「さて……今年もチョコを追いかける季節ね」
「チョコを追いかける……? え、逃げるものなの?」
「逃げるわよ。カルデアだもの」
そう言って、オオガミの部屋を出るエウリュアレとメルト。
向かう先は食堂。今年もやってくる戦いのために準備をするのだとエウリュアレは言う。
「去年は……メルトはギリギリ贈れたんだったかしら?」
「えぇ、余っていたチョコでね。召喚された直後でしたけども。あんなに必死になって言われるんだもの。思わず作ってしまったわ」
「そう。まぁイベントも終わった後だったし、あのチョコを見てないのも仕方ないわね」
「逃げるチョコとか、それチョコとしてどうなのよ。チョコで良いの?」
「逃げるだけなら良いんだけど、襲ってくるのよねぇ……」
「は? 攻撃もしてくるの? もうそれ新手のテロじゃないの?」
「恒例行事よ。如何に早くチョコを砕いてプレゼントに変えるかが勝負だもの。砕かなきゃ食べられるのはこっちよ」
「チョコっていつからそんな狂暴な生物になったのかしら……」
はぁ、とため息を吐くメルト。
まさかそんな狂気染みたイベントだと思っていない彼女が未知の事に警戒するのも仕方のないことだろう。
エウリュアレはそんなことを考えながら、
「今年もそれなりに新規がいるし、大丈夫じゃないかしら。正直一番怖いのはカーマだもの。真逆のパールヴァティーが圧倒的質量で胃袋を破壊しに来るから、どうするのかって感じ。同じく物量とか言われたらもれなくマスターが吐くわ」
「洒落になってないわね。出来れば吐かないでほしいのだけど」
「まぁ、また倉庫行きね。あれはもう、食べ物ってレベルじゃないもの」
「一体どんなものなのかしら……とっても気になるけど、見たら後悔しそうね」
「えぇ、とっても後悔するわ。でも面白いから見るのがおすすめよ」
「……どっちなの?」
「おすすめは見る方」
「そう……じゃあ、楽しみにしていようかしら」
一体何が来るのだろうかと身構えつつも、どこかソワソワしているメルト。
エウリュアレはふふっと笑いつつ、
「それじゃ、楽しみにしながらチョコを追いかける準備をしておこうかしら。マスターは明日戻ってくるみたいだし、今のうちに準備しておくべきよ」
「チョコを追いかける準備とか、最高に意味がわからないのだけど。普通今のうちに作っておくとかじゃないの?」
「逃げるもの。仕方ないわ」
エウリュアレはそう言って楽しそうに笑い、メルトは初のバレンタインイベントに身構えるのだった。
キラキラの清少納言の陰キャ特効は笑いました。礼装のためにガチャ回します。
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ