「……あ~、マスター? 無理なら無理って言え? な?」
「ふっ……これくらい持てなくて何がマスターか……悪環境でも走れないと訓練の意味ないじゃんね」
「だからって女神さん背負って狩りをするのは辛いだろ?」
「荷物を持って戦闘になる可能性もあるから想定して訓練しなきゃでしょ」
心配するロビンとテルにそう言うオオガミは、背中で目を輝かせているエウリュアレから目を逸らす。
「狩りの訓練とか、何の役に立つかと思っていたけど、結構楽しいのね」
「正直女神様の命中率舐めてたぜ……なんであの距離で当てられんのか分からねぇわ」
「精度も中々。これで戦闘系の女神さんじゃないって言うんだから恐ろしいな」
「ふふん。カルデアに来てからだけじゃ無くなったもの、そう言うこともあるわ」
「最初はイタズラ好きな子供みたいな女神様だったのに、聖杯貰いすぎておかしくなっちまってるんだよな……」
「ふ、ふはは……聖杯パワー最強じゃんね」
「お陰で楽しめるから私は気にしてないわ。私の根幹を揺るがしてる気がするけど」
「エウリュアレは守りたい可愛ささえ残ってれば問題ないから余裕じゃん。可愛いは正義」
「大分雑じゃねぇか」
呆れたように言うロビンに、楽しそうに笑い返すオオガミ。
すると、エウリュアレは何かを思い付いた顔をすると、
「あれやりたいわ。たき火! 夜営の準備の早さとかも訓練にならないかしら」
「すげぇな。この状況で我を通せる精神力が」
「まぁいいじゃないか。マスターも背負い疲れただろうしな。狩りもそこそこ出来て上々。夜営に移るのに問題はないだろうさ」
「そりゃそうかも知れねぇが……いや、そうだな。今日の狩りは終わりだ。休憩休憩。さっさと準備すんぞ~」
「了解ですロビン先生」
「茶化すのはやめろっての」
そう言って、エウリュアレを置いてたき火の材料を探しにいく二人。残されたテルとエウリュアレは、
「なぁ女神さん。今のは気遣ってか? それともやりたくてか?」
「あらお爺さん、そう言うのを聞くのは野暮じゃないかしら。黙っておいた方がいいこともあるでしょ?」
「ま、それもそうだわな。一々言うことでもねぇ。しかしまぁ良く見てるもんだ。言われるまで気付けなかった」
「ふふっ、だって、彼は嘘が得意だもの。最も人間らしくて人間離れしてると思わない?」
「そう言うもんかね。でもまぁ、無理しないことを祈るさ。さて、それじゃあこっちでも下準備をしておくかね」
「今日は気分が良いから手伝ってあげるわ。何からすればいいのかしら」
そう言って、エウリュアレは楽しそうな笑顔を浮かべながら手伝うのだった。
エウリュアレ様抱えて森の中……私どっかで見たことあるんですけど。心当たりしかないなぁ……