「なぁなぁカーマ。吾今度はこれを食べたいのだが」
「突然ですね……で、次はなんですか? って、桃タルトですか……なんです? タルトにハマったんですか?」
呆れたようにカーマが問うと、バラキーは真剣な顔で頷きつつ、
「まぁ、そんなところだ。あのサクサク感が堪らなくてな……」
「そうですか……で、なんで厨房の赤い弓兵ではなく渡しに頼むんですか」
「うん? 汝を一番信頼しているからだが?」
「……鬼って素面でそう言うことを言う種族でしたっけ」
「少なくとも吾はそうだな」
「そうですか……まぁ、バラキーだけと言うことにしておきます」
そう言って、一つ咳払いをするカーマ。
そして、真剣な顔に戻ると、
「で、桃のタルトですか。個数は?」
「昨日を考えて、20個程で」
「……失敗分まで計算に入れてますよね」
「昨日は1個に4回のペースで失敗だったからな……ただ、後半には収まっていたのだから、昨日の半分くらいを想定してる……が、無理だったらまたマスターに押し付けるしかないな……」
「実際はエウリュアレさんでしたけども。まぁいいです。それじゃ、作ってきますよ」
そう言って、慣れた様子で厨房の中へと入っていくカーマ。
そんな彼女と入れ替わるようにやって来たアビゲイルは、
「バラキー、どうしたの? 何かあったのかしら」
「ん。アビゲイルか……今日はカーマに桃のタルトを頼んでな……今始まったところではあるが」
「今からなの? 大変ね。カーマさんも」
「吾別に弱みを握っている訳でもないのだがな……」
「そうね……でもそれ、バラキー自体が弱みなのかもしれないわよ?」
「吾自信が弱み……? 全く訳がわからぬのだが……」
「ん~……なんて言ったら良いのかしら……難しいわね……」
そう言って考えるアビゲイルを見て、首をかしげるバラキー。
すると、厨房の方から声が聞こえ始め、振り向けばそこにはカーマだけでなく、エミヤとオオガミもいた。
「うん? いつの間にマスターは厨房に立っていた……?」
「さっきエウリュアレさんとメルトさんからいちごのタルトを作ってってお願いされてたから、たぶんそれでよ。エミヤさんはお料理についてならなんでも知っているもの! 聞けば丁寧に教えてくれるわ!」
「ふむ……それであの二人は共にいると言うことか……あの二人、戦場よりも厨房で一緒にいる印象が強いのだが……」
「実際、お二人とも厨房に立ってるものね。お菓子担当っていう噂は嘘じゃないかもしれないわ」
「吾その噂初めて聞いたのだが……」
バラキーは苦い顔でそういい、アビゲイルは不思議そうな顔をしながら首をかしげるのだった。
カーマはバラキーに対して甘々なお菓子職人見習い……オオガミ君はお察し。