「ふふん。私が失敗したままでいられるとは思わないことです。次からは余裕ですね」
「本当に完成したな」
「うそ……カーマ才能の塊では……」
ドヤ顔で完成した醤油煎餅をバラキーに差し出すカーマ。
それを横から見ていたオオガミは震えながらそう言う。
「……マスターさんはどれくらいかかったんです?」
「一週間」
「ハッ! こっちは二日です! もっと褒め称えてください!」
「流石カーマ! お菓子の天才! パティシエール!」
「あっははは! いいですねこれ! 気分がいいです!」
「……カーマ。騙されてる気がするから言っておくが、その男、一週間であらかたの煎餅は作れるようになってるからな」
バラキーのその一言で、椅子の上に立って喜んでいたカーマは椅子に座り直し、暗い雰囲気をまといながら、
オオガミの方を向き、
「……何ですか。私が舞い上がるのを見て楽しかったですか」
「根暗スイッチ入ってるんですけど!」
「今回は汝が悪い」
そう言って、受け取った煎餅をバリバリと食べるバラキー。
カーマはそれを横目で見ながら、
「バラキーはマスターさんの煎餅を食べたことがあるんです?」
「ん。まぁな。だがこやつのはエウリュアレを前提に作ってる。その点汝は吾に合わせた味付けだからな。吾はカーマの方が好きだぞ」
「っ、そうですか。それは良かったです」
「うむ。だからマスター。汝はカーマにざらめ煎餅の作り方を教えろ。吾ざらめ煎餅も食べたい」
バラキーにそう言われたオオガミは、不敵な笑みを浮かべながら、
「堂々としたわがままだねバラキー。カーマが了承してくれるかな?」
「いいですよ。お願いしますねマスターさん」
「おっとこっちは即答か。エウリュアレに対する自分を見ているようで複雑な気持ちだなこれは」
「バカなこと言ってないで早くお願いします」
「辛辣だなぁこの女神様は」
そう言いながらカーマに連れられていくオオガミを見て、バラキーは、
「……辛辣とは言うが、エウリュアレやメルトとそこまで変わらぬだろうに」
「全くです。あれでエウリュアレさんとメルトをそこまで特別扱いしてないって言うんだから、特別扱いしたらどうなるのか見物ですよね」
「……BB楽しそうだな」
「えぇもちろん。これ以上ない娯楽です!」
「……そうか。吾は別に興味ないのだが」
「えぇ? そんなことないですって。一緒に見守りましょうよ」
「おいBB。バラキーにあまりちょっかいかけるでないわ」
そう言って、どこからともなく現れた小悪魔後輩を名乗る不審邪神AIと、遅れてやってきたノッブを見て、バラキーは深いため息を吐くのだった。
これがカーマ……カーマは努力家だなぁ……なんで努力家なんだ? お前怠惰の化身では……?