「ご主人様。今から走り込みだ。行くぞ」
「おぉっと! 恐ろしい宣言だ!! 助けて怠惰と暴虐の魔王ノッブ!」
「おぅマスター。お主の儂のイメージがよく分かった。諦めて儂と共に海岸じゃ。砂場の走り難さを教えてやろう」
「まさかの裏切られ!! 俺死んじゃう!!」
冷血メイド迫真の強制特訓。助けを求めたノッブは、盛大に地雷を踏み抜き敵に回るという惨状。
「して、どこに行くか。ここはオケアノスで軽く行くとするか」
「そうだな。ついでにワイバーンでも連れてくるか」
「危なくなったら儂らが撃ち落せばいいからな」
「やばい……目が本気だ……」
「……最近暴れたがってる茨木でも連れて行くか……」
「安心しろ。当然、終わったらエミヤのデザートがついてくる。さぁ、早く行くぞ」
「……あれ、エウリュアレと同じ扱いされてる?」
「殺すわよ。というか、どこ行くのよ」
何時からそこにいたのか、マスターを睨みつけつつノッブにどこへ行くかを問うエウリュアレがいた。
「オケアノスじゃ。マスターが儂の事を舐め腐っとるようじゃし、ちょっとしごいてやろうかと」
「マスターは少し弱い気がするからな。鍛えないと万が一の時があるからな」
「そう……私も行こうかしら。手に入れた水着、着てみたいし……」
「良し行こうそれ行こうこれはもう行くしかないよ。レッツゴーオケアノス!!」
「なんじゃコイツ。思いっきり手のひらひっくり返しとるんじゃけど」
「はっきり言って引くわ。一体私の水着に何を期待してるのよ……」
「まぁ、やる気が出たなら問題ない。そら行くぞ」
メイドオルタに嬉々としてついて行くオオガミ。
その後ろで、苦笑いをしているノッブと水着をどこにしまったかを思い出そうとしているエウリュアレ。
「それで、どこの島に行こうか」
「ワイバーンが必須じゃし、翼竜の島でいいじゃろ」
「えっ、ワイバーン……? ライダーじゃない。アサシンいないわよ?」
「……スカサハ……?」
「……これはもう絶望的な予感。スカサハ師匠まで来るとか、エウリュアレの水着を見てる暇ないんじゃ……カメラ撮ってこよ」
「……早めに準備せい」
意地でもエウリュアレの水着を見たいのか、最悪の可能性も考慮して部屋からカメラを取って来ようとするオオガミ。それを止めることなく、早くしろと急かすノッブ。一応、メイドオルタも止めはしなかった。
「なんか、面倒になって来たわ……というか、若干身の危険を感じてきたんだけど。まぁ、水着は取って来るけどね。私も準備してくるわ」
「……儂だけ水着無いんじゃけど。がっつり長袖のコートという、完全冬装備なんじゃけど。熱さで殺されるんじゃけど」
「アイスを食えばいいだろう」
「ハッ! それは確かに! って、アイス持ってったら溶けるじゃろ……」
はぁ、とため息を吐き、とりあえず何かひんやりしそうなものを探しに行くのだった。
メイドオルタがなんだかんだ特訓させようとして来るからいっそのことやってしまえと。
ワイバーンに追いかけまわされるとか、完全に地獄の様な……