「……何してるんですか」
信じられないものを見ていると言わんがばかりの顔のアナの視線の先には、横向きでベッドの上になってタブレットを操作しているオオガミと、その腕の中で丸くなって寝ているエウリュアレの姿があった。
そんなアナの視線に目もくれず、タブレットを弄っていたオオガミは、
「かわいいの追求」
「か、かわいいの追求? 何をしてるんですか一体」
「基本的にエウリュアレの髪型とか、あと服とか。霊衣も楽しみだけど、戦闘用じゃない私服も欲しいよねって」
「……なるほど?」
「もちろん、エウリュアレ以外のも考えてはいるけど。みんな常に鎧じゃ疲れるでしょ」
「まぁそれは……でも、姉様が前提なんですね」
「当然。まぁ、マスターとしてじゃなく、個人的なものだけどね」
「別に、それでいいと思います。姉様が喜んでいるのならそれで」
そう言って、近くにあった椅子に座るアナ。
アナは手近にあった本を手に取りつつ、
「これ、姉様の読んでたやつですか?」
「うん。出しっぱなしなのは大体エウリュアレの。何冊か出始めたら片付けてるけど、今日は一冊だったし良いかなって」
「そうですか……本当に、姉様に尽くしてますね」
「まぁ、月並みではあるけど」
「月並みどころか過剰な気もしなくもないですが。でも姉様が相手ならこれくらい普通ですね。たぶん」
歯切れの悪い言葉に、オオガミは若干不安そうな声で、
「自分の姉の事なのにその態度で大丈夫?」
「私にとって普通でもマスターからするとどうなのか考えると、少し不安になりますね。もしかしたら足りてないかも」
「これ以上に何をしろと……まぁ、色々と考えてみるか」
「えぇ。マスターならきっと大丈夫です。安心してください。黄泉の国でも楽しく暮らせそうなのは確かです」
「死ぬの前提かな?」
そこでようやくオオガミはタブレットを置き、
「それで、何かあったの? 誰かに呼ばれてる?」
「あぁ、そうでした。アビーが、お菓子を作ったようなので、伝えてあげようかと」
「話は聞かせてもらったわ、行きましょうオオガミ」
「いきなり起きるしめちゃくちゃ元気だね?」
目を輝かせながら起き上がったエウリュアレに、思わずオオガミはツッコミを入れる。
だが、エウリュアレはそんな視線を微塵も気にせずにオオガミの手を引いて起こすと、
「早くしないと無くなってしまうかもしれないわ。アナも、ぼーっとしてないで一緒に行くわよ」
「え、あ、はい」
そう言って、三人は食堂に向かうのだった。
気力が続いたし続きに近くなったので連日エウリュアレ。
いや、会話してる相手、アナだよね……? 妙だな……