメントに封じ込め、海に投げ捨てた。そして願った。いつか誰かがこの指輪を拾い、この世界を良い方向へと導いてくれるようにと。」

 

「モーメントリングフラグメント?」

 

「彼の願いにより生み出された指輪の欠片だ。欠片は2つあり、欠片をくっつけるとモーメントリング(瞬間の指輪)となり、指輪に込められた彼の想いの力により時空を自在に操る力を得るらしい。」

 

「でもそのモーメントリングフラグメントは今UTXの綺羅ツバサが持っている…」

 

「そうだ。数年前にUTX軍の綺羅ツバサがモーメントリングフラグメントを偶然拾った。ARISEを開発できたのもその力あってのものだろう。」

 

「それじゃあツバサさんの目的って…」

 

「そう、ツバサはモーメントリングを完成させ、指輪の力を以ってこの世界を変革させようとしている。もう一つは既に我々が所持している。まぁ敵側からすれば灯台下暗し、ってところか。」

 

「じゃあ内部分裂を仕掛けたのも…」

 

「ああ、あのタイミングが絶好のチャンスだったってことさ。たが、これでアイツらとは敵対関係になっちまったな。」

 

「でも…だったらオトノキ軍と一緒に戦えばいいのに…!穂乃果に全然わからない…、わからないよ…。」

私は俯きながらそう呟く。すると、

 

「それは、今はそうしなきゃいけない時だからだよ。」

と、暗闇の奥から私の問いに答える誰かの声がし、その人影が現れた。

 

「翔、お前…いつから聞いてたんだよ。」

「えっと…、君たちがこの部屋に入って来てから、かな。」

 

その声質や容姿、雰囲気にはとても見覚えがあった。いや、忘れるはずもない。そう彼は……。

 

 

「うそ………。しょう…ちゃん?」

 

 

彼は私の方をみるとあの温かくて穏やかな笑顔をして、

 

 

「うん。ただいま。ーー穂乃果。」

 

 

 

二度と見られないと思っていた。

だからこれは多分…、夢なんだ。

だけどこの目に溜まっていくものがそうではないと否定してくる。

私は頑張って堪えてみるけど心奥底から水が沸騰したかのような湧き上がってくる感情を抑えきれず、そして…

 

ーーガバっ。

彼の胸に飛び込んだ。

 

「…バカっ。翔ちゃんのバカ!アホ!トンチンカンっ!心配したんだからっ!あなたと穂乃果は一心同体だって言ったくせに…!

穂乃果を置いて勝手にどっか行っちゃわないでよっ!あなたがいなくなった世界はすごく悲しかったんだよぉぅ!!寂しかったんだよぉぅ!!あなたにもう会えないなんてそんなの嫌だったんだよぅ…!!やっぱりあなたがいないと穂乃果、ダメだよぉぅ……!!」

 

私はずっと我慢してきてきた想いをすべて彼に伝えた。

 

「けど……だけど、あなたが生きててくれて穂乃果、本当に嬉しい……嬉しくてもう………グスッ…」

 

「本当にごめん…。僕も誰よりも穂乃果に会いたくて仕方なかった。でもこうして会えた。穂乃果が今すぐ側にいる。それが何よりも嬉しい…。」

 

泣きつく私をそっと抱きしめそう言った。

私が泣き止んでも私は彼の胸に頭を埋めたままでいた。気がついた頃には徹はこの部屋にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

「翔ちゃんは、それでこの先どうするの?」

 

「僕は…、元の世界を取り戻したい。

例えその先に何があっても

みんなが望む世界があるって僕は信じてる。

そして進んだ、僕たちのあるべき未来へ。

これが僕のたった一つの願い《onlydesire〜》。

手伝ってくれるかな、穂乃果。」

 

本当は…この世界にいる私はずっとそれを探し求めていたのかもしれない。

だけどみんながたどり着いたその先には、

きっと彼はいない。

そして今になってようやく気付いた。

だってあなたと私が最初に抱いていた願いは「出会い」で、

最期に今出した願いは「決別」なのだから。

だから…伝えておかなくちゃ。今しか…この瞬間にしかない私の想いを。彼に。

 

 

「うん…わかった。でもその前にあなたに伝えたいことがあるのっ!」

 

「うん。」

 

「好きです…!あなたのことが…大好きっ!」

 

「うん。僕も君のことが大好き。愛してるよ、穂乃果。」

 

「もうどこにもいかないで…!ずっと穂乃果のそばにいて…!お願い…っ!!」

 

「ああ。約束する。最期のその時までもう君の側を離れない。」

 

翔ちゃんが私のことを強く優しく抱きしめた。確か温もりがそこにはあっていつまでもこのままでいたいと思った。


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