今日のカルデア   作:大神 龍

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なんでそんなにワイバーン連れてくるかな(なんでそれで私も追われてるのかしら)

「あ~……遭難したんじゃ~……」

「もうね、馬鹿かと。アホかと。どうして海賊組を一人も連れて来なかったのかと」

「そもそも、カルデアと通信が出来ない状況って何なのよ。意味分からないんだけど」

「いやぁ……おそらく、BBが大暴れしているのかと。珍しく前線行けたから、舞い上がっちゃったんだと思うよ……?」

「な、なんて迷惑な……吾は巻き込まれただけなのに、しばらくワイバーンしか食べられないとか、嫌だぞ!?」

「「自分からついてきたくせに何を」」

「鬼! 悪魔! 頼光!! 吾はもう知らんからな!!」

 

 そう吐き捨てて去っていく茨木。この孤島で別れるとは、中々の勇者である。

 そもそも、ここへ来た当初の目的である特訓は、この島にレイシフトしてきた時にしばらくやり、ふとカルデアと通信が取れないという事に気付いてから中止した。

 

「というか、主犯のメイドはどこに行ったのよ」

「スカサハ師匠と見回ってくるって言って――――行って、い……に、逃げろおおぉぉぉぉ!!」

「えっ!? いきなりどうし――――な、何よアレ!! あんな大群をどうしろっていうのよおぉぉ!!」

「よし。儂はこんな時のために用意しておった穴にでも逃げ込むか」

 

 全力で走り出すオオガミとエウリュアレ。ノッブはいつの間に掘っていたのか、穴の中に逃げ込む。

 走りながら振り向いてみると、バイクに乗って逃げているメイド王と、走って逃げつつ一体ずつ撃墜していくスカサハ。そして、その脇に抱えられているのは目を回している茨木は、おそらくあの群れに遭遇した時に運悪く袋叩きにされたのだろうと想像できる。

 

「なんで私が追われなくちゃいけないのよ!! こういうのは私の役目じゃないでしょ!!」

「女神さまだし、追われるのは仕方ないんじゃないかな!! オケアノスでひたすら追いかけられてたでしょ! 黒ひげに!!」

「ぶっ飛ばすわよ!? いえ、魅了してワイバーンの真っただ中に突撃させるわよ!?」

「ごめんなさい!!」

 

 目が本気だったので、全力で謝りつつどうやってこの場を突破するかを考える。

 と、その隣に何時の間に追いついたのか、メイド王が隣を並走し、

 

「マスター、もっとしっかり走れ。このままだとワイバーンに食われるぞ」

「助けてくれるわけではないのね!?」

「私は助けてくれてもいいんじゃない!? 完全に巻き込まれただけよ!?」

「ふむ……そうだな。貴様だけは助けてやろう。ただ、そうすると私の後ろに乗って永遠矢を撃ち続ける事になるが、良いか?」

「なんでこう、このカルデアは女神に優しくないのかしらね!?」

「神様キラーがうちのカルデアの風紀委員長だからじゃないかな!!」

「全く、面倒ね!! 走るよりもいいからそっちに行くけどね!!」

「あ、ずるい!! というか、ノッブはどうしたのさ!!」

「あいつなら、今頃ワイバーンに集られて悲鳴を上げながら銃を連射してるはずだ」

「よぅし!! そのまま食われてしまえ!!」

「ほう? 他人の事を考える余裕があるか。なら、もう少し近づけても問題なさそうだな?」

「師匠!? それは困るんですが!?」

「いやなに、さすがの私でも、片手をふさがれてしまうとあの群衆相手は少し辛いわけだ。という事で、預けに来たのだが……余裕があるみたいだからな、頼んだぞマスター」

「え、えぇぇ!? ちょ、本当に任せて行く!? あ、師匠って、もういないし!?」

 

 ようやくバイクの後部に乗れたエウリュアレと、スカサハから茨木を強制的に預からされたオオガミ。

 後方に迫っているワイバーンの羽音に冷や汗を流すも、正直後ろを振り返る暇もないオオガミは、茨木を抱えての全力疾走。

 エウリュアレも必死で応戦するが、ほとんど意味があるのか分からない。

 すると、

 

「あ、繋がりました!! 先輩、聞こえますか!?」

「き、聞こえるよマシュ!! 出来ればすぐにでも戻りたいんだけど!!」

「な、何かあった――――ワイバーンがたくさん!? どうしてそんなことに!?」

「知らないよ!! スカサハ師匠とメイド王がなんか連れてきたんだから!!」

「えぇ!?」

「なに、マスターを鍛えるためには必要だろう? これくらいすれば全力で走ってくれるだろうさ」

「そりゃ死にたくないから全力で走るけどさ!!」

「で、出来るだけ早くレイシフトを――――あれ、信長さんは?」

「……あっ!! 穴に入って放置したままだ!! か、回収してこないと!!」

「あのバカ、一人だけ隠れてやり過ごそうとするから!! なんて面倒なことをしてくれるのかしら!!」

 

 そう思っていると、見覚えのある様な道――――というか、見覚えのある砂浜に出た。そして、視界の端に写るワイバーンの群れ。

 

「良し! ラストスパート! 取り合えず後方は師匠が守ってくれると信じて、あのワイバーン達を一掃すれば帰れる!! 行くぞおらぁ!!」

「任せろ。一掃する」

「仕方ないわね……ノッブめ、後で後悔させてあげるわ」

 

 そう言い、三人はワイバーンの群れに襲い掛かるのだった。

 

 その後、一時間も立たないうちにレイシフトして逃げ切れたのだった。




 悲鳴を上げながら島の外周を一周するマスター。なんだこの体力。さすが世界を救ったマスターは一味違う……(違う、そうじゃない)
 そして、バラキーは安定のポンコツ。いや、流石にここまでひどくはないと思うんですけど……これは囲まれたのが敗因ですね。

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