「……和菓子がそう簡単に作れるわけないんだよ」
「当然だな。あれは幾度も失敗し研鑽の果てに手に入れた技術だ。一朝一夕で真似できるようなものではない。理解した上での挑戦だろう?」
「……そう言いながら作られると複雑な気持ちなんだけど」
オオガミが形の整っていない和菓子をひとつ作っている間に、二つ三つと作っていくエミヤ。
その技術が秀でていることを知ってはいたが、まさかここまでとはオオガミすら思っていなかった。
「あいにく、自己研鑽は続けているのでな。料理のレパートリーだけでなく菓子のレパートリーも着々と増えている」
「万能じゃん。もうエミヤだけでよくない?」
「バカを言うな。私だけでは手が回らん。それに、幅広くカバーできると言うのは、特化しているものに比べて品質が落ちる。結局一番うまいのは極めたものだろう」
「飛び抜けた一は確かにいいんだけどね。その他大勢もバカに出来ないものはあると思うよ。特にエミヤのそれはもう一種のスキルでは?」
「クラス料理人か? ふっ。それはそれで面白そうだな」
「料理大会するって?」
「言ってない。何より私が勝てるわけないだろう」
「レパートリー最大全方位カバーできる男が何言ってるんですか。1位は取れずともほとんどで2位は取れるでしょ。それとも1位以外興味ないとか?」
「そう言う意味ではないが……まぁ、考えていくとしよう」
そう言って、照れ臭そうに頷くエミヤ。
だが、言っているオオガミ自身はそれを見ている余裕などなく、
「ねぇ、これどうすればいいの?」
「……作り直しだな」
「そんなぁ……」
悲しみに暮れるオオガミに、そっと材料を渡すのだった。
* * *
「ふふっ。これ、全部私たちのための失敗作よ」
「とてつもなく嬉しそうじゃない。いえ、気持ちは分かるけど」
そう言う二人の前には、山積みにされた和菓子の失敗作。練りきりがほとんどなので、形さえ見なければ食べられないものではなかった。
「それにしても、和菓子って食べるのが目的と言うよりも、見るのが目的って感じよね」
「如何に綺麗に見せるかってことだもの。だから形を変えやすいねりきりなのでしょう?」
「別にきんつばでいいと思うのだけど」
「そっちはサクッと作ってたじゃない」
「今度は羊羮から自作するんだって」
「留まるところを知らないわね……」
常に成長期ですと言わんがばかりのオオガミに、もはや見慣れてしまった二人。
そして、エウリュアレは抹茶を用意して、
「それじゃ、いただこうかしら」
そう言って、食べ始めるのだった。
実際あの繊細さは凄いと思う……テレビで見ても、繊細且つ早いので練習量が尋常じゃないんだろうなぁと。
なんだかんだ行けるじゃないか……エウリュアレ様に助けられたな……