「ねぇオオガミ。貴方、ここ最近召喚室によく行ってる気がするんだけど」
「うっ」
「……先輩? 召喚室には入らないでくださいって言いませんでしたっけ?」
「あぁっ、マシュの視線が冷たい……!」
マシュに睨まれ、カタカタと震えているオオガミ。
そんな状況を生み出したエウリュアレは、紅茶を飲みながら黒い笑顔を浮かべていた。
「はぁ……今回はどうして使ったんです?」
「いやぁ……そのぉ……ピックアップがね? 色々とですね……? その、礼装が欲しいなぁって、思いましてね?」
「そうですか……まぁ、戦力増強は良いと思うのですが、いつか来ると言ってたメルトリリスさんの為の石はあるんですか?」
「うっ……! い、いや、大丈夫だよ! 聖晶片は貯めてるし!!」
「水着イベントの時に10個使っていたような気がするんですが」
「ぐふっ……いや、これから貯めるから問題ない……!!」
「万が一のためにって残していたアガルタのフリークエストも終わらせちゃいますし……本当に大丈夫なんですか?」
「……まぁ、大丈夫だよ。うん。ログインボーナスとかあるしね。年末までには集まるでしょ!!」
オオガミの言い分を聞いていたエウリュアレは、少し真剣そうな表情で、
「……マシュ。これは手遅れよ。たぶん、こうやって言い訳して、おそらく年末には石ゼロよ」
「恐ろしいこと言わないで!?」
「ありそうだから困るんですが……先輩、自重してください」
「……はい。ごめんなさい。これからは節約するように頑張ります」
「だそうよ?」
「そうしてくださいよ? でないと、本当に資材が枯渇して困るんですから」
「はい……まぁ、その頃には新エリア開拓されて暴れてると思うんだけどね」
「……それはそれです」
今後起こるであろうことを考えながらオオガミが言うと、マシュは一瞬硬直した後、そう言った。
「それにしても、次の特異点が出てくるまでの感覚が短いわよねぇ……」
「そこは突っ込んじゃいけないと思うんだけど」
「聖杯って、こんなに出てくるものなんですね……」
「いや、絶対普通じゃないから……異常事態だから……いろんな人が言ってたと思うから……」
「というか、もはや魔神柱とか関係なしで聖杯あるわよね? 原因は一体何なのよ」
「……色々あるから分かんないな……でもやっぱ、最終的には魔神柱でしょ」
「その、とりあえず魔神柱に押し付けておけばいいかっていう感じ、嫌いじゃないわよ」
エウリュアレはそう言うと、無言でオオガミにティーカップを差し出してくる。
差し出されたオオガミは数秒悩んだ後、ふと机の上にあるティーポットに気付き、紅茶を注いで返すのだった。
イリヤ出ないよイリヤ……ちくせう……ログインボーナスじゃそんな溜まりませんし……コフッ!