「荷物運びって言われても、私は出来ないわよね」
「腰に台車でもくくりつけられたいんですか?」
こたつに入ってオオガミからみかんを食べさせられているメルトに、目が笑っていない笑顔で言うBB。
オオガミはエウリュアレ用のみかんも剥きつつ、
「まぁ、運送中の障害を壊すのも仕事でしょ。家の壁とか粉微塵にしないと」
「いやもうそれは配達とは呼べないんじゃないですか?」
「そこに壁があるなら壊せば良いじゃない。そう、物理的にね。最速最短で駆け抜けるとはこういうことなのですよ」
「めちゃくちゃ迷惑ですね?」
「致し方のない犠牲と言うものです」
「お届けの度に部屋が破壊されるとか考えたくもないんですが……!」
そう言って頭を抱えるBB。
誰も『お前が言えることではないのでは?』と突っ込まないのは優しさからだろう。
「それで、メルトには壁破壊を頼むってことですか?」
「いや全く。そんな予定皆無だけど」
「じゃあなんでそんなこと言ったんですか……!?」
「壁破壊の仕事もあるのかなぁって思って。壁というか、どちらかと言えば通行止めエリアを通れるようにするとかそういう感じのやつ」
「あぁなるほど。それなら確かにメルトの能力は有用ですね。そんなことあります?」
「もしもって話。どのみち、役に立たない可能性があっても連れていくけど」
「……わりと雑ですよね、センパイ。いや、雑と言うより甘すぎるって言った方が良いですか? どのみち、エウリュアレさんとメルトに対して異常に優しいんですが。いくらメルトに調教されてるからって、優遇しすぎじゃないですか?」
「優遇されていたらこんなに周回に連れ回されて疲弊してたりしないと思うのだけど」
「それはそれです。こっちに至っては周回とかほとんどしないのでもはや別世界の話ですよ」
やれやれとばかりに首を振るBB。
オオガミは首をかしげながら、
「でも、周回したいって訳じゃないでしょ?」
「いえいえ。誘われるなら行きますよ? いつでもウェルカムです。どうぞ遠慮なくマスター権限で連れ回してください?」
「ふむ。じゃあ余裕が出来たらそうしようかな。今はちょっと時間がないから無理だけど」
「それは残念です。まぁ、明日から運送業ですし、仕方ないかもしれませんけど。というか、塔イベントってどれだけ大変なのか知らないんですけど」
「あぁ、そう言えばあの時はほとんど全員退去してたんだっけ」
「えぇ、はい。なので、さっぱりです。どうなんです?」
「実際余裕」
「四日で制覇してたわね」
「一ミリも不安がなくなったんですが」
全く辛そうじゃないんですけど~。と言いながら、オオガミの正面に座るBB。
直後両サイドの二人が動いたような気配と、引き吊った涙目の笑顔を浮かべるBB。
だが、すぐに表情を取り繕うと、
「と、とりあえず、明日に備えてノッブの進捗を待ちますね……あの、エウリュアレさん? みかんをくれませんか?」
「ごめんなさい。このみかん、二人用なの」
「なんですか二人用のみかんって!? というか、なんで二人用なんですか!?」
「何言ってるのBB。エウリュアレとメルトの口にしか入らないに決まってるでしょ?」
「何の自信ですかそれは……いえ、まぁ、そんな予感はしてましたけど……というか、それで私も食べられないのは心外なんですけど……」
「箱の中にまだあるから取ってくれば良いじゃない」
「……はい。行ってきます」
しくしくと泣きながら、BBは入ったばかりのこたつから出ていくのだった。
メルトが活躍するのは障害を溶融させる時ですよきっと。
そしてBBに辛辣ないつものメンバー。別段BBちゃん悪いことそんなにしてないんですけどねぇ……普段の態度ですかね?
次のデート回
-
王道のエウリュアレ
-
メルトしかあるまい
-
技術部二人と散歩でもいいのよ
-
いいから全部だ