「で、私をはなれに押し込んで遊んでいたって?」
「……はい」
「普通に楽しかったわ」
「感想は聞いてないの。次言ったらマスターのお腹に膝よ」
見慣れたペンギンパーカーの奥から覗くラムダの目はどう見てもお怒りで、オオガミは目を逸らす。
それとは対照的に、目を輝かせながら言うエウリュアレによって、ラムダの怒りに油が注がれる。
「それで? 私には何もないわけ?」
「えっとぉ……お食事、行きます?」
「もちろん行くわ。食事時だもの。今すぐよ」
有無を言わせない怒涛の勢いに二人は気圧されつつ、仕方ないとばかりに立ち上がり、
「それじゃあマスター? 私の食事の手伝いは任せたわよ」
「あ、うん……任せて。もう何か手慣れたこの技術を見せてあげよう」
「それ、誇って良いの?」
「ふふん。スタァに貢献できるならそれは誇れることでは?」
「やだ、私のマスター、意識高すぎ……?」
「やだ、私のマスター、洗脳されてる……?」
ドヤ顔のオオガミに別々の衝撃を受けるラムダとエウリュアレ。
だが、二人はすぐに我に返ると、右手をエウリュアレ、左手をラムダが引きながら、
「ほら、さっさと行くわよ」
「いくらメルトに押されても、貴方の隣は譲れないものよ」
「あっはは……これ、刺されそうな展開だね」
「スタァの隣よ? 光栄に思いなさい」
「誰もが羨む女神の隣よ? 泣いて喜びなさい」
そう言って不敵に笑う二人にオオガミは、楽しいような困ったような笑みを浮かべつつ、連れていかれる。
* * *
「おぅおぅ。久しぶりにやってるねぇ……いや悪化してねぇか? 見てるこっちが火傷しそうなんだが」
「そうかぁ? オレにはいつも通りに見えるけどなぁ?」
両サイドをエウリュアレとラムダに押さえられ、左右交互に料理を口に運んでいくオオガミ。
あの場所だけ違う空間ではないかと思うような場面を見ながら呟くロビンと、さして気にもしていないアンリ。
アンリに至っては、隣で静かに食べているアビゲイルの方が気になって仕方がないのだった
「なんつーか、毎度のことだがマスターも甘やかしすぎじゃねぇの? 普通にカモにされてねぇか?」
「いーんだよ、あそこはあれで。下手にちょっかい出すと先にこっちの首がコロンと行くぜ? 触らぬ神に祟りなし。あんな面倒なの二人も抱えて大丈夫な方も問題だって話だ。気にするだけ無駄だって」
「ん~……まぁ、マスターがそれで良いって言うなら良いか。ただ、あれはこれから先も苦労するねぇ……」
「ま、過労死しなきゃいいさ」
「どっかの王様みたいにってか?」
「そりゃ言えてるわ」
ハッハッハ! と、マテリアルで見たいつかの話を掘り返して笑っていると、
「ほぅ? 貴様ら、共に働きたいようだな……良いぞ?
「おっと。地雷を踏み抜いちまったようだぜ狩人」
「言い訳できねぇがテメェも道連れだコンチクショウ……!」
そう言って、賢王の視線を受けながら二人は互いに小突き合うのだった。
なおラムダも手を引いているように見えて、実は力がほぼ入っていないので悪しからず。
王様への明けましてお悔やみ申し上げますが好きすぎて未だに私のトレンド一位だったりします。センス光ってるなぁ……
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ