「あらマスター。今日はどのような御用でございましょうか」
「今日は話に来ただけ。ある意味ここが一番静かだしね」
そう言うオオガミに、首をかしげるキアラ。
その視線は部屋の角にある監視カメラを見て、再びオオガミに戻る。
その意図を察したオオガミは、
「あぁ、
「貴方様の付き人はどうしたのでしょう。勝手に因縁をつけられると言うのも、悪くはないのですが、些か面倒ですので」
「アナを盾にしたけどいつまで持つかって感じ。でもまぁ、ゆっくり出来ると思うよ」
「……用意周到ですね?」
「まぁ、それだけキアラさんに会わせたくないみたいだけど」
「不思議なものですね。なぜ私だけ?」
「最強の変態だし」
「一側面だけでお決めになるのも如何なものかと……いえ、SE.RA.PHでの顛末は周知のことでしょうし、仕方ないのでしょう……」
「でも同じビーストのカーマはフリーって言うのも不思議だよね」
適当なところに座りつつ、話を続けるオオガミ。その際に、手に持っていた紙袋をキアラに差し出す。
キアラはそれを受け取りつつ、
「確かに不思議ですね……脅威は感じないのでしょうか」
「まぁ、概念戦争するなら、既に実績作っちゃった相手には勝てないから……その点キアラさんは素で強いしね。驚異としてはやっぱりキアラさんの方が上だよね。宗教の教祖とか、頭が相当良くないと出来ないし」
「そこを魅力ではなく驚異と捉えるのは流石と言わざるを得ないですが、サーヴァントとなった今でもそう思っていらっしゃいますか?」
「いや全く」
「……そうはっきり言われるのも複雑ですね」
そう言って、キアラは話を変えようと、渡された紙袋の中身を取り出す。
「あら、こちらは?」
「キアラさんへのお土産。この前もおはぎの作り方教えてくれたし、お礼ということで」
「まぁ、それは嬉しいです。大事にいただくとしましょう」
そう言って、箱に詰められたおはぎを眺めるキアラ。
オオガミはそれを見て微笑みつつ、
「お茶も淹れる? 練習もしたいし」
「そうですね……お願いいたします。マスターの腕が鈍っていないか確認させていただきます」
「おぉっと。これは手厳しい……じゃあ精一杯やらせてもらうよ」
「試験のつもりで挑んでくださいね」
「抜き打ちテストも真っ青だね。合格目指して頑張るぞっ」
ふふっ、と笑いながら、キアラはお茶を準備するオオガミをのんびりと眺めるのだった。
久しぶりのキアラさん。なんだかんだ一周回ってまとも枠のような気がしなくもない変態……この人が普通に歩ける日は来るのだろうか。