「ふぅ……ようやく一人かな」
「む。そりゃすまなんだ。儂が来たから一人じゃないわな」
見晴らしのいい天守で夜空を眺めているオオガミに声をかけるノッブ。
オオガミは苦笑いをしながら、
「まぁ、ノッブなら大丈夫」
「それどういう意味……あぁいや、言わんでいい。そこまで儂も無粋じゃないからな」
「うん。じゃあ黙っておく。それで、ノッブは何の用?」
「ん~……まぁ、昼間買っておいた団子でも食おうと思ってな。ういろうは先に食ってしまったし」
「景色のいいところで食べようかって?」
「そうそれ。ここが一番見晴らしが良いからな。星見には最高じゃろ」
「分かる。それに、この時代は現代と違って人工の明かりが少ないからより一層明るく感じるよ」
「おぅ。そうじゃな。こんな綺麗な夜じゃし、流れ星とかあるかもな。てきとーな願い事でも考えておいてもええじゃろ」
「……てきとーな願い事ねぇ……」
そう言って、ぼんやりと星を眺めるオオガミ。
ノッブはため息を吐くと、真剣な顔になり、
「……何かあったか?」
「……いいや、なんにも」
「……そうか。ならこれでも食っておけ。気は紛れると思うぞ」
「じゃあもらう。うん。こしあんか」
「うむ。大層人気の甘味処でな、買うのも一苦労じゃった。途中バラキーやアビゲイル、カーマを見かけたが……うむ。カーマはなんか尾行してたな……あやつ気配遮断とか無いからわりと必死のようだったが」
「カーマは一人で甘味探しに旅に出たと思ってたんだけど、尾行とかしてたの……? 混ざればいいじゃん……」
「ま、そうなんじゃけどね。それで、そんなマスターに質問なんじゃけど」
「ん? 何?」
「いや、素朴なもんなんじゃけど、あの二人を離した気分はどんな感じか聞いておこうと思ってな」
「……気付いてたか」
そう言って、令呪が二画減っている手をヒラヒラと振りながら、ノッブに向き直る。
「まぁ、気分としては、体感3割くらい肩の荷が下りた感じ。後物理的に体が軽い」
「3割かぁ……儂の読み物よりも重かったな」
「抱きつかれているのは確かに嬉しいんだけどさ。流石に長い」
「目立ってたしなぁ……儂もあれは笑った。その後死にかけたけど」
「まさかあんなに目を覚まさないとは思わなかったけどね」
「儂一番最初に死んだんじゃけどねぇ。まさか再スタートするとは思わんじゃろ。夢は巡るよいつまでもってな。儂ビックリ。あれ実質特異点じゃったよ」
「そんな特異点行きたくないんだけど」
そんなことを言って笑い合う二人。そして、
「で、どれくらいで帰ってくる?」
「明日の朝には帰ってくるんじゃないかな。それまでは自由」
「うはは。その後が目に浮かぶわ。死なんようにな?」
「殺されかけたら助けてね?」
「そのときはな。んじゃ、今日は遊び倒すとするか」
「こんな暗い夜に何をするってんですか」
「そりゃまぁ……寝るか」
「解散じゃんね。まぁいいけど。おやすみ~」
「おぅ。おやすみ。息抜きは適当にするんじゃぞ~」
そう言って、二人は別れるのだった。
オオガミ君、女神に張り付かれて何日経ってたんでしょ。大変だなぁ……