「ねぇエウリュアレ? そろそろ周りの目が辛いんだけど」
「それなら全員の目を潰せば解決ね。ナイス私」
「う~んこれは引きこもるしかねぇな?」
オオガミがそう言って、マイルームにこもって数時間。
未だに離れようとしないエウリュアレを見て、メルトはため息を吐きながら、
「飽きないわね。いつまで抱き着いてるのよ」
「いつまでもこのままでいいのだけど。むしろ離れる必要あるかしら」
「とんでもないわ。とんでもなく見せつけてくるわこの女神。ちょっとオオガミ。いつまで放っておくつもりよ」
メルトがそういうと、オオガミは死んだ魚のような目で、
「ふっ……助けを呼んでもみんな顔を背けるからね……対処は終わってたみたい……」
「先手はもう打たれてたのね……」
「失礼ね。引き剥がそうとするサーヴァント一人一人に丁寧に矢を刺しただけじゃない。それで諦める方がダメなのよ」
「……キアラは試したの?」
「……あの人が引き剥がすのを手伝ってくれると思う? 積極的にくっつけてきたよ」
「なんでエウリュアレ側なのよ納得いかないわ」
そわかそわか……と言っていそうな彼女を思い浮かべ、そのうち蹴り殺すと心に決めるメルト。
だが、それを聞いていたエウリュアレが、
「キアラに関しては何にもしてないわよ。むしろ何故か一人で盛り上がってたのだけど、なんでかしらね。何か企んでいるようには見えなかったけど」
「絶対何か企んでるでしょ……でももうビーストになるつもりはないみたいだし、そんな危険じゃない気もするけど」
「甘いわ。あれでいてやるときはやるもの。でも二人をくっつけてアイツに得なんて……」
「うん。得なんて、マスターが緊急で出れないくらいじゃ……」
「……それ以外無いじゃない」
「そういえば部屋を出て自由に散策してみたいって言ってたし、是非もないね?」
オオガミがそう言うと、メルトは冷ややかな目でオオガミを見ながら、
「是非もなくないわよ緊急事態よどう考えても。まさか行かないとか言い出さないわよね」
「言い出したかったし実際行きたくない。別に暴れてるわけじゃなし。被害者出たら行くよ……」
そう言うと同時、マイルームに響き渡るアナウンス音。
その後に続くのは聞きなれた声で、
「のろまなセンパイにお知らせしま~す! 現在キアラさんが部屋を出て自由にカルデア内を歩いてるので至急連れ戻してください。現在数名犠牲になってるのでわりと緊急ですよ~。それじゃBBちゃんはシェルターにこもるのでがんばってくださ~い」
再びアナウンス音は響き、通信が終了する。
それを聞いた三人は、
「……おとなしく捕獲にいきます」
「えぇ、それが懸命よ」
そう言って、三人はキアラを部屋に戻しにいくのだった。
キアラさんはどうして外に出るだけで騒ぎを起こすのか……それは誰にもわからんのですよ……