「まぁ、うん。儂、知っておったよ。冷静に考えたら、開拓じゃし、遊んどる暇ないんじゃよね」
「何を今更な事を言ってるのよ……」
「ノッブ。まずは開拓し、
「ぬぐぐ……ネロに正論を言われてもうた……」
「なんというか、そのセリフには悪意を感じるのだが……気のせいだろうか……」
「うむ。気のせいじゃよ」
「ふむ。なら仕方がないな」
「騙されるんじゃないわよ……いえ、わざと言ってるんでしょうけど……」
机に顔を伏せながらノッブが呟くが、ネロの突っ込みにより諦めたような表情で起き上がってくる。
エウリュアレはそのやり取りに思わず突っ込みつつ、本日のお菓子であるサーターアンダーギーを食べる。
ちなみに、イベントでもないのに食べているのは、単純に食べてみたかったからダ・ヴィンチちゃんにねだったらしい。
「それにしても、イベントまでの期間が短いわよね……新特異点が出来て二週間近くでイベントなんて、種火を集める暇もないわ」
「いつもの事だよね。というか、今回は結構時間あった方だと思うよ?」
「まぁ……当然の如く私に聖杯が一つ捧げられたからね……」
「おかしいんじゃよなぁ……」
「余には聖杯は一つも無いのに……」
「なによ……素でレベル上限が80とか90あるようなのに言われてもねぇ……」
「昔と言ってることが違っとるんじゃが……」
「そう言う事もあるわよ」
うんうん。とうなずくエウリュアレ。すでにレベル94まで来ており、レベル100はもう目前だった。もちろん、目前とはいっても、必要な経験値量は膨大なので、当然の如くしばらくは上がるわけは無いのだった。
「私、ここ最近、一回も編成から抜けた覚えがないんだけど……」
「儂、鬼ヶ島以降組まれた覚えがないんじゃけど」
「余、たまに抜かれるのだが」
「私なんか、昨日修練場を回ってる時に入っただけよ?」
「エリちゃん、ちゃんとアガルタでも出てたでしょ……?」
「さらっと入って来たわよね……」
さらっと会話に混ざってくるエリザベートに思わずエウリュアレは突っ込むが、当の本人はさも当然と言いたげな表情をしているので、特に問題は無いためそのまま流す。
「ねぇ……子犬? その無人島、ライブステージは作れるの……?」
「……」
「む? 確かに、開拓なら作ってもいいのか……?」
「……い、いやいやいや……さ、流石に選択肢にライブステージは無いと思うよ……?」
「つまり、あったならやるというわけか」
「青い空、白い雲、煌めく海! そして、そこでやるライブとは、どれほど良いものか!!」
「うっわぁ……バビロニア大惨劇――――じゃなかった。大規模ライブをやる予定だったのに……」
「諦めなさい。夏は戦争よ……」
「儂は行かんぞ。ライブが終わったら呼ぶと良い」
「令呪使ってでも連れて行くから安心して」
「マスター許さん縛り上げてやるぞ心せよ」
満面の笑みで恐ろしい事を言い合うノッブとオオガミ。
正直ノッブが犠牲になるか否かというだけの話で、令呪を使ってノッブを連れて行きながら縛り上げられて耳をふさぐことすらできないオオガミが一瞬で想像できたエウリュアレなのだった。
やめろ……やめるんだ……真夏の未開拓島で最恐のライブイベントとか、逃げ場がない……!!
さて、今回もノッブはお休みなのか否か……