「最近は、貴様の出番も無いようだな。エルキドゥ」
「僕が出る場面が無いのは喜ばしい事だよ。いや、兵器としては、どうなのかな。悩ましい所だよ」
コーヒーを一口飲み、エルキドゥは目をつむる。
何かを感じているのか、それとも聞いているのか。巌窟王は考えつつ、同じようにコーヒーを飲む。
「君たちは非番の時は、日がな一日そうやっているが、何かやる事は無いのか?」
「大体ここでマスターの呼びかけを待っているね。それ以外にやる事は……そうだね、鎖を巡らせて不審な事をしているのがいないか見回るくらいだね」
「俺もそんなところだ。そもそも、やる事なぞほとんどないがな」
「なら、手伝ってくれないか。私一人で出来る事にも限界がある」
「他の厨房組に要請したらいいんじゃないのかい?」
「あいにく、全員出払っていてね。頼めそうなのも君たちくらいなものだからな。休憩室の茶菓子もそろそろ切れる頃だろうから、補充をする必要がある。さて。皿洗いと菓子の補充。どっちがいい?」
「ふむ……なら、俺が皿洗いをしよう。エルキドゥに繊細な作業は苦手そうだからな」
「まぁ、あながち間違ってはいないか。仕方ない、僕が行ってくるよ。ついでに変な事をしていないか見て来よう」
エミヤが差し出してきたお菓子の袋をエルキドゥは受け取り、食堂を出て行く。
巌窟王はエミヤと共に厨房へと向かい、言われた通りに皿を洗い始める。
「それにしても、まさか俺がこんなことをすることになるとは思わなかったな」
「私も君がやってくれるとは思わなかったよ。てっきりエルキドゥが残るかと思っていたからね」
「そうでもないさ。俺にはあの部屋にいるのはあまり得意ではないからな。あまり人のいない空間が一番だ」
「そうか。だが、それはそれとして、仕事はしてもらうぞ巌窟王。コーヒーもその方が美味いだろうさ」
「ふん。投げ出しはしないさ。ここを使わせてもらっているからな」
「なに、やってくれるのなら問題はない。それで、これが終わったら何をする?」
巌窟王はそう言うと、最後の一枚を仕上げる。
エミヤはそれを見ると、少し考え、
「いや、これで終わりだな。今は子供たちがやってこないからな。菓子を作る必要も無い。おそらく信長やオオガミ辺りが抑えているのだろう」
「そうか。では、エルキドゥが帰ってくるまでにコーヒーを淹れなおしておくか」
巌窟王は自然にコーヒーを入れ始める。おそらく、エルキドゥが仕事を終わらせるタイミングを分かっているのだろう。
最近よく淹れているので、手慣れたものである。エミヤもそれを見て、ふと思いついたように調理を始める。
「……どうかしたのか?」
「いや、手伝ってもらったからな。茶菓子でも作ろうかと思ってな」
「それはありがたい。では、お前の分も淹れておこうか」
そう言うと、二人は手を動かし始めるのだった。
珍しい三人。巌窟王とエルキドゥが一緒なのはいつもの事のように思えるんですけどね。エミヤが混ざるのは……あれ、昔も書いたような……
次は誰にしようかな……