「冷静に考えたら、シャドウしかいないんだし、乗っ取るのは簡単よね」
「サクッと終わったし、しばらく遊べそうね」
「いやぁ、すぐまた湧くと思うんだけど」
「それまでは遊べるってことよ」
強奪した玉座に座ってにやりと笑うエウリュアレに、オオガミは苦笑いをする。
「それで、何をするの?」
「ん~……そうねぇ……色々考えてたけど、実際ここに座ったら別にどうでもよくなっちゃった。こんな椅子に座っているより、貴方の隣に座ってる方が楽しいわ」
「最近素直にかわいいこと言ってくるよね」
真顔でそんなことを言うオオガミに、エウリュアレは楽しそうな笑みを浮かべながら、
「あら、お嫌い?」
「嫌いじゃないけどらしくない」
「あら、失礼ね。自覚はあるけど。メルトはどうかしら」
「刺さってすぐ解けて浸み込んでくる猛毒みたいな甘え方される」
「ちょっとそれどういう意味よ」
顔を赤くして文句を言うメルトに、エウリュアレは苦笑いをしながら、
「私相手に惚気るとか正気じゃないのだけど」
「メルトの前でもエウリュアレの惚気話をしてるからいい加減刺されるかな」
「射貫いてあげましょうか?」
「蹴り抜いてあげましょうか?」
「う~ん殺伐」
オオガミは原因は自分にあるというのを自覚しながら、二人を鎮めようとする。
「結局、玉座奪って満足?」
「見下す奴がいないってだけで嬉しいわよね」
「下から見られるのは構わないけど、上から見るのは死刑よね」
「なんという反逆者精神……嫌いじゃないけど」
「あら、好きじゃないのかしら」
「行き過ぎると殺されちゃうので」
「立場はそれなりにわかってるみたいね。でも最近仕事放棄してないかしら。エウリュアレが指揮してるのをよく見るけど」
「それは種火周回じゃない?」
「だとしても、よ。士気を高めるのも貴方の仕事よ。ということで、サクッと周回しましょ?」
「ん~……じゃあ、行きますか。のんびりと」
オオガミがそういうと、エウリュアレは玉座から降り、定位置のオオガミの隣に立ち、メルトはその反対に立つ。
そこでふとオオガミは、
「これ、冷静に考えるととんでもない状況では……」
「今更過ぎない? 気付くの一年くらい遅いわよ」
「嬉しすぎて自覚してなかった感じだよこれは」
「酷いわねそれ。で、今はもう慣れちゃったって訳?」
「まさか。今も昔も嬉しいままですよ?」
「本当かしら?」
「怪しいわね」
「最近カーマにも気を取られているものね?」
「痛いところを突くね……」
「ふふっ、楽しいわね」
「えぇ、楽しいわね」
そう言って、二人は笑うのだった。
この二人というか、メルトの扱いがエウリュアレと似てきたせいで実質これがうちのエウリュアレ&ステンノ状態です。不思議だなぁ……