「キミ、お菓子作りが得意なの?」
「まぁ、成り行きでね。今だともはや特技の域だけど」
そう言って、いつものようにクッキーを作るオオガミ。
エリセはそれを見ながら、
「頻繁に作ってるの?」
「いや、主に要望があったときだけだよ」
「要望? 誰に?」
「主にエウリュアレかな。他には……バラキーくらい?」
「バラキー?」
「あぁ、伝わらないか。茨木童子。大江山の鬼だよ」
「……そんなフレンドリーに呼んでも大丈夫なの? 殺されない?」
「少なくともうちだとお菓子をあげとけば大人しいから。はい。お守り」
「……お菓子をお守りって言う人初めて見た」
オオガミからクッキーの入った袋を受け取りつつ、苦笑いするエリセ。
すると、
「む。汝、また菓子を焼いているのか」
「飽きないですねぇ。またエウリュアレさんのわがままで?」
「今日は新人さんが来た記念かな。フォーチュンクッキーとか面白そうだから作ってみたけど、試作品だから占いは無し。薄くて空間があるクッキーだよ」
「……それ、もうフォーチュンクッキーではないのでは?」
「名推理だね。代わりにこっちのロシアン饅頭をあげよう。七つのうちの一つが死ぬほど辛いやつね。当たりを食べたあとしばらく何を食べても痛いとしか感じなかったお墨付きだよ」
「もはや味覚破壊兵器ではないか! これを食えと!?」
「当たりは激ウマなので安心してください。厨房組が腕によりをかけた最高級品だよ」
「……対価としては十分か……だが、エウリュアレや信長達と食べるにしても一つ余るが?」
「それはこのエリセを連れていってくれないかな?」
「む。汝も新規か……吾はよろず屋ではないのだが」
「うん? 何かあったの?」
何かを言いたそうにしているバラキーに、オオガミが首をかしげて聞くと、
「……先程
「いや、流石にそんなつもりはないけど……まぁ、紅葉さんに関してはバラキーの方がいいんじゃないかとは思った」
「ふん。奴は吾よりも人間に近い性質よ。都に住んでいたと言うくらいだからな……裏切りの果ての鬼。人が産み出した闇と言うものよ。吾とは異なる鬼だからな。言わずとも知っていた」
「そうなんだ……カーマから見てもそんな感じ?」
「まぁ、バラキーとは微妙に噛み合ってたり噛み合ってなかったりですねぇ。まぁ、精神年齢はバラキーより遥か上に感じられましたが」
「カーマ。それは吾が幼いと……?」
「ほらそうやって怒るところ。もうちょっと冷静な態度をとってくれると良いんですけどね。ほら、食べるんでしょ。そこでボーッとしているエリセさんも。あそこにエウリュアレさん達がいるんですからさっさと行きますよ」
「あっ、おい置いておくな!」
「えっ、あ、あの、待ってください!」
そう言って、カーマを追いかける二人。
オオガミは自分を睨んでくる女神の視線を感じながら、それでもお菓子作りを止めないのだった。
エリセちゃんの性格が掴めないの……これであってるのか……?