「ずいぶんと今さらですけど、この二人の間に入るとか無謀の極みですよねぇ……」
「BBは今どこに喧嘩を売りに行ったの?」
オオガミの部屋に突然やってきて二人の姿を見るなり、呆れたような顔で言うBBに、思わずオオガミは疑問を投げる。
だが、BBは答えることはなく、近くの椅子に座ると、
「めったに離れないですし、離れたとしてもお互いの事しか考えてないんですよね、この人たち。全く、カーマはずいぶんと貧乏くじを引いたものですね」
「君たちそんなに仲良かったっけ」
寝転がったエウリュアレの頭を膝の上に乗せたまま、オオガミは首をかしげる。
BBはだらけきっているエウリュアレを見つつ、
「時々やってきては調理器具をリクエストしていきますよ。うちは何でも屋じゃないって伝えておいてくださ~い」
「家電一式作ってそうだね?」
「……こっちはジョーク(みたいなヤバイ)アイテムを作る専門なんですけどね。最近は冷蔵庫にオーブン、ミキサー、魔力式カセットコンロの開発と、もはや庶民の味方です。でもまぁ、その技術も役に立てられなくはないので結果オーライと言いますか」
「なんだか静かだなって思ったらそんなことをしてたのか……」
今度何か作ってもらおうかな。と呟くオオガミに、やめてくださいよ。と嫌そうな顔で返すBB。
すると、今まで静かにしていたエウリュアレが、
「で、何の用? 家電まで作製してるので買いに来て欲しいなんて話じゃないでしょう? まぁそれだけでも私は構わないけれど」
「エウリュアレさん、なんだか不機嫌ですね……」
「まぁ、最近ずっとオベロンがいたからね」
「……あぁ、なるほど。そういうことですか」
「えぇそういうこと。あってるからこっちに来なさい?」
「イヤですよ殺されたくないです~。暴力は反対です!」
「暴力なんて振るわないわ。オベロンのように閉じ込めるだけよ?」
「……ちなみに彼はどこに?」
「とっても性能の良い冷蔵庫の中」
「それ私たちの作った奴ですよね!?」
まさか自作の冷蔵庫が牢獄のように使われているなどとはつゆほども思っていなかったBBの、悲鳴のような突っ込み。
だが、エウリュアレは悪びれる様子もなく、
「まだカーマが物を詰め込む前だったから出来たことね。タイミングがよかったわ」
「新品になんて物を詰め込んでくれたんですか……!」
「残念だけど、無理矢理詰め込んだせいであれはもう使えないと思うから買い取ってきたわ。直しておいてね?」
「ここぞとばかりに女神らしいことを言ってくるじゃないですか……というか、カーマ用にもまた作らなきゃ行けないってことですか……?」
「えぇ、頑張ってね?」
そう言ってにっこりと微笑むエウリュアレに、BBは深いため息を吐くと、
「なんで愚痴を吐きに来たら面倒なことが増えるんですか……」
「間が悪かったとしか……」
「次はあの虫が来なくなって三日目くらいに来るのね」
「えぇ……そんな運任せな……」
「正直そんな変わらないから気軽に来てよ。オベロンが邪魔かもだけど」
「そ、それはそれで面倒ですね……まぁ、また気が向いたら来ます。それで、冷蔵庫は?」
「アビーがそっちの倉庫に送り込んでおいてくれたわ」
「そうですか……じゃあ、サクッと直しておきますね。配達先はここでも?」
「えぇ。ちょうど欲しかったから嬉しい限りね。あ、中身は捨てておいて?」
「ナーサリーのところにでも預けておいてくれる?」
「ハイハイ。分かりましたよ。じゃ、また今度来ますね」
そう言って、吐かれたような様子でBBは部屋を出ていくのだった。
クリスマスが……来る……!