「チクショウ!! はめられた!!」
オオガミが叫び、目の前の壁に貼られていた紙に絶望し、項垂れる。
「ほうほう……つまり、余達が歌えという事か」
「
書かれている内容は、『全員が歌を三曲歌わないと出られない部屋』。
そして、ここにいるのはオオガミとネロ、エリザベートの三人だった。
「マイクはコレ……ふむ、これがカラオケ機か。うむ、うむ。なるほど分かった!! これで余は歌う準備が終わったぞ!」
「あぁっ!!
「ふっふっふ。持てる者はすべて行使して、マスターに余の歌を聞かせるのだ。そして、その後に、マスターの歌声も聞かせてもらうとするぞ!!」
「ちょ、ちょっと待って!! 二人の後に歌うのは、その、技量的に泣きたくなるから、先に歌わせて!!」
「む? 余は気にせぬが……まぁ、マスターがそうしたいというのであれば、譲ろうではないか」
「あ、ありがとう。三曲……三曲だよね。うん。よし、じゃあ、この三曲で」
そう言って、オオガミは曲を選択し始める。
* * *
「センパイ……先に歌って、残りを全部聞いて終わらせるつもりですね」
「いやぁ……流石にそうなるじゃろ……というか、どうやってあの三人を運び込んだんじゃ……」
「秘密です。聞いちゃいけないことはあるんですよ?」
「……毒でも盛ったのか……この自称後輩……」
「……ノッブも同じ目に遭います?」
「よぅし!! 楽しく三人を見守るとしようかの!!」
全力で話を逸らしていくノッブ。ただ、BBはそれに対して満面の笑みを向けるだけだった。
ちなみに、この二人がいるのはノッブの工房の最奥部にある秘密の部屋である。機材はBBと共に作成し、マスター達が閉じ込められている部屋は、普通に扉をロックしているだけなので、実は破壊すれば何の問題も無い。彼らは考えもしてないが。
「というか、音声を拾っておったら、儂らも死ぬんじゃね?」
「何言ってるんですか。ちゃんと音声はオンオフ可能にしてるに決まってるじゃないですか。悪戯して様子を見てたら歌で死んだとかシャレにならないですし、響いたら上に聞こえるじゃないですか。聞かれたら今頃マスターを探してるはずのマシュを筆頭に、エルキドゥさん達が襲い掛かってきますよ」
「……儂、死ぬんか……」
「それ、私まで巻き込まれるじゃないですか。というか、この工房……誰か来たりしませんよね……?」
「……そういえば昨日、土方が儂の工房に沢庵の樽を置いているという新情報を仕入れたんじゃが……」
「……見つかったらノッブのせいという事で」
「完全に儂悪くないよね」
そんなことを話しつつ、二人は三人を見守るのだった。
自分が歌い終わった後、生死をかけたライブが始まる……!! はたしてオオガミは生き残れるのか……!!
そして、二人の運命や如何に。