「大改修じゃのぅ」
「まぁ、結局今の所変わってるのは、ピザ釜が土釜戸になったくらいよね」
「わざわざ元に戻すその心意気……もはや執念の域じゃな……」
「和風改築よね。楽しそうで何よりだわ」
「まぁ、儂も見てて面白いしな」
「私も、作ってすぐ壊すだけじゃもったいないっていう理由で料理が運ばれてくるから満足よ」
「……残すでないぞ?」
「安心しなさい。最終的には皆で食べるから、私は毒見役よ」
「食いたいだけじゃろ……」
お菓子ではなく、今回は普通に料理メインで構成されていた。
明日は海に出るので、備蓄を溜めつつ、余るものは処理していくという過程で生まれた無数の料理。
これが終わったら宴会でもするのだろうかという勢いだった。
「それにしても、誰が作っとるんじゃろ」
「玉藻とメディアとマシュね。たまにオオガミが手伝ってたりしてるわよ?」
「マスターに働かせるサーヴァント。冷静に考えると、すごい状況じゃよね……」
「失礼ね……ちゃんと、食べられないものは無いかって、毒見してるじゃない」
「毒見する女神ってのも、中々字面にするととんでもないものを感じるのぅ……」
「じゃあ何ならいいのよ……」
「いや、別に……面白い状況じゃよねぇって話だし」
「確かに、面白いわよね。で、貴女は食べないの?」
「そうじゃのぅ……お主だけが食うのは、安全性に欠けるしな。儂も食うぞ」
「一々そんなこと言わなくても良いわよ……」
シチューを飲み、一息つくエウリュアレ。
ノッブが一番最初に取ったのは、おにぎり。つい最近、金色に輝くものを食べたような気がするが、気のせいだろう。
なんだかんだ言って、最初に作った時以外本来の使い方をされていなかったピザ釜も、今では元気に働いていた。
「それにしても、デザートピザなんてあったのね」
「クレープと似たようなもん……かのぅ?」
「おいしいのは変わらないけどね。メディア、器用よねぇ……」
「あのスキル、どこから来たんじゃろ……」
「触れたらいけない気がするから、私は関わらないことにするわ」
「そうじゃな。儂も知らない方が良い気がしてきた。うむ。トウモロコシもうまいな!」
「キャベツだっておいしいわよ。味付けは簡素だけど、十分ね」
「やはり新鮮なのは格別……産地直送、地産地消。やはり最強じゃな」
「おいしいものは皆の心を豊かにするわね。確かに、これは神に祈る気持ちも分かるわ。こんなにおいしいのが食べられなくなるなんて、死にたくなるもの」
「うむ、うむ。これで、明日も頑張る力が湧いてくるというものじゃ」
「えぇ、えぇ。つまみ食いもここまでにしておきましょうか」
その一言に、ノッブは凍り付く。
「…………おい待てエウリュアレ。お主まさか、黙って食っておったのか?」
「そうよ? 共犯者なんだから、諦めなさい?」
「…………珍しく罠にはめられた……これ、儂も悪くなるんじゃが……」
「いやぁ……ノッブに見つかった時はどうなるかと思ったわ」
「こやつ……仕方なし。とりあえずメディアに伝えてくるかの」
「えっ! ちょ、裏切り早いわね!?」
「うむ。こういうのは早めに言っておくのが一番じゃ」
「しっかりしてるわね……自分が怒られるかもしれないっていうのに。うつけ者ってなんだったのかしら」
「満面の笑みを浮かべながら堂々と嘘を言ってくるお主に言われたくないのぅ……」
「あら、どこで気付いたの?」
「儂に見つかった時は、という辺りからじゃな。そもそも、お主は嘘を吐いておると言わぬからな……ほれ、儂らも出来る限りのことを手伝いに行くぞ」
「むぅ……仕方ないわね。私もちゃんと手伝うわよ」
二人はそう言って、ちょうど厨房を手伝いに来たオオガミの元へ向かうのだった。
まだ、牧場にたどり着いたばっかりなんですよ……明日までには終わるはず……午後に、入る前に終わらせるんじゃぁ……!!