スパンッ! と勢いよく開けられる襖。
室内でのんびりとお茶を飲んで休憩していたオオガミは驚きつつ振り向くと、そこには慌てた様子のエウリュアレがいた。
そして、オオガミを見つけるなり、
「ようやく見つけたわ!」
「ど、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないわよ……! とりあえず匿って!」
「え? いや全くわからないんだけど……」
困惑するオオガミに、しかし事情を話さず押し入れの中に隠れるエウリュアレ。
すると、
「あれ、ますたー?」
「アステリオス? どうかしたの?」
ゆっくりと歩いてきたアステリオス。
オオガミは首をかしげると、
「えっと、えうりゅあれと来たんだけどね、えうろぺおばあちゃまの顔を見たら、走って逃げちゃって……」
「……苦手なのかな……」
「わかんない。それで、追いかけてきたんだけど……ますたー、知ってる?」
「ん~……えっと、エウロペおばあちゃまは?」
「は~い。エウロペおばあちゃまですよ~」
そう言って、ひょっこりと出てくるエウロペ。
オオガミは持っていたお茶を置いて立ち上がると、
「どうかしたんです?」
「いいえ? 私はなにも。ただ、挨拶をしていつものようにあめをあげようと思ったら、すごい勢いで逃げられちゃって。なんでかしら……私、もしかして嫌われているのかしら……?」
「あ~……そうじゃないとは思いますよ。たぶん、照れてるだけとか、そんな感じかなって。部屋で待っていたらそのうち戻ってくると思います」
「そう? じゃあ、待っていようかしら。ありがとうね。はい。お礼のあめちゃんよ」
「ありがとう。エウロペおばあちゃま」
「うふふ。こちらこそありがとうね。それじゃあ行きましょう。アステリオス」
「うん。ばいばい、ますたー」
「うん。またね~」
そう言って、去っていくエウロペとアステリオス。
見送ったオオガミは、ため息をついて押し入れを開けると、
「それで、照れ隠しですか女神様」
「うっさい。なんで私の心を読むのよ」
「読むまでもないし……完全に久しぶりに親戚に会った気まずさ全開の雰囲気なんだもの……流石に分かる」
「……じゃあ、私が出ないのも分かってるわよね」
「それはダメです」
「イヤだ~っ!」
駄々をこねるエウリュアレを押し入れから引きずり出し、机の前に座らせ、その隣に自分も座る。
「まぁ、エウリュアレが照れ隠しで逃げ出すのは今に始まったことではないけども、今回はどうしたの?」
「別に、なんでもないわよ。ただなんとなく、エウロペ様といると、こう、なんていうのかしら……私が私らしくいられないというか……そんな感じがするだけ」
「なるほど、なるほど……」
うんうん。と頷き、オオガミは言う。
「うん。面倒なやつだね」
「何も考えてない返答ありがとう。お礼に後で猿をお届けするわ」
「猿……泥団子……宝石弾……うっ、頭がっ!」
「なにそれ。ちょっと気になるじゃない」
そう言って、笑顔を見せたエウリュアレを見てオオガミは笑うと、
「で、誰がこの部屋を教えたの?」
「去年の調査の成果よ」
「なんで去年のことを覚えているのさエウリュアレ……!」
「ふふっ、忘れるわけないでしょ。あんな酷い目に遭ったイベントを」
「ですよね~……」
去年は最終的にステンノとアナから逃げていたような。と思い返し、苦笑いをするオオガミ。
そして、オオガミは立ち上がると、
「それじゃ、そろそろ仕事に戻るけど、エウリュアレはもう少しここにいる?」
「いいえ。そろそろ戻るわ。逃げてばっかりじゃいられないしね。仲良くなって帰ってくるわよ」
「その意気だ。ファイトだよ」
「応援されるまでもないわ。じゃ、頑張りなさいよ」
そう言って、二人は部屋の外で別れるのだった。
エウロペ様は誰であろうと確実に甘やかすのである意味エウリュアレの天敵。
そして、オオガミ君の部屋は既に一部のサーヴァントには知られているのは言うまでもない事実……プライバシーは侵害されるのですね……
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ