「……今度は何をしたのだ汝は……」
「今回はライネス師匠を呼ぼうとしただけなんだよ……」
「だからってラムダさんから貰った石を消費するのはどうなんです? というか、私も渡したはすなんですけど」
もはや見慣れてしまった、廊下に吊られているオオガミ。
今回は蹴られた跡もあるので、マシュだけではなく、ラムダも加担していることは分かっていた。
とはいえ、当然のような顔で吊られているオオガミに、流石のバラキーとカーマも苦笑いになる。
「それで、どうだったのだ? うまくいったか?」
「ふっ、バラキー。わかってて聞くとは流石は鬼。もちろん召喚できてるわけないじゃないか」
「うむ、知ってた。吾に声もかかってないし、エウリュアレも暇そうだったからな……そして汝がおとなしく吊られている時点で反省していると言うわけだな」
「バラキー、最近そういうの考えるの得意になってきたよね」
「吾もとから得意だが?」
「バラキー。嘘は良くないですよ」
「嘘じゃないわ! 吾は大江山の首魁ぞ!?」
そう言って怒るバラキー。
オオガミとカーマは顔を見合せると、
「まぁ、それを言われると納得」
「ですねぇ。なんだかんだ優秀ですから」
「なんだかんだとはなんだ。吾普通に優秀だろうが。まぁ、酒呑には遠く及ばないがな」
「そうですか……酒呑とかいうのには会ったことないので分かりませんけど、まぁ、バラキーがそれだけいうならそういうことにしておきましょう」
「うむ。酒呑はすごいからな。会えばわかる。酒呑はすごいのだ」
「う~ん、バラキーは酒呑の話になるとこうなるよね」
「そうですね……えぇ、はい。そうなんですけど」
そう言って、カーマはオオガミを見ると、
「よく逆さに吊られてるのに平気な顔をしてますね」
「まぁね。頑丈だから」
「そうですか……助けは要ります?」
「降ろしてくれるの?」
「えぇ。ちょうど教えてほしいのがあって。フロランタンなんですけど、分かります?」
「そんなのでいいなら。これもバラキー用?」
「いえ、これはまた別ですね……最近イタズラらしい事をしていないのでいい加減何かしようかなと」
「なるほどね……ちょっと楽しみ」
「イタズラが一ミリも自分に向かないと思っているのが不服ですけど……まぁいいです。降ろしますね」
そう言って、弓矢を取り出して紐を射って切るカーマ。
流れるように頭から落ちたオオガミは、自力でロープから脱出して首をおさえつつ、
「……変にひねったかも」
「そうですか。じゃあ、アスクレピオスさんに見てもらってサクッと治しましょう」
「……カーマも対応が慣れてきたね」
「一応一年以上いますからね?」
「それもそうか」
オオガミはそう言って納得し、カーマに連れられて医務室に向かうのだった。
珍しく人間アピールするオオガミ君。人間だったなぁコイツ。
しかし石が全く貯まらない。不思議だなぁ……